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約束は破るためにあるんじゃない

約束は破るためにあるんじゃない

こちらの気持ちなど考えていなさそうな彼に、怒ることもできない私のせいなのだろうか、本当に仕事が忙しいのか、それとも会うのが面倒になっただけなのか、疑いをかければ自分自身が惨めになる気がした

「ごめん、今日いけなくなった」という一文を5分待って既読をつけ、「わかった、仕事がんばってね」なんて返信をした私のその時の表情を、彼が知ることも理解することも、ましてや想像することさえも、これまでもこれから先

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どうせ死ねないくせに死にたいとか言う

どうせ死ねないくせに死にたいとか言う

「心中しよう」

できるだけ冗談っぽく、でも完全な冗談だとは受け取られないように、

踏切の不協和音が余計に私の不安を掻き立てる、私の手を握る右手とは逆の手にぶら下がるビニール袋、彼の左手には、さっきコンビニで買ったバニラアイスがふたつ、揺れている

心が限界だった

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アラームを止めて、眠ってしまっていた
スヌーズ機能で再び、iPhoneのマリンバの音がうるさく響き、重い

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Stage

Stage

その日は冬らしい寒さを纏った夜だった、最寄りの駅、いつも使う改札が東口なのか西口なのか、ほぼ毎日使っている駅なのに知らないけれど、知る必要もあまりなかった、マックがある方の改札、と言えば伝わったし、そもそも逆側の出口の改札を通ったことが、約10年住んでいる街なのに、両手を使っても余るほど、同じ改札しか通らなかった

電車を降り、階段も下りて改札を抜け、近道の公園を通り抜けるルートへと足を運ぶ、背中

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自分を知りたい

自分を知りたい

自信を持ってください

という言葉が苦手だ

それができていたらとっくに持っている、そもそも目に見えない自信なんてものを、どうやったら持つことができるのか教えてほしい

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「どうして就職したいの?」

春休みが終わって、高校3年生になった私は、進路指導室と呼ばれる、自分のクラスの教室から1階下がって、階段から一番近い場所に位置する部屋で、面接練習という名目の面談をしていた

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好きとは言わずとも

好きとは言わずとも

笑うとできる目尻のシワ、仕事終わりのスーツ姿、「久しぶり」と動く唇、その低い声はじんわりと染み渡るように私の耳に届く

別に3週間しか経ってないけど、とすかさず言葉を返す、相変わらず可愛くない態度の私に、「俺は寂しかったなぁ」なんて台詞は、空気を和らげる為のものだと自分自身に言い聞かせてみても、そんなの無意味なようで、上手に私の首筋をくすぐる、

嬉しい、けれどそれを言葉にはしない、できない

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謝るくらいなら最初からしないでほしい

謝るくらいなら最初からしないでほしい

「なにしてんだよ!!!」

突然の怒鳴り声に、固まった、身体も、思考も
きっとそれは隣に座っている姉も同様

怒鳴り声をあげたその人は、姉と私がやっていたテレビゲームを容赦なくテレビから引き抜き、その本体を地面へ叩きつけた

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カラオケボックスから外に出ると、明るかったはずの空が夕暮れと呼ばれるものに姿を変えていた、

が、渋谷のビルばかりの街並みじゃ、首を思いきり反らし

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やりたいことを否定されたのは初めてかもしれない

やりたいことを否定されたのは初めてかもしれない

「才能ある人は学校なんかいかなくても成功してるから」

その言葉に何か言い返そうと、頭の中をどれだけ掻き回してみても、それっぽい言葉すら出てこなかった、

応接室によく置かれるであろう1人用の焦げ茶色した皮素材のソファが4つ、2対2で向き合うように並べられている、

私は扉を背にして、入口から遠い側のソファに、少し着崩した制服を身にまとい、意識しないと丸まってしまう背中をわざと丸くして座っていた

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好きに、なってしまいました

好きに、なってしまいました

生まれて初めての告白をつかってしまうほどに、伝えたいと思った、叶わなくても、報われなくても、それでもいい、

雷のような衝撃はなく、頭蓋骨に響き渡る鐘の音が鳴るわけでもなかったけれど、これは恋だと確信した、この気持ちに気付いてほしい

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メールが届いていた

高校生になるまで携帯電話を持ってはいけないというルールをしっかりと守り、月2,000円ほどのお小遣いをコツコツ貯めて、

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恋か、依存か

恋か、依存か

考えたってどうしようもないことを考えて、悲しみの海、揺れる波に足を踏み入れる、引き返す方法を知らないくせに、

だから気付いたら溺れていて、悪い癖、というか、もう思考がそうゆう仕組みになっているんだと思う

あれが恋だったのか、それともただの生活への依存だったのか
ふと思い出して考えることもこの頃はなくなっていた

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「早く別れなよ」「早く家から追い出したら」

友人に言

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