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【海のはじまり】こんなお芝居を3ヶ月も堪能出来ることが約束されている世界

フジテレビ7月期月9ドラマ「海のはじまり」。
観ましたか?観ましたよね。観ましたよ。
昨日から興奮しすぎて色々書いていますが、今回は、各キャラクターとお芝居について。
「レベチ」って、もう死語かもしれませんが、ちょっと俳優さんたちのお芝居のレベチ感に息をのんでしまった第1話でした。
こんなお芝居を、私たちは3ヶ月もの間、堪能させていただけるのですか?無料で?
なんかもう、ため息です。ありがたい。既に忘れられない夏確定です。


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「海のはじまり」登場人物

●月岡夏:新しいタイプの主人公

この物語の主人公、目黒蓮さん演じる月岡夏。
第1話で描かれた彼のキャラクターは、どこか曖昧でいつもハッキリしない、結構ナヨっとした感じの男の子でした。

「うん」とも「ううん」ともつかない曖昧な返事。
自分で選んだり決めることをせずに、他人に身を委ねるスタンス。
自信がなさそうにぼそぼそと話す姿。
言葉を選ぼうとして、迷って、飲み込んでしまう感じ。
第1話感想にも書きましたが、こんな性格にはきっと生い立ちや家庭環境が影響しているのかなと思います。
夏くん自身、自分のこういうところはコンプレックスに感じているようで。
そのコンプレックスを包み込んでくれる水季や弥生のような人に惹かれるのには、説得力がありますが、どこかで「俺はこういう性格だから」というところに甘えているというか、だからといってそんな自分を変えようとも思いませんという一種の傲慢さのようなものもあって、居やすい場所に静かに居られる平穏な日々を好むような、そんな性格のキャラクターのような印象です。

第1話で描かれた、水季や弥生、海との関係性について、夏はいつも、自分よりも先にまず相手の気持ちを慮って、出来る限り寄り添おうとする様子が見られました。
「何も知らなかったから。辛いなんて思っていいほど、何も知らない。何も出来ない。」という台詞にも表れていたように、誰かの感情や状況を勝手に想像して決めつけてわかったつもりになるようなことはしたくない。
物事をちゃんと見ようとする誠実さはあるけれど、特に学生時代の夏くんは、自分のキャパがそれに追いつかないというか。
結局もう一歩、踏み込んだり向き合ったりすることが出来なくて、相手を尊重するフリをして逃げてしまう弱さがある。
そんな優しさゆえの夏くんの性格は、時に優しく誰かを包み込むような毛布にもなって、穏やかな凪いだ海のような良さもあるのだと思います。
たとえば弥生、しっかりしたお姉さんではありつつ、夏と一緒にいる時はゆるっとした感じがあって、夏くんに癒されているんだろうなと思いました。
そんな風に、誰かにあたたかさを与える夏くんですが、その優しさは、時に誰かを尊重するという言葉にすり替えられた逃げにもなって、一歩引いてしまうその弱さが、ひとつひとつボタンを掛け違えたり、流れを変えてしまったりするんですよね。

基本的に感情を押し殺しているからか、ばーっと溢れると勢いに任せて言ってしまって後で後悔するような幼さもあって。
言葉が悪いけれどちょっとポンコツな感じの主人公・夏
水季の妊娠や、水季との別れもそうですし、今後訪れるであろう弥生や海との関係における決断においても、夏がする選択、もしくは出来ない選択って、きっとつっこみどころ満載で、賛否両論になる気がします。
そんな主人公像って、結構新しくないですか?
こういう役を演じるというのは、目黒さんにとっても結構挑戦なのかなと思います。

また、第1話は、圧倒的に当事者でしかないのに、圧倒的な部外者の扱いになってしまっていて、ひとりだけ取り残されて、真っ暗な海にぽんと放り込まれてしまったような夏くんの孤独感、夏くんを突き放すようなシリアスさのある構成でした。
こういう展開も、あんまりなかったかもしれません。

目黒蓮主演・silentチームで織りなす月9。
このワードのもとで紡ぐ物語として、すごい覚悟と挑戦心を持ってつくられている作品のような気がして、その思いに、こちらも背筋を伸ばして観なければという気持ちになります。


