自分にとって良いものを人に勧めるかどうか
「自分にとって有効なものが相手にとっては有効でないこともある」ということに気づいたのはいつ頃だろうと考えることが最近多いです。
人は自分にとって有効なものには信頼を置くことが多いです。健康法、食事療法、体操、宗教などなど。私も何かの困りごとを人に話すと、さまざまな解決法を提示されることがあります。その提示される内容は、人によって様々で、相互に反対の内容であることも多いです。
例えば、私が一時期ハマった「西式甲田療法」という健康法は、独特な食事療法が含まれます。簡単に示すと、一日昼・夜の二食で、火を通す料理は食べず、生玄米と生野菜と少量の豆腐だけを食べます。生玄米や生野菜はミキサーなどで細かく潰して食べます。タンパク質は腸で腐って腸内環境を悪くする、という理由で極力摂りません。
この食事療法で他の病院で見放された難病患者が快癒したり、無月経の方が自然分娩ができるくらい体質が改善したりといった事例が報告されています。
この健康法で病気が治った人にとっては、この食事療法は信頼に足るもので、健康問題で困っている人がいたらきっとその健康法を勧めるでしょう。
逆に、ある漢方の先生は炭水化物は胃腸に悪いということでなるべく摂らないように指導します。その先生曰く玄米は最も消化に悪いそうです。なので、なるべく豆腐でエネルギー摂取をして胃腸を休めるのだそうです。
実際、私の仕事仲間はこの食事療法で体質が改善し、低体温症が治ったそうです。
他にも、炭水化物を摂らずに脂質ばかりとる健康法もあるそうです。実践している方から聞いたところ、炭水化物を摂らないようにすると身体の重い感じが無くなって快適なのだそうです。
このように、それぞれの健康法で示されている内容は相互に矛盾する内容ですが、それらの健康法で健康になった方はそれぞれいらっしゃいます。それらの健康法で健康になった方にとっては、自分が実践した健康法は確かなもので、人に勧めるに値するものでしょう。場合によっては「この健康法に反することを言っている健康法はニセモノだ！」くらいに思うかもしれません。
ただ、私としてはそれぞれの健康法はそれぞれ効果はあるだろうけど、個々人の体質や生活環境によって合う合わないもあるから、どれかの健康法「だけが」正しい、ということはないだろうな、と思っています。
上記の例は健康法、食事療法に限った話ですが、他のジャンルにおいても同じことが言えると思います。例えば仏教で心の苦しみを解消できたと思う人は仏教こそが人を救う真実の教えだと思うでしょうし、ある本で自分が救われたと思う人はその本（あるいはその本の作者）がバイブルになるでしょう。
「自分がそれで救われた」という実感があると、その人にとっては間違いなくその事柄は（主観的には）「正しい」ことになります。これは人から何を言われようと、その人の実感として「正しい」と思っていますので、揺るぎようがありません。それは時に強固な信念にもなります。
最近、いろんな人から色んなものを勧められます。食事療法、健康体操、瞑想、本、動画、人etc…試せそうなものは試してみていますが、全てを試すには時間も気力も足りないので、大体は断っています。
私は上記のように「何か」がその人にとって有効に作用するかどうかは様々な要因が影響するので、誰かにとって有効だったものが私にとって有効であるかどうかは分からない、と考えています。
ただ、最近私にそれらを勧める方々は「これが本当の健康法（瞑想、思想）だ！」という圧力で勧められる方が一定数いて、閉口しています。「あなたにとって有効だったかもしれませんが、それが私にとっても有効かどうかはあなたには分からないでしょう」と私は思うのですが、相手方はそれが正しいと信じていらっしゃるようです。そして勧める動機もまったくの善意からなので、無下にすることもできず、逆に始末が悪いなぁとも感じます。
そういう経験があるからか、はたまた私の生来の気質なのか、私は「これが絶対に正しい！」と断定することが苦手です。正確には、自分自身で「これは正しい」と判断することはありますが、その私の判断を人に勧めたり、提示することが苦手です。「私はこれが正しい、有効だと思うけど、相手にとって同様であるかは分からないなぁ」という思いが常に付きまとうからです。
私のこの態度は、頼りない、優柔不断である、歯切れが悪い、などと感じられることもあるでしょう。
人によっては「自分が試して良かったものを人に勧めないのは不誠実だ」と考える人もいらっしゃるようで、積極的に勧めようとされる方もいらっしゃいます。
私においてできることは「私はこれをしたら良くなりました」と自分の経験を語ることくらいだと思います。「あなたにとって有効かどうかは分かりませんが、私にとっては有効でした。試してみます？」くらいなら言えるかなぁと思います。
本日は以上です。スキやコメントいただけると嬉しいです。
最後まで読んでくださりありがとうございました！