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言葉を紡ぐこと、繋ぐこと

「ペトロパになる」
この単語を何人が理解できるだろう。
祖父が作って、孫が受け継ぐ、
この言葉にまつわる話。


久しぶりに親戚の家に行ってみんなで飲んでたら、伯父がふと思い出したように言った。

ぺとろぱ に なりそうだ。

え、なにそれ。
ペトロパ?!  どういう意味?!?!
方言でもないし、古い言葉でもないらしい。
聞いてみると、「めちゃくちゃに酔っぱらう、泥酔する」という意味の祖父が作った単語らしい。

親戚、というか、私の父と伯父にしか伝わらないその「ペトロパ」という単語。最初は二人だけで笑っていたのだけど、だんだん、そのペトロパという響きと意味が可笑しくて、そこにいた親戚みんなで笑いあっていた。

家に帰ると、旦那さんとの共通言語としても「ペトロパ」が登場するようになった。

「そんなに飲むとペトロパになるよ」

「もうペトロパだから、水ちょうだい」

家族にしか通じない謎の言葉「ペトロパ」笑
なんだかそれが、無性にあたたかくて、くすぐったくて、うれしい。

わたしは「ペトロパ」という言葉の生みの親である祖父に会ったことがない。
父が高校生の時に亡くなっているから、祖父も私の存在を知らないで天国に行っている。

でも、ペトロパと声に出すとき、なんだかわからないけど、祖父のあたたかさやお茶目さを感じる。その言葉で親戚一同笑いあうって、なんだかめちゃくちゃ素敵な体験だと思う。

こうして”いのち”はつながっていくのかな。
私の中には、よく”ペトロパ”になっていた祖父が今も一緒に生きている、そんな気がした。

言葉が人の思いや、その人らしさを繋いでいく。
命を繋いでいくことは、言葉を紡いでいくこと、伝えていくことかもしれない。

方言でもなんでもない、意味不明な言葉だけど
私のなかでは「ペトロパ」という単語が
とても大切な言葉になっている。

きっと、いつか子供ができて
その子が成人するころ
ペトロパになるほど一緒に飲んで
「ペトロパ」という言葉を伝えていこうと思う。

この言葉に深い意味はないけれど、
私は愛を感じるから。



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