●カメラロールにはそんなに意味もない気がする

夏くんがさかのぼったスマホのカメラロールには、海や空の写真が多いように見えました。
その中に、8年も前に別れた元恋人の水季の写真や動画が消されずに残っていた。
この点について、色々な意見があるようですが、私はこれってもしかしたらそんなに意味はないかもと思ってしまいました。

夏には今現在、弥生という恋人がいて、水季と別れた時には中絶のことや電話のみで別れたことなどモヤモヤは残りつつも、一応その時は、「他に好きな人が出来た」という理由でフラれていて。
それなりの時間が経って、未だに水季のことが好きで未練タラタラ、というわけではなさそうに思うんですよね。

モヤっとした終わり方をしたから、「結局なんだったのかな」とか「今何してるのかな」程度に思い出すことがあったとしても、もう好きとかっていう感情には、一度終止符を無理やりにでも打ったから。

それに、今のこの世代って、スマホネイティブで、結構夏くんはちょこちょこ写真を撮るタイプでもあったようなので、なんというか、あんまり1枚1枚の写真に思い入れはないような気がします

私自身、結構昔の写真とかって遡ればいくらでも保存されていて。
スマホ自体にはなくても、クラウドに保存したりしていて、なんか別に、あえて振り返って見直すこともないけれど、あえて削除するのも手間なのでそのまんま特に意味もなく残っているというか。

葬儀に行った後にカメラロールの水季の写真を削除しようとしていた描写も、自分に娘がいることを知り、でも朱音に会ったりして自分は今さら父親として関わりをもつべきではないと思ったから遡って削除しようとしていただけで、写真を見返したのも、訃報に接してから、かなり久々だったのではないでしょうか。
実際別れてから水季の写真を見返したり、想いを馳せることって、きっと時が経つほどに無くなっていって、亡くなってもう会えなくなってしまったというきっかけがあったから振り返って見てみた、という、希薄さの象徴のような。

ティザー映像で、夏くんと海ちゃんがカメラを持っていたので、何かカメラとか写真というのは気になるキーワードではありますが、元カノの写真を~というところの引っ掛かりは、いったんスルーで物語を見守りたいと思います。


●目黒蓮さんはどこまで上手くなるの?

第1話でとにかく衝撃を受けた事。
目黒蓮さんって、なんでこんなにお芝居上手いんですか?
もともと消えた初恋とか昔からお芝居は上手だったけれど、なんかこの「海のはじまり」にあたって、また一段壁を超えていませんか?どうして?
未発表の別作品に出ていたりするのですか?特殊訓練を受けたの?
ちょっと、今回第1話の目黒さんのお芝居には、びっくりしました。

まず全体的に、スーツやら喪服やらを着ることで圧倒的なスタイルの良さを見せつけられるわけなんですけれども、すごい異次元スタイルなのに、そこらへんにいるちょっとぱっとしない人に化けられるのは、なぜですか?
なんか目黒さんて、お芝居をするといつも、"普通っぽさ"を醸し出せるんですよね。
違和感なく溶け込めるのって、すごい才能だと思います。

また、弥生との食卓のシーンで結構既に驚いたのですが、あの、ごはんを食べながら目線はお皿に向けたまんまで喋る感じ、あのナチュラルさ、やばくないですか?
終始声量もナチュラルだし、このお芝居の引き出しはどこで習得されたのですか?
ちょっと驚いてしまいました。

そしてなんといっても、涙のシーン。
いくつもありましたが、目黒蓮の涙って200色あんねん、的な。
いつの間に涙まで操れるようになったのですか?

