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声がいい人≠顔がいい人

うちの旦那(C)は、音楽オタクと言ってもいいほどの音楽ラヴァ―だ。

今でこそ、小さな日本の、小さな賃貸アパートの、小さなリビングの中の、小さな棚(といってももともとは靴箱だった、大きな棚)に、CDをちまちまと集めているほどだけれど、アメリカで住んでいた時は壁いっぱいにCDだの、MDだの、ヴァイナルレコードだのを数知れず持っていた。彼はジャンルを問わずに、全ての音楽を聞く。唯一聞かないものといえば、ヒットチャートに入ってくるような、流行っているポップスだ。こういうタイプの人も珍しいと思う。

ま、それはいいとして。

私だって人並に音楽に関しては興味があった。というより、人より音楽に興味があったかもしれない。何しろ3歳の頃からピアノを習っていて、小学校では金管バンド、中学では邦楽、高校ではブラバンをやっていたのだから、音楽に縁のある子供時代だった。でもCと一緒になってからというもの、私は「音楽の発見」というものに関して、何と言うか、億劫になっていった。

それまでは、街角で聞こえてきたり、CMで使われているいい曲を調べあげたり、CDショップに出向いてランダムに視聴したりして自分で好きな音楽を掘り当ててきたのである。なのに、Cといったら私の好みだのなんだの関係なく、自分の気分に合った自分の好きな音楽を好き勝手にかけるものだから、私の「音楽に関する好み」みたいなものは、私たちから忘れ去られてしまった。

もちろん一人でいれば、自分で好きな音楽を勝手に聞けるのだけれど、二人の空間でいればCが、こんなのあるよこんなのあるよという具合に、好き勝手に共有された空間を、私から奪っていってしまったのだ。それに関して私も、受け身でいたために、結婚11年になる今でもそんな感じで収まっている。音楽に関しての主導権は彼にある。

Cとは生まれも育ちも違う私にとって、彼のかける音楽というものは、私がそれまで聞いたことも耳にしたこともなかった歌手やらバンドやらなんやらが主だった。その中で、たまにこういうことがあるのである。

「この人の声、すっごいいい~!」

アメリカのバンドのボーカルで、とてもセクシーで私好みの声を持った人が、Cのこだわりの巨大スピーカーから聞こえてくる時は、選曲に受け身の私だって興奮した。

ちなみに具体的にいえば、今でも覚えているのは、Dave Matthew's Bandである。大学生の時に、かの有名な"Crash into me"を聞いた時は、心まで溶かされた気分だった。今でもイントロがかかるだけで、心がぎゅっとなる。こんないい曲を歌う人はきっとハンサムでかっこよくて、私好みの人に違いない!声も別格にいいし!と思っていた。


もう一つは、Soul Coughingというバンドで、なぜか分からないけれどこのボーカリストの声が私の中でビン!と響いた。絶対にちょっとプレイボーイ的な悪い男(私の好み)に違いない!と信じていた。


(例が二つとも90年代にヒットしたバンドという。世代がばれてしまう)

Cがこれらの曲をかける度に、私の頭の中ではセクシーな妄想が繰り広げられていたのである。「こんないい声の人、絶対かっこいいんだろうな~」と私はある日口にした。するとCはこういうのである。

「Ummmm...彼らの写真を絶対、ググらないで」

え?なんで?

「君が思っているような、見かけではないと思うから」

ウソや。。。オーマイガ。

この脳内のセクシーイメージを崩すべくググるか、この妄想を妄想のままで置いておくべきか。と迷ったものの、やはり私の中の好奇心が収まらなかったのである。こんなに私を夢中にさせる声の主が、ハンサムでないだと?声がこんなに好みであるのに、見かけが好みでないなんていうことは、ありえるのだろうか?男性の声というのは、私にとってとても大きな意味を持つというのに。

と、

結果はもう見えると思うけれど、実際「好みの声の主≠好みの顔」という結果に終わった。上に挙げた二人のボーカリストは年齢もあって、ますます「セクシー」のカテゴリーからは外れまくっているけれど、私の青春を輝かせてくれたことには変わりない。

世の中には、やはり知らなかった方が良いこともあるのだ。

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