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【海のはじまり】第3話:こまかすぎる感想

フジテレビ7月期 月9ドラマ「海のはじまり」。
もう3話ですね。
毎週着実に終わりに向けて進んでいると思うと、最終回まで見届けたいという思いと、終わってほしくないという思いに苛まれます。
まだ3話なのに(笑)

第3話もリアタイして、観終えた後の感想は、「あたたかせつなくるしい」でした。
夏くん、海ちゃん、登場人物たちの心が少しずつ動いたような回。
一方で、どうにも胸がきゅっとなる苦しさもあり。
また、個人的に最終回で回収されるかなと思っていたものが第3話で回収され、このスピード感、まったくこの脚本はどこまで行ってしまうのだと、またまた頭を抱えました(良い意味で)。

noteで感想を語る時には、なるべく他の方のレビューなどは見ないまっさらな状態で想いのままに綴るようにしているのですが、第2話も、自分が感想を書いた後に他の方の意見を拝見していると、さらに解釈が広がることも多くて。
あれやこれやと作品を噛み砕きながら想う時間が、楽しいです。

では、今回も第3話、長々と語ります!すでに導入が長いですね(笑)



番組情報

「海のはじまり」公式サイト


Tver見逃し配信はこちらから


第3話 大切な人を失うということ

すくすくの線

第1話、第2話に続き、今回も水季と海の二人のシーンからスタート。
二人で暮らす家の中、「しんちょうきろく」と書いた柱の前で海の身長を測り、「すくすく」と笑って言いながら、柱に線を引いて海の身長を記録する水季。
海も「すくすく」と嬉しそうに笑います。
海の成長に目を細めながらも、「ママ越すのはいつかなあ」と言った水季の表情はどこか少し切なげ。
「ママより大きくなるのは難しいんじゃない?」という海に、「そうかなあ。夏くん背高いしいけんじゃない?」と、当たり前のように「夏くん」というワードを口に出す水季でした。

前回第2話で海がランドセルを開け閉めするのを眺めていた水季の表情もそうだったのですが、今回柱に線を引く水季の表情も、どこか切なく苦しげに見えました。
やっぱり、この時点で水季は既に自分の病のことを知っていて、これからすくすくと育っていく海のことを、自分は見守ることが出来ないというどうしようもない悲しみを背負っているように見えますね。
これから広がる海の未来と、そこにいられない水季。
子どもの成長を記録する、本来よろこびと希望だけに溢れているはずの「すくすく」の線が、「あと何本引けるかな」「どこまで大きくなるのかな」という切なさに変わる。
冒頭から胸がきゅっとなりました。

ここで登場したすくすくの線。
今回第3話では、「線」をキーワードに、生、つながり、存在というものが描かれていたように思います。
詳細はのちほど。

揺れるカーテン

水季が窓を閉めるシーン。
陽が差し込む窓辺で、外を向いた水季の後ろ姿が、風でふわっとした白いカーテンによって隠されてしまう。
その姿を不安そうに見つめる海は、「どこ行くの?」とママに聞きます。
ただ図書館の仕事へ向かう予定だった水季ですが、不安げな海の表情に気が付くと、海の頬を両手で包み、「いなくならないよ。いなくならない。」と言い、海をぎゅっと抱きしめました。
はあ。いなくならないで(涙)

第1話からずっと、海ちゃんは「いる」「いない」ということに敏感ですね。
水季が亡くなった後だけでなく、水季がそばにいた頃にもどこかそれに敏感だった様子。
ママがそばにいないと不安になってしまう子だったのか、それともやはり、子どもながりにどこかで水季が「いなくなる」ということを感じ取っていたのでしょうか。
優しく海を抱きしめた水季も、苦しそうでした。

ここでの「カーテン」も、物語の中でまた、存在の儚さを表現するようなアイテムとして登場します。

「夏くん」

海と身長の話をしている中で、水季から当たり前のように「夏くん背高いから」と、夏の名前が出ました。
こんな風にきっと、水季は海の前で「夏くん」のことをよく話していたのでしょう。

子どもにとっての父親の印象って、父親がいない時間に母親がどんな風にその人のことを語るかが結構影響する部分が大きいと思います。
水季が海の前で語る「夏くん」は、きっといつも好きや愛おしさが込められていて、海ちゃんには「夏くん」がママの大好きな人で海のたいせつなパパだということがちゃんと伝わっていたからこそ、海ちゃんは今、無条件に夏くんが好きなんですよね。
無邪気な子どもとはいえ、もし「夏くん」がママを悲しませた人だと聞いていたら、懐かないでしょう。
何気ない日常シーンから伝わってくる、水季が夏を想う気持ち。
それがわかるからこそ、夏に別れを告げて黙って海を産んだ水季の気持ちに何があったのか、気になりますね。

水季の部屋

水季が海と二人で暮らす家、結構物が多くて、緑(植物)が多いですね。
夏くんの部屋が、男一人暮らしのわりにやたら緑が多いな、フェイクグリーンか?と勝手にずっと気になっていたのですが、なんとなく水季の部屋に通じる部分があって、二人の性格は真反対だけれど、惹かれ合って想い合うようになったつながりがそれとなく感じられるような気がします。
水季の家は、まだあるのかな?
いつか退去する前に夏くんがこの部屋を訪れて、すくすくの線や、水季と海の7年間を見つける時がくるかもしれませんね。

はい。前回第2話の感想に続き、今回もまだ冒頭1分57秒でこの文量です。
サクサク行きましょう!

鳩サブレーと海の様子

前回第2話の続きのシーン、南雲家で一緒に過ごす夏と海。
テーブルに置かれた鳩サブレーの空っぽの袋に、ふっと和みました。
夏くんと海ちゃんで、水季が好きだった鳩サブレー、一緒に食べたんだね。

「給食全部食べた」と今日の出来事を話す海に、「へえ…」としか返せない夏と、「すごいね」と返す朱音、夏くんに見せたいランドセルをさっと渡してあげる翔平さん。
子ども慣れしていない夏と、子育てをしてきた年配夫婦の経験の豊富さが対比される、リアルな距離感が微笑ましいシーンでした。
翔平さんが、「海ちゃんが楽しいならそれでいい」とでもいうかのようなあたたかい笑顔で見守っているのが、本当に良いんだよなあ。

青色のランドセルについて、「水季がこれにしたの?」と夏が聞くと、海は「海に選ばせてくれた」と答えます。やっぱりそうでしたね。
それを聞いた夏くん、少し頷きましたが、「水季ならそうするよな」という声が聞こえてくるようでした。

その後、遊び疲れて充電切れして眠ってしまった海を見て、「やけに元気だもんね」と翔平さん。「様子見るしかないわよ」と朱音さん。
そんな二人の会話を聞きながら海の表情を見つめる夏くんは、何かを思っている様子です。

第1話で葬儀場にて海と初めて出会った時、まだ自分が父親だと知る前の段階から、夏は母親を失った海の気持ちを想像していましたよね。
自分や大和が、幼い頃に片親を失った頃の経験もあるからでしょうか。
いつも明るく元気な海の様子が、どうしても気になる様子の夏
朱音さんも翔平さんも、同じように海のことは気にかけているでしょうが、海の気持ちに配慮しながらも、きっとあえてママがいない事実を突きつけるようなことはしない。
きっとまだ水季が亡くなってそんなに時間も経っていないでしょうから、様子を見ていく、それしか出来ないそのことを、出来るだけそばにいてしてあげようという、親代わりとなった祖父母の想いを感じます。

うどん

翔平さんが出かけた後、「目が覚めてまだいたら(海が)喜ぶから」と、夏に夕飯のうどんを食べていくように言う朱音。
夏は海の寝顔を数秒見つけてから、朱音に「(準備を)手伝います」と言って動き出しました。
目を覚ました時に自分がいなくなったら、海が悲しむ。
きっとそう思って、海のために、いることを決めたのでしょう。

少しして、目を覚ました海が、「夏くん…あ、いた」と、夏の姿を確認してまた眠りにつきました。
それを見て「喜んでる」と笑った朱音さんと、「え?」と驚く夏。
「なんでか本当にわかんなくて…何もしてあげてないし…」と、なぜ自分が海に好かれるのか戸惑う夏に、両親は健在か、家族仲は良いかと聞く朱音は、「仲が良いことに理由なんてないでしょ?なくていいのよ。」と笑いました。
家族だからって必ずその家族を好きでいなければならない理由もないけれど、家族だから好き、好きならシンプルに、それだけだし、それでいい。
何かをしてあげるとか、してもらうとかではなく、いてくれるから、嬉しいし、好き。
海ちゃんの気持ちはきっとそういうことだし、誰かといるって、そういうことですよね。

朱音は少しずつ自分の話をする中で、自分は現在70歳で、水季は不妊治療の末にやっと授かり42歳の時に産んだ子であること、その水季が、妊娠した、子どもは堕ろす、やっぱり産む、一人で育てると、何の相談もしてくれなかった、ということを夏の前で話しました。