心で丁寧にお芝居をされている印象なので、泣こうとか泣かせてやるぞという圧がないのに、しっかりとスーパーベストなタイミングで涙が流れるのって、すごいです。

特に印象的だったのは、水季と電話で別れるシーン。
ワンカットで、戸惑いから怒り、苛立ち、呆然、後悔、いろいろな感情を滲ませる表現が見事でした。
あの電話のシーンでのあの泣き方、ぐっと込み上げて、なんとか整えようとするのだけど溢れてしまって、ちょっと顔を手で押さえるところ。
ここ、泣けるシーンだったと思うんですけど、ちょっとリアタイしていた時はお芝居のすばらしさに呆気に取られてしまいました。
結構ここ最近のドラマの中でもあのシーンは至高だったんじゃないかと思います。

もうひとつどうしても言いたいのですが、目黒さんって、お芝居される時の息遣いでの表現が凄いと思います。
ちょっと息遣いっていうと気持ち悪めな表現になってしまうのですが、例えば、葬儀場で海ちゃんに話しかけようと立ち上がった時の意を決するように息を吐く音、同意書にサインをするシーンで何も言えなくなってしまい言葉を飲み込む時に漏れる息の音、水季と電話で別れ話をしながら、言葉を選んで感情を押し殺す時の荒くなる呼吸、必死な息遣い、などなど。

もともと、表情筋をぴくっとさせたり、喉を動かしたりする繊細な感情表現はされる方でしたが、なんか今回さらに磨きがかかっているような。
ちょっと驚きました。
すごく丁寧に向き合ってお芝居をされているのでしょうね。
共演者の方たちからの刺激も受けて、もっとよくなっていくのかと思うと、良い意味で怖いです。
いやあ、俳優・目黒蓮、恐るべし。


●有村架純さんの包容力

百瀬弥生を演じる有村架純さん。
有村さんも結構色々な役柄を演じられてきていますが、今回はチャキチャキしっかり真面目なお姉さんでありつつも、どこかほんわかしていて可愛らしくて、その塩梅が、同じ女性から見てもめちゃめちゃ可愛かったです。
包容力に溢れているのは、有村さん自身から醸し出されるあの癒しの雰囲気が納得させるというか。
そして、夏くんの前にいる弥生さんは、なんだかどこか気が抜けてぽやっとしているようなところがあって。
日中は職場で仕事を頑張る一方で、夏くんと過ごすひとときは、弥生にとっては癒しや救いになっているような気がします。
そんな夏との未来を描いていた矢先に訪れた衝撃的な出来事。
第2話の予告にあった弥生さんの涙がもう、気になって仕方ありませんが、これから弥生の心もぐらぐらに揺れていくでしょう。
水季はもういない、だけど水季に対して思うことがないわけはないでしょうし。
死なれたら何も言えなくなってしまう、みたいな、絶対に口に出せない黒い感情のようなものが湧きだす瞬間もあるであろう、とても難しい役柄だと思いますし、なんというか、社会的な正しさと自分の感情とのせめぎ合いみたいなものにも苦しめられる役どころになる気もしますが、信頼できる有村さんのお芝居、楽しみです。


●夏と弥生

夏と弥生。
「月岡くん」「弥生さん」と呼び合う距離感も微笑ましくて。
しっかり者の年上お姉さんと、ちょっとぽんこつな年下男子。
この組み合わせが絶妙で、説得力がありすぎて、素晴らしいです。

夏休みの予定を立てるのも弥生主導でしたし、ちらっと映った二人のLINEのトーク画面には、食べたいものを聞いた弥生に夏が「うん、任せる」と返事をしていたところが映りました。
こんな風にいつも、何事も大体弥生が決めて、夏くんは「うーん」と言いながらニコニコしているような感じなのでしょう。可愛らしい二人です。

こうやってバランスが取れていた二人だったけれど、今回の出来事をきっかけに、いやというほどに二人の今やこれからについて考えなければならなくなってくる。
何事も無ければ、目をつぶって流していたようなところにも、きっと向き合わなければならなくなる。
いつか、この夏の性格に対する弥生の不満が爆発するようなシーンも出てきそうですよね。
相手の欠点さえも愛おしく思えるから一緒にいるけれど、いざという時にそれが際立ってしまうというか、好きと嫌いって紙一重っていうか。
この二人のお芝居合戦も、目が離せません。

