見出し画像

【140字小説 Ⅹ 6】『秘密の日常』

《1.真実》

【百万円でパラレルワールドへ】
暇と金を持て余す俺は、ネットで見た怪しいツアーに飛びついた。

出発の日。
指定された部屋の中、白髪の男が札を数え、誓約書を差し出す。
「御期待下さい。こちらにお名前と本日の日付を」
俺は半信半疑のまま名前を記入した。
後は日付か..

栄始3年、2月31日..と..


《2.いつでも元気!》

ボク、学校で走ってきた相手とぶつかって、お互いが入れ変わっちゃったんだ!
スゴくあせった!

だけど..
なんか大丈夫な気もして..

試しに友達や先生と話してみた。
みんないつも通りだ..
相手が双子の弟で助かったぁ!
コレ楽しい!

でも..
家でお母さんにバレちゃった。
もう一回ぶつかって元通り!



《3.救世主》

暗闇に一筋の光。
暴力に満ちた世界に救世主が現れた。
そして迫害の歴史に終止符を打つべく、隠れて生きる同胞達へテレパシーでメッセージを送った。

『奴らは我々を恐れている。逃げずに攻撃を仕掛けるのだ』

救世主に勇気を与えられた仲間達は戦う為、街に飛び出した!

「ギャー!ゴキの大群!」



《4.図書館にて》

図書館で久しぶりに昔の知り合いに会った。
私に手を振っている。

私は場所を考慮して声を出さずに【久しぶり!】と手を振った。
彼女も声を出さずに【バイバイ!】と笑顔で、その場を立ち去った。
図書館ならではの無言の交流が少し可笑しかった。

翌日、その彼女が二日前に亡くなったと知らされた..


《5.この世の仕組み》

妻に若い愛人がいた..
俺は見せかけの事故で葬られ、妻は多額の保険金を手にした。

【楽勝ね】
【ワルだよなぁ..そこが好きなんだけどさ】
【フフッ、貴方とお腹の子と三人で人生を楽しむわ】
【赤ちゃんに聞こえちゃうよ。おーい!ママは悪女だぞ】

全部、聞こえてんだよ!

【痛っ!今、蹴ったわ】



《6.再会》

「お父さんに会ったよ」
私がそう言うと、母は、え?と驚いた顔をして聞き返した。
「何か言ってた?」
私はありのままを話した。
「怖い顔で『帰れ』って」
母は途端に笑い出した。
「アハハハ!お父さんが怒るなんてよっぽどよ!」

病室に私と母。
事故に遭った私は父に追い返され、帰ってきた..

【終】


サポートされたいなぁ..