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インスピレーションが欲しかったら散歩するのが一番良い。|フリーランスで生きていく #13

「作品づくりのインスピレーションはどこから受けますか?」
と、聞かれることが最近重なったので、はてと思い返してみる。

私の作品については、
「使うたびに心潤う 美しい日用品」
というコンセプトが軸になっております。

日常で使う道具としての要素と、
手にとるたびに心潤うアートとしての要素。
その二つを両立させたものづくりをしたい。

***

だからこそ、出発点は「使いやすさ」から考える。
食器棚の中から、ついつい手に取ってしまう使い勝手の良いサイズや重さ。
これを盛りつけるのに、こういう深さがあったらきっといいよな、これくらい平らな面があるといいよね、たくさん盛っても少なく盛っても綺麗に見えるかたちっていいね、と。
常にそこにはうつわを使う「誰か」の姿を想像している。

それと同時に考えるのが「美しさ」
料理が盛られていなくても、
飲み物が入っていなくても、
花が生けられていなくても。
洗い上がりのカゴの中や、食器棚に並んでいるだけでも、
はたまたインテリアとして飾られているだけでも。
いいな。可愛いな。カッコいいな。美しいな。
そんなふうに思ってもらえるととても嬉しい。

この部分に関しては、私はデザインやアートの理論のようなものをきちんと学んだわけではないので、とても言語化しにくいのだけれど。

自分の中の「美しいの基準」のようなものはあって。
これは良い、これは違う。
これは好き、これは美しくない。
という判断を、その基準に沿って行なっているんだと思います。

んーーすごく抽象的な話で申し訳ない。笑

けれど、例えば何百枚も作っている定番のプレートだって、一枚一枚手仕事で成形しているものはどうしても微妙な個体差は出てくるわけですよね。

径と高さが何センチ、という決め事はあったとしても、カーブの立ち上がり具合や、口元の厚みによって印象は変わってくる。
例えそれは私にしか分からないびみょーーーーうな差であったとしても、自分の中の基準で「良し」と思えるものでないと、それはとっても居心地が悪い。

アイラインの先をそのまま流すか跳ね上げるかとか。
眉マスカラの色をダークブラウンからウォームブラウンに変えたとか。
アイシャドウの重ね方をちょっと変えてみたとか。
いや今日久しぶりに会うからさ、ちょっと気合い入れてメイクしたんだけどどう?気づく?アレ、全然触れないね。そっかそっか気づかないよねまぁそうだよね、いいんだウン別にこんなの自己満足だからさっ!!!

ってときの感情に似ている。
(いやちょっと違う)

まあメイクに関してはそりゃ気づいてくれたら女心としては嬉しいよね、なんだけど。うつわに関しては(本題に戻ろう)そこは本当に気づいてもらいたいとかではなく自分の中での基準なので。
作品を一番に愛しているのは、紛れもなく私自身だということです。

***

この「自分の中の基準」というのは、
知識を学んだり、理論を身につけること(も、もちろん大事だけど)それ以上に、私自身がどういう人間になっていくかで変わるものだと思います。

これってものづくりを仕事にする人間にとっては、だからこその醍醐味でもあり、反面とっても怖い部分でもあるんだけど。

何を見るか、何を聞くか。
誰と一緒に過ごして、どんなお喋りをするか。
何に囲まれて過ごして、どんな家に住むのか。
何を大切にして、何を手放して、どういうふうに物事を見るのか。

早起きして散歩して、気持ちの良い季節の風を感じるとか、
夕暮れの空のドラマチックな移り変わりに時間の経過を忘れるとか、
旬の食材をシンプルにいただいたときに、その美味しさに感動したりとか。
そういう日常的なことから、

美術館を気ままに歩いて、そのときの感情に刺さるものと向き合ったりとか、
旅に出て、知らない土地なのに懐かしさや居心地の良さを感じるなーとか、
生音の音楽に圧倒されて、なんだか泣きたい気持ちになったりだとか。
特別と思える非日常の体験もあるかもしれない。

そういうぜーーんぶ。
一つ一つの積み重ねなんですよね。

私って何が好きなんだろう
何を心地よいと感じるんだろう
どうしてこれに心惹かれるんだろう
逆になんでこっちは嫌なのかな
こういうものとは距離を置きたいな
こういう自分ではいたくないな

誰かに言われたこととか、世間の目とか
実態のない言葉に従うんじゃなくて
世界はあなたを中心に回っていていいんですよ。

ちょっと怪しい何かの勧誘のようになってきました。
そろそろ壺を売りつけられそうですが(壺を作るのは得意です)
えーと何が言いたいかといいますと、

そうやって自分軸での基準をもつこと。
が、ものづくりにおいて私が大切にしていることです。
まあものづくりに限らず、楽しくご機嫌に自分らしく生きていくという意味でも、これってすごく必要だよねと思っております。

インスピレーションは空から降ってくるものではなくて
(そういう人もいるのかもしれんけど)
自分基準の判断の精度、スピードをあげていったその先に掴むものなのかなと思います。

スマホから離れて散歩するとか、湯船にゆっくり浸かるとか、大好きな人たちに会って話すとか、知らないお店に行ってみるとか。
そういうちょっとした余白の時間がね、私にとってはインスピレーションの種です。

読んでいただきありがとうございました! サポートしていただいた資金で美味しいものを食べて制作に励みます。餃子と焼肉とカオマンガイが好きです。