●目が離せない古川琴音さん

水季役の古川琴音さん。
水季のどこかぶっ飛んでいて、自由で、奔放で、傲慢で、突っ走るようなところを、これだけ"いそうな感じ"で演じられるのは、さすがです。
古川さんが放つ独特なオーラに、ひとときも目を離せないような惹きつけ力と儚さがあって。
夏くんがパシャパシャと水季の写真を残したくなる気持ちが分かります。

同意書のシーンでのお芝居は、本当に素晴らしかったです。
「びっくりだよね」のところでの涙をこらえながら笑うところだったり、強さの奥の方にある弱さが揺れているような表情、だけど決めたからと突き進んでいく意思、すっごく夏くんのことが好きという無邪気さ。
水季は見方によっては嫌われるというか、扱いにくいというか、そんなキャラクターですが、この水季が愛される要素を持つことって、この物語にとっては重要で。
水季を演じられるのは古川さんしかいない、とキャスティングを語られていた村瀬さん、さすがでしかないです。


●夏と水季

海辺のスピッツ、エモすぎましたね…。

夏と水季、一緒に過ごした時間は決して長くはなかったけれど、夏にとってはきっと水季って、自分が今まで見てきた世界に新しい色を塗ってくれたような存在だったのではないでしょうか。
性格は真逆で、水季の奔放さに振り回されるのもどこか心地良くて。
自分が欠点だと思うコンプレックスを肯定してくれた水季の存在は、夏にとってはとても特別だったのではないでしょうか。
あんな風に自由に笑う夏くん、また見ることが出来るのでしょうか。

水季も、自分に合わせてくれる夏くんが心地よかったり、夏くんに癒されていた部分があったのではないかと思います。
そこに自分も甘えていた部分があったから、いざという時、彼に決断を委ねることが出来なかったのかもしれません。

この二人は、真逆で、でもだからこそ惹かれ合って、好きだった。
今はもう会えないという、圧倒的な線が引かれてしまった水季と夏の関係。
唯一のつながりは、海の存在と過去の記憶のみ。
夏が水季を想い直しながら掴んでいくものが何なのか、見守りたいです。

●海ちゃん、津野くん、朱音さん

ちょっとひとまとめにしてしまうのも憚られるくらい、周りを固める俳優陣の演技力が至高すぎますよね。

海ちゃん役の星奈ちゃん。
彼女は何も言わずにじっと人を見つめるようなシーンの表情が本当に上手。
子どもらしい無邪気さもありつつ、どこかはっとするような感情の深さを醸し出すような表情をされて。
これからどんな女優さんになっていくのかなと、勝手に星奈ちゃんの未来にまで想いを馳せてしまいます。

そして、津野くん役の池松壮亮さん。
第1話では台詞はそう多くはありませんでしたが、全シーンで想像を超えるお芝居を見せてくださいましたよね。
海ちゃんの「またママ会える?」に、「火葬の前にまた顔見れる」と伝える時。
夏に対して、「本当に何も知らないんですね」と言った時の、軽蔑したような呆れたような表情。
海ちゃんに「月岡さんって夏くん?」と無邪気に言われた時の、「うん、そう」の4文字に込めた感情。
3ヶ月間に渡って池松さんのお芝居を確実に観ることが出来ると思うと、贅沢です。
目黒さんとの相性も良さそうで、お二人のシーンが楽しみです。

そして最後に、朱音さん役の大竹しのぶさん。
語るのなんておこがましいほどの大女優さんですが、あの、低い声で感情を押し殺して目が死んで真っ黒になるような、あの大竹しのぶさんのお芝居が観られたこと、本当に震えました。
娘が決めたことだからと頭で理解しながらも、夏に対して湧き上がってしまう感情。
海の未来を考えて育てていかなければいけないという覚悟と、自分が一生を見届けられるわけではないという思い。
はあ。本当に、こんなものを地上波で観ていいんですかという、贅沢な作品です。

はあ。もう。ずっとため息をついています。
こんな作品を月曜夜に放たれてしまうと、もう1週間何も手につかなくなってしまいそうです。
タイトルにも書きましたが、こんなお芝居を3ヶ月間も観られるんですよ?
きっとどんどん立体的になっていくであろう登場人物たち、すべての人の心の動きをまっすぐに感じ取りながら、見守っていきたいです。

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