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生贄【詩】

夕凪の立ち込める中
頬を朱に染め出して
虫除けスプレー振り撒いて
少し肌が湿った
鼻の奥にも凍てつく香りが
とどめを刺しにやってきた

軽めのジャケット羽織って
ひとり歩き出す
君とまだよく会ってた頃は
鏡とよく向き合ってた
今の私は誰かに見えているのかな
可愛い格好したって
ハエが集ってくるだけ
蚊取線香は意味があるのかしらね

駅前のコーヒーショップは満席で
いつもはこんな駅には来ない外国人ばかり
遠く微かに響いて聞こえる
打ち物の音がじんと心臓を揺らす
屋台の喧騒が心地よく感じて
そのままの勢いで私は空に身を投げた
弾けてよく咲く
彩った

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