「海のはじまり」第2話感想より

前回の感想で上記のように書いたのですが、やっぱり朱音と水季の関係が気になりますね。
朱音はやっとの思いで授かった娘に愛情を注ぎ大切に育ててきたのだろうと思いますが、例えばもしかしたらその愛情が空回りして、いつも水季の手を引っ張って横に張りついて手をかけてきたタイプの親だったのかもしれません。
そういうところに、水季が自分で選ぶことにこだわるようになった背景や、朱音との間に出来た距離を生んだ理由があるのかもしれませんね。
月岡家が、血のつながりというものを越えて築いてきた家族。
それに対して南雲家は、心のつながりというところで少し距離があった家族かもしれません。
そのあたりが、前回第2話で水季の遺影に水をこぼしてしまった時の朱音の「ごめんね」の涙にも繋がるように思います。

台所の上の棚から、お鍋を取り出すように夏に頼んだ朱音。
年季の入ったその鍋には、水季が5歳の時にいたずらで描いた魚のような落書きがありました。
公式Xによると、このお鍋をずっと大切にしていたとのこと。
新しい鍋なんていくらでも買えただろうに、捨てられなかったんだろうな。
朱音の親としての愛情が感じられる場面でした。


夏が朱音に水季が海を産んだ理由を聞きましたが、ただ産むと決めたことだけを聞かされていた朱音。
ただ、「父親に知らせないのは、選べないからって。その人、私が産むって決めたら、じゃあ父親になるって絶対に言うから。他の選択肢を奪いたくないって。だから、頼りなかったとか、他に誰かいたとか、そういうんではないんですよ。」と、水季が言っていたことを夏に伝えました。

女性は、物理的に産むか産まないかの選択をまず迫られますが、身体的な変化を負わない男性にとって、「親になる」とはなんなのか。
この物語のテーマに繋がるシーンでした。
就活をして、波風を立てないように生きて、という未来を描いていた夏の姿を見ていた水季ですから、じゃましたくなかったのか…。
それが優しさだったとして、知らされてすらいなかった夏には、選ぶことすらも出来なかったわけで。
水季の気持ちの変化にどんな背景があったのか。早く知りたいです。

それにしてもこの一連の「うどん」のシーン。
麦茶を出して、鳩サブレーを食べて、戸棚を開けさせて、一緒にうどんの準備をして夕飯を食べる。
朱音と夏の距離が少しずつ縮まっていく様子の描かれ方がリアルです。
うどんってなんか、家族感ありますよね。
わざわざ夏のために出前をとったりとかじゃない感じが、朱音なりに距離を縮めようとしていることが伝わります。
夏もあたふたしながらなんとかお手伝いをしようとしつつ、流れ作業の中でぽつりぽつりと会話をする二人の緊張感も伝わってくるようなシーンでした。

…まずいですね。「うどん」で1800字くらい書いています(笑)

産んでごらん

早くに子どもを二人出産した職場の女性の先輩・小出と、後輩の彩子と、3人で食事をする弥生。
こんな会話が展開されました。

-百瀬弥生「早くに二人出産してこのキャリアってすごいです。」
-小出志織「それでも色々諦めたけど、自分の仕事のこと。産んでなきゃなって思う時ある。」
-百瀬弥生「後悔してるってことですか?」
-小出志織「いや後悔とは違う。そう思っちゃう時もあるってだけ。だって自分の子どもって超かわいいからね。産んでごらん。」
-三谷彩子「産みたいです。」
-小出志織「早く結婚しなよ。」
-三谷彩子「セクハラです。モラハラです。」

「海のはじまり」第3話より

産んだ女性、産まなかった女性、まだそうした選択の場面に立っていない女性。
同じ女性でも立場や経験、キャリアも人生もさまざま。
誰が偉いとか優劣の話ではないけれど、誰もが自分の主観で自分の人生を生きている中で、後悔だったり、何かを選ぶことで手放さざるを得なかったものはある。
そういう話になる時って、みんながそれぞれ気を付けているはずなのに、さらっと何気なく放たれた言葉がちょっとチクっと刺さったりすることって、同性同士でもあるんですよね。
まさか相手が、弥生が、子どもを堕ろした経験があるとか、血の繋がらない子どもの母親になろうとしているだなんて、小出は思いもしませんから。
すべてに気を遣い過ぎてしまうともう何も話せなくなってしまうけれど、やっぱり自分が知っているその人なんてほんの一部に過ぎないんだということを感じさせられるシーンでした。


「お父さん」

職場で休憩中、今度会う海に渡すプレゼントを何にしようか調べている弥生。
親戚の子ですかと彩子に聞かれたのを濁しつつ、「何が好きかわかんないんだよねえ。聞いてもらうかなあ、お父さんに。」と微笑んだ弥生。
この時の弥生の表情は穏やかでした。
夏に娘がいたこと、夏が父親だったこと、そのことをこちらが思う以上のスピードで受け入れて、思う以上のスピードで関係を築こうとしている弥生
弥生の過去を知ってしまった私たちとしては、「弥生大丈夫?無理してない?」と気になってしまうシーンでしたね。

ここでの弥生さん、子ども慣れしておらずまだまだ戸惑いの最中にいるであろう夏に対して、自分がアシストをしてあげることで、夏と海との関係性構築を進めてあげよう、という想いもあるのかもしれないなと思いました。
前回第2話で、「もし月岡くんがお父さんやるってなったら、私がお母さんやれたりするのかな」「決めるのは海ちゃんだけど、選択肢の中に入れてもらえたらなって。」と夏に電話で伝えた弥生。
選ばせるとしつつも、自分が母親をやるという決意は固めていて、それに向かって、そうなるために、自分も動き、周りも動かしていこうとしているようにも少し見えました。

前回の第2話を観た後、弥生さんがなぜすっと海を受け入れ母親になろうとするのか、ずっと考えていました。
過去に自分が産んであげられなかった命に対する罪悪感が弥生を動かすのかな、とも思うのですが、なんだかそれ以上に、夏くんを失うことを恐れているような気もするんですよね。

今現在の夏はまだ、海のことを考えるのに精一杯だということは、弥生さんならきっとわかっているはず。
でもそこで、「月岡くんを支えよう」「月岡くんの戸惑いに寄り添おう」を飛び越えて、「海ちゃんの母親になろう」の思考に至った弥生さんに、なんともいえない違和感をほんのりと感じるというか。
きっとどこかで、夏が海の存在を知った今、海を放置するわけないということをわかっていて、そうなった時に、夏が「弥生さんに海のことまで背負わせられない」と思って別れを切り出すのでは、みたいな不安を、弥生が感じている気がする。
だからその前に、夏くんの言葉をやわらかく制して、先回りして、私母親やりたいと思っているよと伝えて、動いている。
夏くんを手放したくない、夏を失うのが怖い、という感覚がどこかにあるような気がします。
「本当に月岡くんの子なの?」「私との将来はどうするの?」
そういうことを一言も言わずに、夏と海を尊重して選ばせているように見せて、本音は自分から母親になるという選択肢を提示することで自分が隔てられないように必死になっているような。
物分かりの良い恋人でいて、海ちゃんに懐かれるお母さんでいて、必要とされるように振る舞おうとしているというか。
前回の感想でも書いたけれど、弥生さんって、きっと夏に救われたり癒されたりしてきたと思うので、その存在を失いたくない、という、不安感のようなものが漂っているように見えるんですよね。
皆さんはどうご覧になりましたか?
弥生さん、私はあなたの本音を知りたいです。

家族

夏の家を訪ねて来た弥生。
玄関で出迎えた大和と「久しぶり」と言って笑う様子から、大和が夏を慕ってよく家に来ていたのだろうということや、弥生との関係の良好ぶりがわかりました。
帰ろうとする大和に、「あの…お母さんってさ…」と切り出し、思い直して「元気?」と聞いた弥生。
大和にとって、今の母親は血の繋がらない義理の母親。
海に近い経験をした大和にとって、義理の母親がどのようなものか、聞いてみたくなったのでしょうか。

その後、洗い物をしながらの夏と弥生の会話。

-百瀬弥生「ご両親再婚された時ってさ、すぐに受け入れられた?」
-月岡夏「うん…。大和もお父さんもああだから、抵抗あったの最初だけで、時間経って自然と。俺はなんもしてなくて、あの二人があの二人だったからよかったって。」
-百瀬弥生「向こうもそう思ってると思うけどね。月岡くんとあのお母さんだったからって。思ってるよ。」
-月岡夏「…電話の、母親にってあれ…。」
-百瀬弥生「うん。素敵な家族だなって、本当に思うんだよ、月岡くんち。だから、産んだとか関係なく私にもって言うのはおこがましいけどさ。」
-月岡夏「(黙って首を振り、弥生を見つめる)」

「海のはじまり」第3話より

うーーーーーーーん。
やっぱり弥生さん、海の母親になるというよりも、夏と家族になるということを手にしたいのでしょうか。
弥生さん、和哉さんやゆき子さんとも面識があるのでしょうか、月岡家ともきっと関係は良好そうですね。

