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江之浦測候所(神奈川県小田原市・根府川駅)

建築家や現代美術家といった顔を持っている杉本博司。日本の古美術や古典などへの造詣が深い彼が構想10年と建設10年をかけた複合施設が江之浦測候所である。箱根外輪山を背にして相模湾を見渡せる丘にあり、自然を借景としながらいくつかの建築や古美術が広大な庭園に配置されている施設である。公共交通機関がないため自動車やタクシーでないと辿り着くのは難しいけれど、根府川駅から送迎バスが出ているプランもある。

江之浦測候所はメディアで採り上げられて以来、いろいろな観光客が訪れる人気スポットに。入場に指定時間を設けた予約制にしている上、非常に広い敷地なので人気のインスタレーションでなければ人とすれ違うことはそう多くないものの、日によってはすぐに売り切れてしまうほど。特に年末年始や初夏・夏の長期休暇シーズンだけではなく春分・夏至・秋分・冬至のシーズンとその前後も人気があるというのが特徴的。

冬至に日の出が差し込む通路

春分・夏至・秋分・冬至のシーズンが人気だというのは江之浦測候所にあるインスタレーションがおおいに関係している。入り口からすぐに見える江之浦測候所のシンボルの一つである夏至光遥拝100メートルギャラリーは、その名の通り夏至の朝に海から上った太陽光がこの空間を駆け抜けるという構造になっており、長い通路も相まって非常に人気のある場所。

夏至光遥拝100メートルギャラリー 壁には作品が展示されている

またそのギャラリーから少し移動すれば、今度は逆に冬至光遥拝隧道があり、こちらは冬至の朝に海から上った太陽光が駆け抜ける通路。さらに春分・秋分の朝に日の出を真っ直ぐ迎えられる場所も二ヶ所あり、それぞれ専用の会(朝から参加できる会)が設けられている。

この鳥居から春分・秋分の日の出が迎えられる

夏至:夏至光遥拝100メートルギャラリー+観桜台
冬至:冬至光遥拝隧道(通路上部と通路内部)+光井戸と円形石舞台
春分・秋分:石舞台+石造鳥居と茶室

こっちの石舞台からも春分・秋分の日の出が迎えられる

こんな位置関係だろうか。それぞれに付随する作品も添えてあるので味わい深い。個人的には冬至が印象深く、「冬至は一年の終点でありまた起点である」という杉本博司の言葉にあるように、光だけでなく色々と冬至に関連する作品が点在しているのが特徴かと思っている。冬至の朝の海沿いということで相当な寒さが覚悟できればのことだけれど。

冬至を迎える門

これらの他にも当然ながら無数の展示がされている。杉本博司の作品もあれば古美術品としての展示も点在しておりとにかく広い。特に順路はなく自由に歩き回るという感じで、最初に渡される冊子(マップと作品の紹介がされている)に従って歩いてみるとかなり下の方まで移動できる。

これは敷地の下の方にある小屋 かなり勾配を下る

結構な急勾配なので気をつけて歩かないと転倒するレベルの山道。榊の森を下った先には道具小屋を整備した化石窟という建物があり、多くの化石が展示されている。また石棒も健在。まさかここにも御神体があるとは。

ありがたいです

午前と午後に入場時間が分かれているが、1日中でもいられる広さと作品の深みを誇る施設である。ただしかなり上下移動があるので足腰が丈夫でないと移動するのはきつい。普通に山道。トイレは石舞台の近くと入口のそばにある待合棟の地下階にあり、いずれもウォシュレット式。帰りの送迎バスは30分ごとに出ており順調であれば15分前後で根府川駅まで到着するものの、根府川駅からの電車の時間も考えておくと良い。駅前には何もないので。

神社もありまっせ


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