「得るものが無い」は本当か
得るものが無かったという感想を聞く事がある。
本を読んだり、映画を見たりした時に、聞いたことのある感想である。
1冊の本を読んで、1つの映画を見て、何も得るものが無かったという事が本当にあるのだろうか。
僕は、今まで何も得られなかった本や映画に出会った事が無い。
これは僕が良いものを抽出してきたなどと、そんな事を言いたいわけでは無い。
どんな作品でも、必ず得られるものがあるという事が言いたいのである。
確かに、期待していたような内容でなく落胆する事はある。
むしろ、記憶に残る作品というのは、数が少ないのが定番かもしれない。
一方で、何も得るものが無いという作品は今まで無かったように思うのだ。
どれだけ期待していなかった内容であったとしても、「こんな表現をしていた」などと思れば十分なのだ。
たった一部分が自分の血肉になれば良いのである。
そもそも、どれだけ名作と呼ばれる本でも、1冊丸々覚えているという事は、稀で、記憶に残っているのはたった数行だろうし、もしかすると、ぼんやりとしか内容を覚えていないかもしれない。
だから、どれだけ僅かな事でも、得るものは間違いなくあるのだ。
得るものが無かったという人は、恐らく期待値が高いか、ひとつのものから多くを学ぼうとし過ぎている可能性が高い。
別に悪い事では無いが、「損をした」という負の感情に支配されやすいようになるだろう。
期待値を無理に下げる必要も無いが、完璧主義になっては、人生に奥行きが生まれにくい。
どんな事柄でも、得るものはきっとあるんだ、と思いながら本を読んだり、遊んでみると良いだろう。
すると、小さな感動が見つかるはずだ。
「物語は正直イマイチに感じたけど、ここの表現が好きだった」などと思えるようになれば、きっとどんな作品でも、血肉にする事ができるだろう。
僕は、過去に「私の頭の中の引き出し」というエッセイを書いた。
ここで書いている引き出しを作る方法としては、好きだと思える作品にたくさん触れる事だと書いているのだが、それと同様にどんな作品からでも学べて、血肉にできるという意識が重要だと思うのだ。
その意識さえあれば、得るものが無かったなどという事は無くなるだろう。
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