第2話で弥生の過去が描かれた場面で、弥生が自分の母親に電話をする声がモノローグで流れましたが、あの会話、「お騒がせしました」と言った言葉遣いだったりに、少し違和感があって。
母親との距離感、もしかしたら家族というものに対して、弥生はあまり良い思いがなくて、月岡家の"素敵な"家族に憧れがあり、その一員になりたいという想いが強いのかもしれません
よく言えば、家族のつながり=血のつながりではない、という、フラットさが弥生にはあるのかもしれないですね。
だからこそ、自分と海の間に血のつながりのないからということで、線を引かれてしまう、つまり別れを告げられてしまうことを恐れるから、自分から一歩二歩先を行って繋ぎ止めようとしているような気がする。
うん。わからない。とにかく幸せになってほしいよ弥生さん。

そして夏くん、ここでも結局、「弥生、母親になる宣言」について掘り下げられず、何か言おうとした様子を見せつつも、弥生を見て言葉を飲み込んでいましたね。
今は海ちゃんと向き合うことで精一杯の夏くん。
弥生に対しては、自分に対する優しさや愛情が伝わり感謝をしている部分もありつつ、ちょっと弥生のスピード感に追いついていけない様子かな。
弥生が何を考えているのかわからなくて、じっと心の中で考えていて、まだ言葉にならない段階。
夏くんは、その想いが固まって言葉にした時に、とても強いから。
その強さで、弥生さんをぐーんと突き放してしまわないように願います。


ハッピーな月岡家

一方、月岡家では、夏から話があるから家族を招集してほしいと電話を受けたゆき子を中心に、和哉、大和と3人で、そろそろ弥生さんと結婚ではないかと盛り上がっています。
恐らく聞かされるのは、海のことでしょう。
予想だにしない夏の話を受けて、月岡家がどのように受け入れていくのか、展開が楽しみです。

この月岡家でのシーン、4人掛けのテーブルで、並んで座る和哉とゆき子、ゆき子の向かい側に大和、和哉の向かい側の空席は夏の席だということがわかります。
これがいつもの月岡家の定位置なのかなと思うのですが、ゆき子の前に大和、和哉の前に夏、という風に、血のつながりのない関係が対面になるようになっていて。
これってもしかしたら、新しい家族を構築していこうとした時に、食卓を囲んで会話をしながら関係を築いていけるように、あえて血のつながりをクロスさせる配置にした親心なのかなと感じました。
それがですね、昨夜TVerで公開されたスピンオフを観て確信に変わりあたたかい気持ちになりました。
そう、スピンオフも良すぎたので、また別で感想を書きたいと思います!


海の日、親の練習

海の誕生日。今年は海の日に、海に会いに南雲家を訪れた夏と弥生。
弥生の姿に少々戸惑う様子の朱音さん。
さっそく渡したピンク色のイルカのぬいぐるみのプレゼントに喜ぶ海と、ほ喜んでもらえて笑顔になる弥生さん。
ちなみにピンク色のイルカは幸運の象徴とされているそうです。
対照的に、海の姿をじっと見つめていた夏は、「元気だね」と海に聞き、「元気!」と答えた海に何かを思う様子。

夏が海と出かけて行く前に、もしも何かあった時のためにと、母子手帳、保険証、家の固定電話の番号、和哉さんの携帯電話の番号を渡し、海に食べ物のアレルギーはないことと、水分補給をこまめにさせるようにと注意事項を伝える朱音。
一気に色々言われて戸惑う様子の夏を見て、朱音は「不安になるでしょ、何かあったらって言われちゃうと。練習って言うのはいやだけど、でも、練習してください。親って子どもの何を想ってて、何を知らないといけないのか。」と言いました。

普段小さな子供と接することのない人間が、子どもと出かける時って、きっとこの夏くんみたいになりますよね。
そっか、そこまで考えなきゃいけないんだ、色々注意しなきゃいけないんだ、自分が守らないといけないんだ。
まだ"親"を知らない自分を突きつけられたような夏くんがとてもリアルでした。

朱音さんは特に夏くんを追い詰めようとしたわけではなく、孫を預けるために必要な情報を伝えたまで。
やっぱり一緒に過ごさなければわからないことってあるし、女性も男性も、子どもを産んで、そうやって一緒に過ごしながら、何かを思い、知り、親になっていく。
だからこそ、夏にもし親になろうとする気持ちがあるのなら、それを自分で知っていってほしい、少しでも水季の7年間を追いかけてほしい、そんな気持ちだったのだと思います。
命を前に、練習もなにもない。本来はないけれど、あえて「練習」という言葉を使ったこのシーン。
「事故」や「練習」という言葉が、ちょうどよく引っ掛かりになって、距離感や一種の軽さを表現しつつ、命の重さを伝える。
なんというワードセンス。さすがですよね。


憧れのやつ

バスに乗り、海の希望で水季が働いていた図書館に向かう夏、海、弥生の3人。
図書館の近くに水季と二人で住んでいたのかと海に訊ねる夏。
その様子を見て、口角を上げて微笑むようにしながらもすっと前を見つめた弥生。
夏はそんな弥生を見つめていました。
ここでも弥生に対して何かを思い、言葉を飲み込んだ夏です。
弥生さんはやっぱり、「水季」という言葉が出る度に、自分は決して入り込むことの出来ない過去を感じてしまうのでしょうか。

バスを降りてすぐ、夏と弥生の間に入り、右手で夏と、左手で弥生と手を繋ぎ歩き出す海。

-百瀬弥生「どうしよう。これ写真撮ってほしいやつだ。」
-月岡夏「あ、撮ろっか?」
-百瀬弥生「違う違う、その…外野から?」
-月岡夏「外野?」
-百瀬弥生「3人のこの感じ。絶対憧れのやつになってる。」

「海のはじまり」第3話より

真ん中に子どもがいて、手を繋いで歩く、仲睦まじい3人の家族。
まさに憧れの家族像を絵にしたような状況に、嬉しそうに笑う弥生と、そんな弥生を見て少し笑う夏くん。
やっぱり弥生さん、「仲良し家族」というものへの憧れがあるのかな。
この一瞬で、これから築いていかれるかもしれない、3人の「家族」というものをイメージさせますね。
でもここで登場した「外野」の言葉。
これがさあ!!まさか津野くんによって回収されることになるなんてさあ!!もうさすがですよ!!!!!!!!(喜んでる)
ということで、後で津野くんのシーンで語らせてください。


お母さんやれますって顔

夏と弥生と海が出かけた後の、朱音と翔平の会話です。

-南雲朱音「ちょっと意外だった。案外すんなり受け入れてるっていうか、不思議な人ね。あの水季の相手だから掴みどころはないだろうって思ってたけど。」
南雲翔平「いいじゃない、受け入れてくれないより。それにほら、ああいう子もいるとさ、海にも彼にも安心材料になるし。」
-南雲朱音「あの子…私お母さんやれますって顔してた。」
-南雲翔平「そうかな。」

「海のはじまり」第3話 より

ここ、色々ぎゅっと詰まっていると思いました。

まず夏くんについての印象。
本当にそう。案外すんなり受け入れたし、不思議な人だし、掴みどころないですよね。朱音さんに激しく同意です(笑)
夏くんはまだ、父親になるかどうか、というかそもそも父親になるってなんだ?という状態。
きっと頭の中や心の中でぐるぐると考えているだろうけれど、固まっていなくて言葉に出来ない状態。
そんな夏のことを、朱音さんはまだ知っていく途中ですが、「月岡さんってこんな人」というのを言えるようになる程度まで、少し距離が縮まったことも伝わってくるシーンでした。

朱音さん目線で見ると、水季から大切な海を預かり、海の未来に対して責任を負った立場として、まだ夏がどんな人なのか、父親になると言われた時に託してよい相手なのか、掴みきれず不安な状態だと思います。
その上で弥生さんまで現れたら、それは戸惑いますよね。

朱音さんにとって水季は、長年の不妊治療の末にようやく授かった待望の娘。
欲しくて欲しくて、叶わなくて、やっと授かって、懸命に育ててきた。
その道のりを、つまり子を産まなければわからないその道のりを知らない弥生が、ぽんと現れて「今から母親やります」という雰囲気でいるのを簡単に「そうですかお願いします」とは受け入れられなかった。
また、水季という大切な娘を亡くして、その娘が娘なりに懸命に育てて築いてきた「海のお母さん」という居場所を、すっと現れた弥生がとって変わろうとしていることも、受け入れがたかったのだと思います。
海を迎えにきた玄関でのシーンでは、顔に出しつつもなんとかぐっと言葉をこらえた朱音でしたが、それは色々な思いが生まれますよね。

そして翔平さん。
翔平さんは、海と夏と弥生が良いのであれば良いんじゃない、というスタンスに思えますが、弥生のことを「安心材料」と言ったところに、色々表れている気がしました。
例えば、「やっぱり子育てには"お母さん"が、"女性"が必要だ」というような考え。
第1話からもずっと描かれている、何をもってして親になるのか、親がはじまるのかという部分について、女性と男性の間の圧倒的な違いとして、女性のみが身体で負う変化や負担というものがあります。
どうしても父親が働いていると子どもは母親と過ごす時間の方が多くなるでしょうから、子を産み育てるというテーマにおいて、どうしても男性は一歩下がるというか、女性が一歩前にいるというか、そんな感覚を抱くのかもしれません。
「やっぱりお母さんだよね」みたいな感覚って、きっと性別問わずみんなどこかにあると思うんです。
それが言葉になったシーンだなと思いました。
そういう感覚や概念が、「安心材料」という絶妙な言葉で表現されたシーンだったように感じます。


