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新解釈 竹簡孫子の兵法

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世界最古の兵法書「孫子の兵法」。その孫子の兵法の中でも最も古い「竹簡孫子」を研究しているマガジンです。孫子の兵法理論である「正奇」や「虚実」「形勢」などの追概念は「陰陽理論」が適…
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#第5章勢篇

(25)勢いは特性で増幅する一瞬-竹簡孫子 勢篇第五

(25)勢いは特性で増幅する一瞬-竹簡孫子 勢篇第五

勢篇第五では敵と味方の関係から「勢い」を作り出す方法を述べています。つまり、敵と味方の間に戦力差を作り出すことが「勢」を発動させます。

では「勢」を発動すれば、無条件に強力なエネルギーが生み出されるのではなく、「性」に従うとあります。

【書き下し文】
故に善く戦う者は、人を択(えら)びて勢に与わしむること有り。勢に与わしむる者は、其の人を戦わすや、木石を転ずるが如し。木石の性は、安ければ則ち静

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(24)混戦乱戦-竹簡孫子 勢篇第五

(24)混戦乱戦-竹簡孫子 勢篇第五

「孫子」における混戦乱戦の戦い方を見てみましょう。
「孫子」は、優れた用兵家が戦えば、双方が激戦を繰り広げ、戦い乱れても、乱れることがなく、自軍の形、戦型が変化しても敗れることがないと述べています。

それはなぜでしょうか?

それは、敵や味方、情勢の「変化」を見極めることができるから、つまり変化をコントロールできるからです。

易の原理では、物事が絶え間なく変化すること教えてくれます。「陰」と「

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(23)「勢」の発動は一瞬-竹簡孫子 勢篇第五

(23)「勢」の発動は一瞬-竹簡孫子 勢篇第五

「勢」(奇勢)の特徴は、威力が大きく(険)、ただその発動されている期間(節)は短いことです。そして弩の発射ようであり、勢の発動する期間は、一瞬のタイミングに引き金を引くようなものだと例えています。

【書き下し文】
水の疾(はや)くして石を漂(ただよ)わすに至る者は、勢なり。鷙鳥(しちょう)の撃ちて毀折(きせつ)に至る者は、節なり。是の故に善く戦う者は、其の勢は険にして、其の節は短なり。勢は弩(ど

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(22)「奇」は無限・無窮-竹簡孫子 勢篇第五

(22)「奇」は無限・無窮-竹簡孫子 勢篇第五

兵法において「奇」の存在によって、兵法は無限の広がりを見せると言いました。

ではそもそも「奇」とは何なのでしょうか?

「正」とは、戦力を集中させる「形」を為す戦法、「強」「実」「佚」などの状態の総和とも言えます。「正」の特色は、相手からよく見えるということです。多方面から戦力が集まってきますので、相手からも察知されやすいです。

それでは「奇」は何かというと、様々な形態に変化するものだと言いま

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(21)「勢」は戦力差が作る-竹簡孫子 勢篇第五

(21)「勢」は戦力差が作る-竹簡孫子 勢篇第五

孫子は、勢篇から途端に複雑になります。というのは「奇」という概念が入ってくるからです。「奇」は様々な形に変化をするもので、兵法に無限の広がりを与えます。

兵法は、戦力を充実させる「正」と無限に変化をする「奇」の組み合わせであり、無限の打ち手を作り出します。

勢篇第五では、「奇」によって勢いを作り出す方法を説明します。

私は勢篇の勢いである「奇勢」と、計篇で述べられた「正勢」を分けて考えます。

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勢篇 第五(新解釈/竹簡孫子)

勢篇 第五(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
孫子は言う。「大人数を少人数のように統率するのは、「部隊編成の術」が巧みだからであり。さらに大人数を少人数のように自由自在に動かして戦えるのは、「用兵術や布陣の術」が巧みだからである」と。「そして全軍が、何度も敵の攻撃を受けて敗北することがないのは、「奇正の術」が巧みだからであり、兵力を戦場に投下して、石で卵を潰すように敵を撃破するのは、「虚実の術」が巧みだからである」と。

およそ戦

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