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「番組の監視」報道を受け、官邸に情報開示請求をしてみた結果

週刊ポストが今年5月、官邸の内閣広報室がテレビ番組を監視し、番組の構成やコメンテーターの発言を記録していたことを報じました。同誌によると、開示文書は2月1日から3月9日付までの約1ヵ月分だけでA4判922枚、分析チームの職員3人ほどが専従となり、番組を視聴して出演者のコメントなどを書き起こす作業を行なっているといいます。

この開示請求を行ったWADAさんが、その全ての資料を共有してくれていたため目を通してみたところ、私が出演していた番組と、私のコメントもそこに掲載されていました。

そこで、さらなる資料が存在するかどうか、内閣広報室、内閣情報調査室に対し、下記のような形で保有個人情報の開示請求を行ってみました。

安田菜津紀に関して収集あるいは作成された個人情報あるいはプロファイルなどの一切。あるいは、あらゆる目的で調査・収集・作成された「安田菜津紀」についての記述が含まれる資料の一切。例えば審議会などの参加委員者選別、テレビやラジオ・ネットなどの言論動向を把握するためのメディアチェック内の記述、議員へのレクチャー、防犯・防災などのために調査された捜査情報を含む。

残念ながら内閣情報調査室からは、思わしい回答がありませんでした。

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本件開示請求の対象となる行政文書は、存否を明らかにした場合、内閣の情報機関である内閣情報調査室の情報関心等が推察されることとなり、それによって、悪意を有する相手方が対抗・妨害措置を講じるなど、当室が行う業務の適正な遂行に重大な支障を及ぼすおそれがある。

もちろん、納得のいく返答ではありません。ちなみに不開示理由の1つとして挙げられている、法14条4号にはこうあります。

公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報

一方、内閣広報室からは、A4で90枚の文書の開示がありました。期間は昨年11月から今年6月までのものです。90枚全てが私に関してのものというわけではなく、他の番組なども書き起こされている中に、私のコメントも含まれている、という形でした。

11月29日(金)夜~12月1日(日)TV報道振り-1

12月6日(金)夜~8日(日)TV報道振り-3

書き起こされたコメントは、「桜を見る会」についてや、コロナ禍の政策に対する意見が主でした。

すでに他の媒体で報じられているように、開示された資料に目を通す限り、文字起こしされているのは、政策に批判的な番組や、そうした発言をするコメンテーターが中心であるように思います。

この記録文書のことが報じられた後、ネット上では「報道番組の誤りを正すためだ」と官邸側の動きを擁護する声が相次ぎました(その妥当性自体も問わなければならないと思います)。仮に「誤りを正す」目的なのであれば、なぜこの記録を「桜を見る会」の名簿ように、「速やかに破棄」をしていなかったのでしょうか。

政治アナリストの伊藤惇夫氏は、週刊ポスト「メディアへの牽制のために作られているのではないか。発言を収集し、評論家やジャーナリストの足をすくう材料を探している」「文書の存在を示すこと自体が、メディアに対する牽制になっているのではないか」というコメントを寄せています。

この記録がなされていた間の内閣官房の長官は、現総理大臣である菅氏です。その菅氏は今後、どのような”メディア対策”を行っていくのでしょうか。

菅政権下ではすでに、首相への「グループインタビュー」という奇妙な催しが開かれています。政府が「日本学術会議」の会員候補6人を任命しなかった問題が発覚した後、首相は記者会見を開くと思いきや、10月3日朝、パンケーキで有名な都内のレストランで、首相番記者と懇談。

その後、3社ずつが首相に質問をする「グループインタビュー」が開かれました。聞き手の3社以外の内閣記者会常勤幹事社は同室で傍聴。常勤幹事社以外で抽選に当たった記者は、なぜか別室で音声のみを傍聴する、という不可解な仕組みになっていたました。何が何でも、通常の会見を開きたくない様子です。

その上、「記者会見」という扱いではないからか、首相官邸サイトに公式動画がアップされていません。そうなると、参加さえ叶わなかったメディアにとって、動画を使っての発信が不可能となります。

安倍首相がかつて行っていた記者会見も、冒頭で長々と演説し、記者とのやりとりは一問一答という「儀式」のようなものでしたが、状況はさらに後退しているのではないか、という危機感を抱きます。

前述の菅首相の「グループインタビュー」ができた社、同席ができた社も、「ジャーナリズム」として広く連帯し、声をあげるべき状況なのではないでしょうか。

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