カーテンと津野くん

図書館に到着した海。
窓際で揺れる白いカーテンの向こうに女性の後ろ姿を見つけ、「ママ」と呟き駆け寄る海ですが、そこにいたのは三島芽衣子。
少しがっかりしながらも、笑顔をつくって「こんにちは」と言った海でした。

このシーン、冒頭の、自宅の窓際に立つ水季を見つめる海のシーンと重なりますね。
空の方を向いて、カーテンの向こうで、どこかに行ってしまいそうだったママ。
そんなママが、帰ってきた。
そんな風に思ったであろう海ちゃんが、がっかりしながらも笑顔をつくったところ、やっぱり一生懸命無理をして笑っていようとしているようで、切ないシーンでした。

そして、来ましたね、俺たちの津野くん!!
もうこのくだりを「カーテンと津野くん」という見出しにしてしまうくらい、津野くんを待っていました(笑)

図書館で津野を見つけて笑顔で駆け寄ってきた海と、優しく手を振る津野。
いつもきっとこうやって会っていて、いつもだったらその後ろにいたのは水季だったのでしょう。
今回は、「いた!海ちゃん一人でどっか行かないで。」と慌ててやってきた弥生と、その後ろから駆けてきた夏の姿を見つけ、ぎこちない会釈をする津野。
ここでの会釈の、他人行儀っぽいツンツンした感じ。
まだ津野くんが水季の何だったのかは全然描かれていませんし、津野が想ってるだけで実際何もなかったような気もしますが、絶対何かあった感じで謎の敵意的なものを夏に向ける津野くん
そんな雰囲気がとてもリアルで、思わず会釈をした夏の気持ちが手にとるようにわかるシーンでした(笑)

その後、津野が子どもたちに絵本の読み聞かせをしていたシーン。
ここで読まれていた「ぷかぷか」という絵本。
「とっても天気の良い日。広い広い海にうみにぷかぷか浮かんでいるのは「たこ」。空も海も青くて水平線がわからなくなって全部一緒になってしまった様なむにゃむにゃ青い景色に「たこ」がぽつん。」という始まりの、ゆるーい絵本のようです。
空と海の境界がわからなくなってしまった広い海にぽつん。ふわり。ゆるん。
第1話冒頭の水季と海の「海のはじまり」のシーン、そして「親のはじまりって何?」というテーマにも繋がっていくような内容ですよね。
さすが。絵本ひとつとっても、絶対意味があるんだよな。
この物語は、ほっこりして読み終えられるゆるい本だとのこと。
バッドエンドの暗示ではなさそうで、ほっとしています。

津野くんの読み聞かせを聞きながら、ぼーっとした様子の夏。
絵本にもあった「はじまり」について考えていたのか、ずっと引っかかっている海の様子について考えていたのか、津野について考えていたのか。
じーっと考え込む夏の姿と、絵本を楽しみ拍手をする弥生の姿が、対照的でした。


「お母さん」

弥生と海が二人で「ウォーリーを探せ」を読んで遊んでいる間に、二人で会話をする津野と夏。
弥生が夏の恋人だと知り、「南雲さんとタイプ違いますね」と津野。
「お二人で育てるんですか?」「大丈夫ですか?無責任とか言われません?」と、静かにゆっくりと無表情で夏を刺していきます(笑)

「お母さんにここに行けって?」と、朱音に言われて図書館に来たのかと夏に訊ねた津野ですが、夏は「お母さん」という言葉から水季を連想して一瞬食い違います。
津野の「お母さん」という言葉は、第1話でも登場しましたね。
第1話で、朱音に向かって「お母さん」と津野が呼んだ時、やんわりと拒絶された津野。
今回ここで、夏が「お母さん」を水季だと思ったナチュラル勘違いによって、また津野と朱音さん、つまり津野と南雲ファミリーとの間に線を引かれたような描写だったと思います。
確かに海ちゃんのお母さんは水季ですから、津野が海を起点に南雲家を捉えていえれば、朱音さんはおばあちゃんのはずなんですよね。
津野が朱音さんを「お母さん」と言うのは、津野にとっての起点が水季であることを表していると思います。

続きの会話の中で、「海ちゃんが僕に会いたがったことなんてないです」「僕は水季さんが海ちゃんといれない時に預かったりシフトの調整したり、それくらいです。付き合ってないです。そういう関係じゃないです。」と、津野。
津野によって、水季との間には何もなかったことが語られますが、言い方だったり、やっぱり津野は水季のことを想っていたのは間違いなさそうなんですよね。
想いすら伝えていなかったのかもしれないし、伝えた上で線を引かれたかもしれない。
わからないですが、津野が水季に想いを寄せていた前提で考えた時、津野もやはり水季という大切な人を失ったわけで、水季が残した海ちゃんに対して何かしら出来ることをしていきたいと思った矢先に実の父親が現れた、という状況。
そりゃ津野くんも、本を盛大にばらまいてしまったり、大混乱ですよね。
そんな中いつも通り出勤して、笑顔で絵本の読み聞かせをして。
津野くんも、他の登場人物と同様に、どうしようもない喪失感を抱えながら、日々を過ごしています。
いつか回想シーンで、水季と一緒にいる津野くんが思いっきり笑ってるところとか、観たいなあ。はあそんなの泣いちゃう。観せてください(懇願)

謝んないんかい

-月岡夏「…すみません。」
-津野晴明「すぐ謝んないでください。いじわるしてる気になって気分が悪いので。」
-月岡夏「すみません。」
-津野晴明「…。」
-月岡夏「…わざとじゃないです。ごめんなさい。」
-津野晴明「もういいです。ずっと謝っててください。」
-月岡夏「…。」
-津野晴明「謝んないんかい。」

「海のはじまり」第3話 より

すみません、ただここの津野&夏のショートコント「謝んないんかい」のくだりが好きすぎて、書き起こしたかっただけです(笑)
津野くんと夏の不器用さ、でもちょっと距離を縮めたい感じ、いろいろ詰まっててとても好きな、思わず笑ったシーンでした。

夏と津野って、結構似ているタイプの二人ですよね。
想いを秘める感じというか。
夏は想いや考えをなかなか言葉に出来ず、もごもごしてしまう人。
津野は、とりあえず何か喋るけれど、放つ言葉が不器用すぎて気持ちにリンクしない感じで伝えてしまう人。
二人とも、根っこの属性は近い気がしますし、仲良くはならないにしても、いいコンビになっていく気がしますね。
なんていうか、ここぞという時に夏くんに対してぶっきらぼうだけど背中を押してくれるのが津野くんな気がするし、津野くんのモヤッとした想いを良い意味で手放させてあげられるのが夏くんな気がします。

夏としばらく話した後、津野が「すみません感じ悪くて。そちらもそうだと思いますけど、まだ感情がぐちゃぐちゃで。別に怒ってないんですけど、イライラした感じになっちゃって。海ちゃんの望むことなら、なんでもいいんです。誰が親やっても、誰と暮らしても。」と言いました。
これに対して「水季がそう言ってたんですか?」と聞いちゃう夏くん、いや今のは津野くんの気持ちでしょう、と思いつつ、この絶妙なすれ違いがまだ二人の距離感を表していてナイスです。
ちょっと感じ悪くしちゃって、自己嫌悪に陥って、謝る津野くん。
ばーっと感情が溢れた時に強めに言葉を吐いちゃって謝る夏くんと、似てる。

夏が水季と海の7年間を知っていくにあたって、津野くんが語る二人の姿というものを通じて、これからどんどんその解像度が上がっていくでしょう。
そこまでのこの、夏と津野、目黒蓮vs池松壮亮の、バチバチ、ピリピリっとした緊張感と、絶妙な謎の抜け感が漂うであろうお芝居が、とても楽しみです。

母子手帳

津野に「母子手帳って見ました?色々書いてましたよ。」と言われたことをきっかけに、朱音に渡された海と水季の母子手帳を開いた夏。
ここでのちょこっとアシストは、津野くんの優しさですね。
そして、津野くんが過去に母子手帳を見たことがあるということですよね。
他人の母子手帳なんて、なかなか見ることもないものです。
水季が海ちゃんと一緒にいられない時に預かって、病院に連れて行ったりとかしたこともあったのかもしれないですね。

母子手帳について、公式Xで一部のページがアップされていました。
産まれる前から既に「海ちゃん」と呼んでいたり、イルカの靴下を買ったよと書いてあったり、読んであげたい絵本がたくさんあると書いてあったりして。
7月15日のページ、海が産まれる日まで、水季が大切に待ち遠しくお腹の中の海を感じていた日々が綴られているようです。
公式Xに、あるきっかけがあって母子手帳に記録するようになったとあります。
朱音さんのとの関係があまり良好ではなさそうな水季でしたが、例えば朱音が自分を産むときにつけていた記録を読んで、とかですかね。
今後また描かれていくと思いますので、待ちましょう。


すくすく?

