見出し画像

福祉業界の必要資格について

先回の記事では福祉の連携についてまとめました。

競合する他社はあるものの、下地として「多職種・他機関との連携」や「地域の社会資源の質の向上」が福祉業界には根ざしていると考えます。
なので、自社・自身だけで質の向上を目指すのではなく、業界全体としてやっていこうという風土がありますよ、というお話でした。

さて、今回は資格についてのお話です。

福祉業界には代表的な3つの資格があります。
社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士の3つですね。

これらの資格はいわゆる「名称独占」という種類のものです。
「業務独占」と異なり、「この資格を持っていないとできない仕事」というものはありません。持っていると、その肩書きを名乗ることができる資格です。

福祉業界で働く上で、これらの資格は必要なのでしょうか。
個人的には不要ではないかと思う点と、持っていると活用できると思う点があります。
伝えたいのは「絶対必要」というわけではない点。

今回はこれらの3つの資格について思うことをまとめてみます。
持論を多分に含みますのであしからず。

資格取得について

資格取得についての細かい要件は各資格試験を所管するこちらのページを参照されるとよいと思います。
ざっくり言うと、①学校で所定の単位を取得し、②実習をおこなうか、現場で数年の経験を経て受験資格を得るかという方法があります。学校は四年制の他、養成校という短期の訓練施設や通信制がありますね。
そして年1回の国家試験に合格し、申請をおこなうことで資格を取得することができます。

養成校などを使う際、社会人の方(雇用保険加入者)は、ハローワークで教育訓練給付制度に該当するかを確認されるとよいかと。一定の手当をもらいながら学ぶことができます。

また福祉業界で働きながら取得する場合には、会社で一定の範囲で資格取得に際しての補助金が出ることもあるので確認を。
うちの法人は確か、資格者証の申請の際のお金が出たような。要チェックですね。

これらの資格は分野に関連する法制度の他に、社会福祉士、精神保健福祉士であれば相談技術を、介護福祉士であれば介護技術を学ぶことになります。
ご自身が取得する意図を整理し、適切な資格を選ばれますよう。

取得をお勧めするかどうか

うーん、どうでしょう。
一言ではなかなか言いにくいですが、「取得の意図が明確であれば取得していいかも」と考えます。

というのも、これらの資格は名称独占。例えば、取得しないと相談員になれない、というものではないのです。
ただし、「社会福祉士や精神保健福祉士は一定の知識や倫理観を学んでいる」とみられるので、相談員の配属を決める時に取得者と未取得者が候補に挙がったとすると、取得者の方を配属しようと法人が考える傾向にはあると思います。
なので、「いずれ相談員になりたい」と思っている方にとっては、社会福祉士などの取得はプラス要素になると思われます。
注意すべきなのは、相談事業所への配属で一番法人が注目するのは「相談支援専門員」の資格の有無です。これは一定の実務経験と相談支援従事者初任者研修の受講が要件になる資格なので、学卒すぐにもしくは業界未経験者が取得することはできないものになります。
この資格は大抵、法人からの指示で職員が取得しに行くものなので、「今から取ろう」は難しいでしょう。

また、その他の福祉サービスについては、「専門職を置くと事業所への報酬に加算がつく」というものがあるので、採用に対してもプラス要素として働くでしょう。
特に最近の傾向として、福祉サービスの量は一定の充足をみせ、次はひとつひとつの事業所の質の向上を、と様々なところで行政が話していますので、今後もそういった視点での加算なりが出てくるかもしれません。

相談員になりたくて介護福祉士を取りました、というのは意図がずれると思います。
このようなずれが生じないように、自分のキャリアプランや将来のイメージを確認し、資格と照合するとよいのではないでしょうか。

現場感覚として

3つの資格がすぐに現場に役立つかと言うと、やはり答えはノーです。
これらはあくまで「勉強をしてきた証明」であるので、スタートラインに立っているに過ぎません。
総論を学んだあとは、各論を学ぶことになります。事業所単位での考え方や支援の進め方、目の前の対象者とのやり取りは経験で身に着くことが多いです。
ただ、その経験の溜まり方には、資格取得の有無で大きく左右されると思います(センスも大概必要ですが)。

ゲーム的な感覚で言うと、戦士職の素質があって魔法を学ぶより、魔法職の素質がある方が魔法取得は早い、というような・・・。わかりにくいですね。やめましょう。

資格取得で学んだことと現場で実際に動いていることの差異が感じられることがあると思います。ですが、それは表面的なところを見ているからであることも少なくありません。
「福祉は自己決定と聞いていたけど、こんなん自己決定じゃないじゃん!」ということがあります。しかし、よくよく考えてみると、「自己決定」というものの深さを感じることがあるのではないでしょうか。
そのように、勉強と実践を行き来することが、有資格者であればより滑らかにできる可能性が高い、くらいに私は考えています。

現場で会う専門職の人より、パートのおばちゃんの方が本質突いてることなんて多々あるし。
とにかく、「取得したらオールオッケー」ではない資格だと思います。
「資格取ったから俺最強」と思うなかれ。「資格取ったけどなんもわからへん」状態から学んでいくのが私の実際でした。

まとめ

ご自身の状況によって、学生として取得するか、社会人として取得するかを選択するとよいでしょう。
私は四年制大学在学中に精神保健福祉士を知り、卒業後に養成校に入るというルートを辿りました(両親に感謝)。
今のところ一生ものの資格なので、取ってよかった、と思っているところです。

資格取得したからといって、福祉業界の特定の職に就くばかりではありません。
法人の方針や、職員配置、事業所ごとの報酬加算の対象になるかどうかで配属が決まることの方が多いです。
私の場合は、最も単価が安い(新卒・独身・子なし)ために委託費の低いナカポツに配属されたということを当時の上司から聞きました。そんなものです。
現在の法人では年数回の上司との面談があります。そういったところで自身のキャリアプランについて話せるとよいですね。「相談員になりたいんです」ということを伝え続けることが大事。
もしくは、相談支援専門員の実務経験は少なくとも頑張って、「相談支援専門員資格該当者」のような転職先を探すのもひとつか。探せばたまーにありますあります。

私の母校は資格取得率100%でした。同級生は全員資格を取得し、就職していったわけですが、「知識足りない」と感じた人もほぼ100%です。今思えば当たり前ですが、就職後に飲みに行った同級生全員がげんなりしておりました。
そこで同期と励まし合い、徐々に「現場観(勘?)」というやつを身に着けていくのです。

思うのは、資格取得より人生経験が重要だなという点。資格の勉強はできるけど、人生経験は多種多様ですべてを網羅することはできません。
その人ごとの経験が必ず生きるのが福祉業界だと思います。資格取得者が言える言葉なんて知れています。でも、「私」や「あなた」という個人にしか言えない言葉があって、それこそが相手に響くと信じています。

そういった点からも、資格は全てではないと考えています。ただし、取ることが無駄ではありません。その勉強もまた、必ず生きてくる。
なので勉強している方、しようとしている方、頑張ってください。応援しております。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?