母子手帳を読む夏のもとにやってきた海。
「ママの字だ。日記?手紙?」と聞く海に、子どもの成長の記録だとまた生真面目に夏が答えると、海は「すくすく?」と嬉しそうに言いました。
ここでは海が何を言っているのかよくわからなかった夏くんですが、私たちは知ってしまっていますもんね、あの、「すくすくの線」を。
成長と聞いて、ママの「すくすく」を思い出した海ちゃん。
そして確かにこの母子手帳は、水季の日記であり、海への手紙であり、受け取った夏にとっても手紙のようなものかもしれません。
ひとつ、母子手帳という形で、水季から夏へ、親のバトンが渡されたようなシーンでした。

母子手帳って、男性はあまり見ないのでしょうか。
津野くんに言われるまで、母子手帳を見る、そこに何か書かれているという概念がなかったような感じの夏くんでしたね。
あまり人に見せるものではないからこそ、水季の育むよろこび溢れた記録が眩しくてあたたかくて、同時にそれをそばで一緒に感じることの出来なかったという夏くんの自分に対する後悔や切なさが感じられる、そんな表情の夏くんが印象に残っています。

海ちゃんに対して、「いつもここで会ってたの?だから今日来たかったの?大丈夫?水季がいないここ来たの、初めてでしょ。いないって本当にもう水季がいないって…」と問いかけた夏。
そんな、いないとか、直接的に言わないで!と、海ちゃんの曇っていく表情を見ながら思う一方で、これまで夏が海のことで何か引っかかっていたり、津野くんの絵本読み聞かせ中にぼーっとしていた理由がわかったシーンでした。
ママがいなくなって悲しいはずなのに、ママとの思い出がたくさん詰まった図書館に行きたいと言った海。
ここにくればママに会える、そう思ったのかもしれません。
でも会えなくて、カーテンの向こうにいた人もママじゃなかったし、いつもいてくれたママの代わりに、今日は夏や弥生がいて。
いつもの図書館に、ママだけがいない。
そんな現実を肌で感じてしまう海ちゃんのことを、気にかけていたんですね。
不器用すぎて正面から傷をえぐりにいくような言葉を投げてしまう夏くんが、夏くんらしくてちょっと面白いんですよね。
散々心の中でぐるぐる考えて、いざ言葉にすると決めると、すごい直球ドストレートで投げちゃう、みたいな。
それが、水季に対しても弥生に対しても、海に対しても同じ。
海のことを、小さい子どもだからとかそういうフィルターではなく、一人の人間として見ることの出来るフラットさもあって。
夏くんの不思議な魅力と、すれすれヒヤヒヤな危なっかしさが感じられるようなシーンでした。
そして、ここでは話をそらすように、母子手帳を読んでと夏にねだった海ちゃんでした。

外野

寄り添う夏と海の後ろ姿を見て、思わず立ち止まった弥生。
そこにやってきた津野くんが、「疎外感すごいですよね」と一言。
ここでの津野くんの現れ方と喋り方がややホラーみがあって、THE池松壮亮という感じで、好きです(笑)

「自分は外野なんだって自覚しますよね。」という津野に、「…確かに。外野…ですね。」と笑った弥生。
その手には、「親になったら知っておきたい子育て六法~」「お母さんのための子育て教科書~」というタイトルの本が抱えられていました。

さて、「外野」です。
第2話で「外野」という言葉はここで2度目の登場になりました。

1度目の「外野」は、海ちゃんを真ん中に、弥生と夏と3人が手をつないで歩いたシーン。
まさに憧れの家族像のその中にいる自分が嬉しくて、外野から写真を撮ってほしいと言った弥生。
傍から見たらいかにも「家族」「親子」「夫婦」に見えるだろう自分たちの姿を表現する言葉として、弥生・夏・海の3人以外のことを「外野」と言っていました。

一方、この図書館でのシーン。
寄り添う夏と海、その二人の背中を前に、立ち止まった弥生。
やっぱりどうしたって、親になるとかどうの前にもう事実上の親子である夏と海。
その二人を前にした津野や弥生は、「外野」。
さっきまで、自分も中に入っていたはずの弥生ですが、やっぱりここはもうどうしたって外野で、弥生と津野の部外者感を強調するワードとして「外野」が使われました。

「外野」と聞いて、一瞬考えて、笑った弥生。
ちょっと勘違いしてしまった自分を笑ったような、空元気みたいな感じもあって。
そのまますーっと消えていった津野くん。
弥生の手元に抱えられた本と、「外野」という線引き。
幸せの象徴と距離感の象徴、このスパンで、しかも津野によってこの「外野」という言葉が回収されるとは。

そしてついでに弥生さんが抱えていた本。
母親になるために、本を読んで知識をつけようとするのが、また弥生らしいですよね。
やっぱり自分には子を産み育てた経験がないからこそ、"いいお母さん"になるために、真面目に学んで、知識をつけて、努力する。
まず"頭"で母親になろうとするところが、弥生らしいなと思いました。
母子手帳を通じて過去の水季の想いを辿り、今目の前にいる海の本音を知ろうとする夏。
それに対して、未来のなりたい家族像、母親像を描き掴もうとする弥生。
夏と弥生も対比されて描かれているように感じます。


「楽しかった?」

南雲家に帰ってきた夏と弥生。夏の背中には、眠ってしまった海。
「大丈夫でした?」と心配した様子で夏と弥生に聞いた朱音に対して、弥生は笑顔で、「はい、楽しかったです」と一言。
この一言が、朱音の心に波風を立ててしまいました。

-南雲朱音「大丈夫でした?」
-百瀬弥生「はい。楽しかったです。」
-南雲朱音「…楽しかった?…そう。」
-百瀬弥生「はい。」
-南雲朱音「…子ども産んだことないでしょ?」
-百瀬弥生「…ありません。」
-南雲朱音「大変なの。産むのも育てるのも。大変だろうなって覚悟して挑むんだけどその何倍も。」
-百瀬弥生「はい。尊敬します。」
-南雲朱音「別に尊敬しろなんて思ってないけど。産みたくて産んだんだし当然のことなんだけど。水季もそう。産みたくて産んだし、もっと育てたかったの。悔しいの。水季がいたはずなのに。血のつながりが絶対なんて思わないけど、でもこっちは繋がろうと必死になってやっと繋がれたの。だから悔しい。」
-百瀬弥生「でも…、本当に楽しかったです。ありがとうございました。私まで一緒に。」
-南雲朱音「…いえ。こちらこそ。」

「海のはじまり」第3話より

ううう。ぐーーーーーっと苦しくなるシーンでした。
第1話で葬儀場で朱音さんが夏と初めて会話をした時のシーンでも言ったのですが、大竹しのぶさんのあの、声が低くなくって目が真っ黒になるような、ちょっとキツめなお芝居がとても効いたシーンでしたね。

こうやって感情的になってしまう朱音さん。
大人げないと思う人もいるかもしれませんが、娘を亡くして孫を預かって、そんな不安定な状況でいきなり実の父親とその彼女が親をやりそうな感じで現れて。
こんな風な言い方になってしまった朱音さんを、責めることは出来ないなと感じます。
朱音さんだって海の幸せが一番で、海の人生にとってよいことを選びたい。
でも、やっぱり親としての、水季の母親としての感情は絶対的にありますもんね。

一方弥生も、いや確かに、まだそんなに時間の経っていないタイミングで、夏と一緒に実家まで訪れるっていうのも、確かにちょっと踏み込みすぎなところもあるんですよね。
夏はそんな弥生に対して、いいのかなと思いつつもまた言葉を飲み込んで少し甘えたのでしょうか。いや、弥生さんを尊重したんだな。
「楽しかった」の一言は本音だったと思うけれど、海ちゃんが大丈夫だったかとまず聞いた朱音に対して、自分は楽しかったと一番に答えてしまったところも、朱音の心を逆撫でしてしまったように思います。
親だったらまず子どもの安全を、子どもの様子を気にかけるだろう。
産んだことがないから、わからないわよね。
そんな感じだったのではないでしょうか。朱音さん。
驚きと戸惑いと、少しの反省が滲んだような弥生。
言いたいこともあったでしょうが、ぐっと飲み込んで、ありがとうございましたと頭を下げた弥生さんは大人でしたし、そうやってその場を終わらせようとした気持ちの表れでもあったと思います。
ここではね、まさか朱音は、弥生が子どもを堕ろした過去があることなんて知りもしないですから、「産んだことないでしょ」の言葉が、産めなかった過去を抱え、少し前に「外野」という言葉で津野くんに刺された弥生をさらに刺してしまったシーンでした。
本当に、人はいかにその人を知らないか、そしてみんな何かしら抱えているのだということを、考えさせられますね。
また、女同士であっても、「子どもを産む」という経験をしたかどうかの違いで生まれるなんともいえない溝というか、区別みたいなものって、実際どことなくやっぱりあって。
弥生が女性の先輩と食事をしたシーンにもありましたが、朱音と弥生の間にもそういう溝のような、線引きのようなものがあることが表現されたシーンでした。


「楽しかったね」

さきほどの朱音と弥生のバチバチとした冷戦を何も言えず見ていた夏。
弥生と二人の帰り道、しばらく無言で歩いて夏ですが、弥生に「楽しかったね」と言いました。
そう言われて、少し驚いたような顔で夏をじっと見つめた弥生。
もう一度、「楽しかったね」と言った夏。
弥生は少し笑って、「うん」と言いました。

これなーーーーーーーー。
ここで夏が「楽しかったね」と言ったのは、やっぱり弥生に対する優しさなのですかね?

今日1日、図書館で過ごした夏くん、きっとそんなに楽しくなかったと思うんですよね。
津野くんとピリピリした緊張感の中で話したり、弥生の姿を見てモヤっとしたり、母子手帳を読んでしまったり、海ちゃんの本音を気にかけたり。
弥生さんが海と仲を深めてくれて、楽しそうにしてくれていた様子は見ていたし、そこに助けられたし、感謝をしていると思いますし、さきほど朱音さんに刺された弥生のことを、夏は夏なりに察して想っていたと思います。
「楽しかったね」って、弥生を部外者にしないように、弥生と一緒に過ごした同じ側にいた人間として、言ってあげたかったのでしょうか。

じっと夏の顔を見つめて、「楽しかったね」と言い直した夏に、「うん」と笑った弥生さん。
その微笑みは、嬉しいから笑ったようには見えなくて。
夏の言い方も、全然楽しかった人の「楽しかった」の言い方じゃないし。
夏が自分に気を遣って言ってくれたことを感じ取って、でも朱音の言葉がきっと弥生の中でぐるぐるしていて、ついでに津野くんの外野ナイフも刺さったままチクチクしていて、自分だけが楽しかったのかな~とか、考えながら、月岡くんも別に楽しくなかったよね、なんて思いながらの、「うん」ですかね。
二人が下っていく坂道が、どんより曇っていて、全然空が青くなくて。
重い空気が、今後の二人を暗示しているようで、苦しいです。

その後、目を覚ました海。夏がいないことに気付きます。
「海ちゃん置いて帰っちゃったの。大丈夫。いなくなってない。」
悲しむ様子を見せないけれど、いなくなってしまったママを、そしていなくなってしまうかもしれない夏を感じているであろう海に対して、そう言葉をかけてあげた朱音でした。


出産立ち会い、父親とは

別日、職場にて上司の藤井との会話の中で出産立ち会いについて話す夏。
出産立ち会いとは何をするのか、なぜ立ち会うのかと聞かれた藤井は、「その場にいるだけ」「無責任って思われたくないからかな」「いや嘘だよ嘘。心配だからに決まってるだろ。」と答えました。

この物語に登場する"父親"って、今のところ下記の5人。
・月岡夏:娘がいることを知らなかった人
・月岡和哉:義理の息子を育てた人
・南雲翔平:実の娘を育てた人
・浅井悠馬(弥生の元恋人):父親にならなかった人
・藤井博斗(夏の上司):実の子どもを育てている人(多分)

このさまざまな"父親"を通して、男性が親になるとは、父性とは、父親とは、家族とは、というものが描かれていくと思います。
そんな中で、この上司 (同僚?とりあえず上司だとします) の藤井さん。
藤井さんって絶対いい上司で、人生経験的にも恐らく親の立場もわかる方なので、これから夏くんに対して、力になったり、"父親"というもののヒントを与えていく父親像の象徴の一人なのかなと思います。
そうであってほしい。信頼の中島歩さん。そうであってください。
でも、なんとなくどこか、"男っぽい男の象徴"になるような気もしますね。
子育ては基本的に妻がやってくれている、やっぱり妻には敵わない、男には産めないしお腹を痛めてないからね、父親って肩身狭いのよ、みたいな。
この藤井さんが、きっと一言一言重要な台詞を放つような気がするので、今後も注目です。

いつも元気な海

別日。海の希望に従い、海を少し預けるために、海を連れて夏のアパートを訪ねてきた朱音。
「弥生ちゃん!」と飛びつく海と、海を抱きかかえる弥生。
その様子をなんとも言えない表情で見つめた朱音ですが、「この前のあれ、気にしないで。ちょっと色々思い出してばーっとなってて。」と夏に先日の玄関先での出来事を詫びます。

「大人だってまだだめでしょ?思い出すと気持ちがごちゃごちゃするでしょ?」と言った朱音に、「海ちゃん、家でも元気なんですか?」と聞いた夏。
「元気ですよ。」と答えた朱音でしたが、「泣いたりとか、ごはん食べないとか…」と夏に言われ、弥生と笑顔で遊ぶ海を遠目に見つめ、「ね。…ね。」とだけ言って、よろしくお願いしますと言って去って行きました。
ここでの朱音さんの間、絶妙でしたね。

朱音も、水季が亡くなって海と過ごしながら、海の様子は一番近くで気にかけていたはず。
自分たちの前でも学校でも"いい子"な海が内に抱えている悲しみについては朱音だって気にかけていたはずですが、海がそれを表に出さない以上は自分からえぐるようなことはしないという優しさと、海が本音を言ってくれない寂しさのようなものを抱えていたように思います。
そんな中で、どこかふわっとしていて、つかみどころのない、よくわからない不思議さを醸し出す夏が、海の空元気を見抜いて、気にかけていた。
一瞬はっとしたような表情の朱音さん、夏が海をちゃんと見ていたこと、そして無意識的なレベルでやっぱり"親"なんだなということを、思ったのではないでしょうか。
夏のことも、そばで見守っている朱音さんですから、夏が少しずつ、親としての想いに変化していく様子を感じた、繊細なシーンだったと思います。


大切な人を失うということ

海の宿題を見てあげる弥生。二人を見守る夏。
ここでも、子どもが苦手な月岡くんの代わりに私が、という、弥生さんを感じます。
そして展開される、ついに夏が海の核心に迫ろうと言葉にしたシーン。
その会話をノーカットでお届けします。こちらです。

-月岡夏「学校楽しい?」
-南雲海「うん。」
-月岡夏「おばあちゃんちは?」
-南雲海「楽しい。」
-月岡夏「本当に?」
-南雲海「うん。」
-月岡夏「…なんで元気なふりするの?」
-百瀬弥生「やめなよ。」
-月岡夏「水季死んで悲しいでしょ?何してても思い出してキツいと思うし。なんで…。泣いたりすればいいのに。」
-百瀬弥生「ねえ。」
-月岡夏「水季だって元気でいてほしいって思ってると思うけど、でも、元気ぶっても意味ないし」
-百瀬弥生「そんなことないよね。みんなが優しくしてくれるから海ちゃんも元気でいられるんだもんね。」
-月岡夏「水季の代わりはいないだろうし」
-百瀬弥生「大丈夫だよ。みんなママの代わりに海ちゃんのこと助けてくれるから。」
-月岡夏「水季が死んだってことから気逸らしたってしょうがないし。悲しいもんは悲しいって吐き出さないと」
-百瀬弥生「月岡くん。…海ちゃんごめんね。頑張って元気にしてたんだよね。偉いよ。」

「海のはじまり」第3話 より

この時、海は夏のことをまっすぐに見つめながら、夏の言葉を受けて涙を流し、夏の元に駆け寄り抱き着いて、泣きました。
そんな海を抱きしめ返しながら、夏も泣きました。
海に優しく言葉をかけ、ハンカチを差し出した弥生ですが、海が弥生の方を見ることはなく、抱きしめ合う夏と海、その二人と少し離れた場所に取り残される弥生でした。

このシーン。
まず夏くんは本当に子どもが苦手っていうか一人の人間として見ているというか、投げかける言葉がとても子ども向けの言葉ではないのが、夏くんらしくて。
しかもやっぱり、言葉にするぞと決めた時の夏くんの強さよ。
こんなにもズケズケと!(笑)
ヒヤヒヤしつつ、核心に迫った夏くん。
それが結果的に、海ちゃんが一生懸命ふたをしようとした想いを溢れさせてあげるきっかけになりましたね。
第2話で海ちゃんに抱き着かれた時は、戸惑って抱きしめ返せず腕が所在なさげだった夏ですが、今回は、自分に抱き着いて水季を想って泣く海を、たどたどしく、でもしっかりと、抱きしめ返しました。

悲しみと向き合うこと。
いなくなった誰かを、いなくなったと認めること。
それって本当に苦しいし、目を背けたい時もあって。
目を背けたり隠そうと必死に笑う人を、何も言わずに見守ってあげることも愛だし、背負っているものを吐き出させてあげることも愛だし。
あえて掘ることをしなかった朱音さんや翔平さん、津野くん、弥生も、あえて真正面からぶつかった夏も、みんな愛なんですよね。全部愛。愛なんだ。愛なのに。愛しかないのに。苦しい!!!!!!!!
まったくなんてシーンなんだ!!!!!!!!!

一生懸命に元気にしてきた海ちゃん。
海ちゃんがずっと泣きたかったのなら、やっと泣くことが出来て、その時に夏くんいてくれて、よかったです。
海ちゃんがふたをしていた想いが、やっとあふれた瞬間でした。
そして、第3話タイトルにもある「大切な人を失うということ」を、水季がいないということを、夏も海も、ようやくちゃんと悲しむことが出来た、そんなシーンでした。

夏は、不器用だけれど、自分が父親になるとかならないとか、父親になるってなんだろうとか、弥生が母親になるのかとか、そういうことよりもまず、今目の前の海ちゃんの気持ちは?ということを、そのことをずっとまっすぐに考えていたんでしょうね。
自分の親が離婚したり、母親を亡くした大和のこと、そんな経験があるからこそ、ちゃんと悲しむことが必要だということを身をもって知っているのかもしれません。
いつも自分より人のことを考える性格がよく出ているし、多分ずっと、第1話でも言っていた「想像しただけでわかったような気になっちゃいけない」ということをちゃんと背負っていて、出来る限り想像して寄り添おうとするけれど、その人が何を想っているのかはちゃんとその人に聞く、想像で決めない、そんな夏の強さを感じるところもあるシーンでした。
この強さがね、今後の物語の中で、うっかり海ちゃんや弥生さんを傷つけてしまうようなことがなければよいのですが。
とにかく、すごく苦しいけれど、愛しかない。そんなシーンでしたね。

そして弥生さん。
もう弥生さんがエグりにエグられ刺されまくりの第3話、どうにかしてくれよ(号泣)
弥生だってきっと、海の気持ちを想像しないことはなかったでしょう。
頑張って元気にしている海が笑うなら一緒に笑ってあげたり、遊んであげたり、海が悲しむ隙のないように出来るだけ寄り添ってあげる、そんな弥生の在り方だって、愛なんですよ。愛なんだ。(2回目)

子どもが悲しまないように、周りの大人が守ってあげる。
それって別に悪いことじゃないし、愛なんですよ。愛なん(以下同文)。
でも、見方を変えればそれもひとつの大人のエゴになるのでしょうか。
水季が朱音に託した、「手引っ張ったり、横に張りついたりしないで、後ろから見守ってあげてほしい」の言葉。
一生懸命手を引いて、海ちゃんが笑えるように、進めるように、悲しまないようにと手を差し伸べていた大人たちの中で、夏は海をじっと見つめていた。
選ぶことにこだわる水季と、選べない夏が、少し繋がるようなシーンでもあったのかもしれません。

泣き出しそうな表情に変わる海をみて、夏を制しようとした弥生。
それでも続ける夏の言葉に、海をフォローするような言葉を挟む弥生ですが、海ちゃん、弥生の事を一瞬も見ずに、ずっと、じっと、夏だけを見つめているんですよね。
そして、隣でハンカチを差し出す弥生にではなく、少し離れた場所に立つ夏にまっすぐ駆け寄って、抱き着いた。
「外野」「疎外感」
またこの文字が浮かんでしまうシーンでした。

大切な人を失った時、悲しみを背負った時、涙が流れないようにこらえることも、流れてしまった涙を拭うことも、必要で大切なことだけれど、拭いもせずただ涙を流すこと、悲しいと叫ぶこと、寂しいと認めることも、必要で大切なこと。
突然変わってしまった環境で、突然いなくなってしまった人と、"いない"ということと向き合う時間をずっと持てなかった夏と海。
ここでその時間を持てたことで、この二人は、また一歩踏み出していけそうです。弥生を置いて(涙)

二人家族、二人のパパ

お迎えの時間になりアパートに戻って来た朱音。
夏と二人で食べてと、弥生にケーキを渡します。
何事もなかったように接する弥生と、お詫びの気持ちもあってケーキを渡したであろう朱音。
この二人も、今後、関係が深まっていくでしょう。

部屋の奥には、楽しそうに会話をする夏と海の姿。
柱の「すくすくの線」の話になり、海が言っていた「すくすく」はこのことかとやっとわかり、笑った夏。
夏のナチュラルスマイル、やっと見れました(感涙)

二人家族だからママと海の身長を記録していたと話す海は、「夏くんは何人家族?」と聞きます。
「4人家族」と答えた夏は、玄関にいる朱音と弥生の方をちらりと見て、話しを続けました。

-月岡夏「父親と弟は、俺と血が繋がってなくて。父親が前に結婚してた人が弟のお母さんで、母親が前に結婚してた人が俺のお父さん。だから、他人なんだけど、でも今は、本当のお父さんと本当の弟。…わかる?」
-南雲海「二人いるんでしょ?本当のパパ。」
-月岡夏「うん。二人いる。」
-南雲海「うん。わかった。」

「海のはじまり」第3話 より

ここまず、「二人家族」という言葉がやっぱり生方脚本!と思いました。
お母さんと娘、父親がいない、そんな家族の事をきっと多くの人は、「母子家庭」と呼ぶけれど、当たり前に「二人家族」なんですよね。
そして、以前水季から、「パパがいない子はいないよ。パパって絶対いるの。パパがいないと、ママもママになれないから。パパが二人いる人もいるの。いていいの。」と聞かされていた海だからこそ、「本当のパパが二人いる」ということをシンプルに受け入れて、理解しました。

「いちばんたいせつな人はひとりじゃなくていい」。
「いちばんすきな花」のテーマですよこれは。

産みの親と、育ての親、どっちもいていいし、本当の親。
血の繋がらない親と、繋がっている親、どっちもいていいし、本当の親。
水季が伝えてきたことがちゃんと海に届いている。
だから海は、パパが目の前にいなくてもちゃんといるということを知っていたし、パパが二人いていいことも知っていたし、ママが二人になってもきっと受け入れる。
水季、海ちゃんはそんな子に育っているよ。水季が育てたんだよ。
空に向かって水季に伝えてあげたい気持ちで泣きました。

第2話で「パパが二人いる人もいる、いていい」と水季が言ったシーン。
弥生がママとして現れることへのつながりと受け取っていましたが、そうですよね、自分が死んだ後、もし夏がパパになって、そしていつか新しいママが現れたとしても、ママが二人いてもいいんだよ、そんなことを海に伝えたかったのかもしれませんね。
水季はどこまでも親だったんだなあ。
ねえ水季。どんな思いで、自分の命と向き合って、海の未来を願ったの?
今ここに水季がいないということが、圧倒的に悲しいです。

そして夏くん。
ちらっと朱音さんと弥生さんの方を見てから自分の家族について話した姿、これ、夏くん策士でしたよね。
以前夏に「家族仲は良いのか」と聞いたり、「血のつながりが絶対なんて思わないけど」と言った朱音さんは、いかに自分が夏のことを知らなかったかを突きつけられて少し自戒したでしょう。
また、水季の居場所を弥生に上書きされるような感情を抱いてしまった朱音さんにとって、弥生がもし母親になるからと言って、水季がいなくなるわけではないという救いになった面もあったと思います。
そして、「外野」「部外者」「産んだことがない」と言った言葉で刺されまくってもはや瀕死状態だった弥生さんを、少し救ったと思います。
だからって、自分が今すぐ父親やりますとか、弥生さんはお母さんやれますって話しではなく。
自分の家族について海に話す傍らで、朱音と弥生に届くメッセージ。
何も考えていないようでやっぱりちゃんと考えている夏くんでしたね。

ママのこと考える時間

学校にて、いつもと違い元気がない様子の海を気にかける夏美先生。
海は鳩サブレーの絵を色鉛筆で描いていました。
「今、ママのこと考える時間。元気ないけど、大丈夫。」と言った海を、優しく見守った夏美先生。
夏美先生、そばにいてくれてありがとうございます。

ママのことを想って描くのが鳩サブレーというところにまたぐっと来ました。
夏と話して、夏の前で泣けたことによって、いなくなったママと向き合うことが出来た海ちゃん。
幼いなりにこうやって一歩一歩、進んでいくんですね。

人がいなくなるって、いなくなるんだけれど、残るということかもしれませんね。
ママが好きだった鳩サブレー、ママと行った図書館、ママが好きだったもの、ママがくれた言葉、水季が残した落書き、水季が綴った母子手帳、すくすくの線。
水季が残していったひとつひとつが、じわっと心に沁みて、心にちゃんと残っていく。
いなくなった悲しみと向き合うことも、残った存在を感じていくことも、その時々によって悲しかったり寂しかったり嬉しかったり幸せになったりと色を変えるけれど、失うということと、残っているものを感じるということは、つながっていますね。

残されたものから目を背けなくていい。
前だけを見て笑っていなくていい。進めなくても立ち止まっても大丈夫。
そんなメッセージを感じます。

今日は1人で

仕事が早く終わりそうな日、今から会いに行ってもいいかと朱音に電話をかけた夏。
出来るだけ会おうと思っている、水季と海ちゃんがよく行ったところに行きたいなど、一歩気持ちを進めたような夏ですが、朱音に「気持ち固まったってこと?海の父親やるって。」と聞かれると、少し沈黙しました。
夏の変化を感じ取っている朱音さん。
一歩ずつ、ゆっくり、進んでいきましょうよ。(誰目線)

同じ日、「これから海ちゃんに会ってくる」と夏からのLINEを受け取った弥生。
自分も一緒に行くつもりで「早く帰れるように頑張る」と打とうとした弥生ですが、夏から続けて送られてきた「今日は1人で行ってくるね」の文字に、打ちかけた文字を削除して、「いってらっしゃい!」と送りました。
その後少し考えて、「話したいことあるから時間できたら教えて!」と送った弥生さん。
「今日は1人で」という夏の言葉で、またひとつ線を引かれた感じになってしまった弥生さん。
ちょっと不安が募りましたかね。
いつも夏に対しては明るい感じで話しをする弥生さん。
ここで言った話したいこととは、過去のことでしょうか。
次回で描かれそうですね。

今度会うとき

夏が海と二人で話したい事。
それを伝えに行くために、一人で会いに行った夏くん。
海辺で海を待つ夏の手には、カメラが握られていました。

夏を見つけた海は、夏くんと呼びながらまっすぐに夏のもとへ。
抱き着いてきた海を抱え上げた夏は、ぎこちないながらも、今までよりも一歩海との関係を進めた雰囲気。

海にカメラを渡してあげた夏。
このカメラ、海が初めて夏の家に来た時に海が勝手にいじってしまったあのカメラです。
あの時は、触らないでとカメラを取り上げた夏ですが、その時に海がカメラに関心を示したことを思い出したのか、今日はそのカメラを持ってきて、撮っていいよと海に渡しました。
半押しがどうとかいう、また子どもにはわかりにくいことを伝えてしまう夏。
思いっきり全押しした海に、またナチュラルスマイルを見せます。
もう。なんだよ。(涙)
ほんの数日でこんな風に自然に笑ったり欲しいもの渡したりしてあげられちゃう関係になったんだね。目線とか声とかなんかもうお父さんだし(感涙)
父性なのか、それはきっとまだわからないけれど、確実に夏くんの中に海に対する想いが芽生えていますね。

このカメラ、以前水季の過去の写真をスマホでスクロールして削除しようとしていた夏のシーンがありましたが、それと対照的に、フィルムカメラだから今すぐには写真が見れないんですよね。
海が写真を見たいと言ったけれど、今は見れないから「今度会うとき」と約束をする。
アナログならではの手間が、二人の「今度」に繋がっていく。美しいです。

次に海に会う前に、夏くんは写真を現像すると思われますが、このカメラ、もう私ずっと言ってるんですけど、ずっと夏の部屋にあって、多分何かしらのキーワードになりそうなアイテム。
現像した時に、昔水季と撮った写真とか、水季が撮った写真とか、一緒に出てきたりするかな。
撮った瞬間に見られない写真、その時差が、夏と水季、夏と海を繋ぐものになっていきそうですね。

一緒にはいれるし、いたい

「パパいつ始まるのって聞いてくれたけど、始めてほしいってこと?パパになってほしいってこと?」とド直球で海に聞いた夏。
もう。夏くんらしすぎますよね本当に。そんなド正面から聞きますかね(笑)
でもそうですよね。どんなに想像したって、人が何を考えているのかなんて、100%理解出来ないし、理解した気になってはいけないから、本人に聞く。
やっぱり夏くんの基本スタンスってそうなんでしょうね。
相手が子どもだからとか自分が大人だからとか、男だから女だから、血がどうこうではなくて、目の前の事実やその人にちゃんと向き合おうとする。
親になるってなんなのか、まだわからない夏だけど、そういう向き合い方こそが親なのかもしれません。
言葉には定義できない二人の関係、でも、定義した言葉にハマろうと築く関係性ではなく、自分の意思で繋がろうとする関係性の方が、ずっと能動的だし、深く強い。

海ちゃんは、「パパやらなくてもいいけど、パパとママ一人ずつしかいないから、いなくならないで」と、それだけを夏に頼みます。
「パパをやる」ってなんなのか、それは海ちゃんにもわからないけれど、夏くんはパパだということと、夏くんがいなくなったら一人家族になってしまうことは、わかってる。
そんな海を前に、「水季の代わりにはなれないけれど一緒にはいれる。そうしたい。」と、この子のそばにいようということを決めた夏でした。

このシーン。
今まで登場したティザーや本編での海のシーンは、いつもどこかどんよりと曇っていたり、時間帯もわからないような白っぽい色みで。
それがこのシーンでは、海も空も、青かったです。
少しだけ解像度が上がったような夏の気持ちと、海と夏の関係性のこれからが明るくなっていくことを示しているようで、美しい映像でした。

ここいて。ここね。そこにいてね。

物語のラスト、海の姿を写真で撮ってあげようと、海に「ここにいて」と少し離れようとする夏ですが、夏のすぐ後ろにくっついて一緒に歩いてしまう海。
「なんでよ。ここいて。ここね。」
笑ってもう一度歩き出す夏と、またついていってしまう海。
「ねえ。ここいて。ここ。」
そう言って夏が砂浜に足で線を引くと、その線の上にきちんと立ってやっと止まった海。
その海と少し距離を取って夏、「そこいてね」と夏が言うと、海が「うん」と嬉しそうに笑いました。

もう。もう。なんてことでしょうかあああああ(号泣)
いてね!!いるよ!!!!!(号泣)

前回第2話の感想で、1話の水季の「いるよ。いるから大丈夫。」、2話の海の「いてね。そこにいてね。」を、いつか夏が回収するのでは、と勘繰った私だったのですが、まさかこんな第3話で、しかも夏くんが海ちゃんにいてねって言うなんて!!!
もう。もう。やっぱりド素人の私なんかの想像をはるかに超える回収。
そしてこんな第3話にしてのスピード回収。拍手ですよ。
このシーンをリアタイしていた時、もう天を仰ぎましたよ。
「いるよ!!!」と叫びましたよ。
誰の何目線の「いるよ」なのかもわからないほど興奮しました。

「海のはじまり」第2話 感想より


「線」の回収

そして「線」ですよ、線。今回のキーワード。

生や未来の象徴としての、水季が海の成長を記録した「すくすく線」。
「外野」という言葉が示す、弥生の前にある越えられない線。
そこに確かにいるという存在を示す、夏が砂浜に引いた線。

線で始まって、線で隔てて、線で繋がった第3話。
水季から夏へ、母子手帳や線でバトンが渡っていくような、そんな第3話でした。

「silent」のイヤフォンばりの線使い。
線ひとつでここまで物語を描けるものなんですね。
線ですよ?ただの線なのに。脱帽。

半押し

そして海にカメラを向けた夏。
っていうかこの「ここにいて。ここね。そこにいてね。」のくだりから溢れる夏くんのとびきりの笑顔。
もう!!!!!!!!!(黙れ)

いつか夏くんの笑顔をまた見ることが出来る日が来るだろうかと、第1話のあの絶望的なエンディングで心から願った私達でしたが、まさかこんなに早く最高の笑顔を見せてもらえるとは。ありがとう笑顔。
それにしても夏×海×空×波×目黒蓮×笑顔、絵が強すぎる。
なんかもうそれだけで物語性があるというか。素敵すぎます。
午後の紅茶のCMも素敵ですよね。

そして最後、海に向けたカメラのファインダーを覗いた夏くんですが、直前まで笑っていたのに、一瞬笑顔が消えて、少しだけ時間をおいて、シャッターを切りました。
ここの間が気になったのですが、これ多分きっと、半押しして海ちゃんにピントを合わせた瞬間、霧に覆われていたような自分の気持ちの解像度も上がりひとつピントを合わせらせた夏くんの心情変化、そして決意を込めてシャッターを切った、そういう描写だったのではないかと解釈しました。

海ちゃんが半押し出来なかったのは、子どもだからそういうのわからないよね、ということもありつつ、多分もう夏に対して、「いてね」「いてほしい」そういう迷いのないまっすぐな気持ちの現れとして一気にシャッターを全力で切ったのでは。
そして夏くんは、ファインダー越しにぼやけて映る海ちゃんの姿にピントを合わせて、自分の気持ちにもピントを合わせて、シャッターを切ると同時に、決意したのではないでしょうか。
くう。
さっきまで「半押し」なんて言ったって子どもにはわからないよ~もう夏くん~なんて思っていた自分、完敗です。
やっぱりすべてに意味があって、余計なものなんてひとつもない。
なんてことだ。もう本当になんてことですか。凄すぎる。
こういうシャッターをどうこうとかってまで脚本に書いてあるんですかね?演出?
半押ししたかどうかは実際のところはわかりませんが、私はそうだと受け止めたいと思います。

第3話、とっても苦しいし、弥生さんエグられすぎだったし、苦しかったけれど、まさか最後にこんな素敵なシーンで終わるとは。
夏くんがシャッターを切ったところで、笑顔で、第3話は終わりましたね。

第4話に向けた次回予告。
水季が朱音とぶつかるシーンがありましたね。
水季とお父さんが仲良さそうな様子もあって救いになりそう。
南雲家の過去が少し明かされそうですね。

そして弥生さん。
弥生が夏に過去を打ち明けそうなシーンがありました。
弥生がお風呂でシャワーで声を隠しながら泣いていたシーンは、あれは過去の回想じゃないかなと勝手に考えています。ユニットバスだし。(そこ?)
夏が弥生に「決めさせようとしないで」と強めな口調で言うシーンもありました。
弥生と夏の関係性にも少し変化がありそうでしょうか。
絶対第4話も苦しいってわかっているけれど、早く観たいです。



ちょっとどうしましょう。3万字くらい書いてるんですけど…。
書いてたら1日終わりました(笑)
万が一ここまで最後まで読んでくださった方がいらっしゃったら、きっと同じ熱量で「海のはじまり」を愛する方ですね。
いつもありがとうございます。
来週もよろしくお願いします(笑)

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