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目黒区美術館(東京都目黒区・目黒駅 東京の猫たち)

目黒区美術館では猫をテーマにした作品を集めた企画展を開催している。目黒区美術館だけでなく、区立美術館ネットワーク連携事業として、都内にある色々な美術館と連携して各美術館の所有している作品を集めて一堂に介しているという、なかなか面白い試み。都内中の猫が目黒区に集結って感じである。

目黒区立美術館に来るのも何度目か、もはやガタガタ揺れるエレベータも馴染み深い。2階が展示室になっている。3つある展示室のうち最初の展示室へ入れば、目の前には朝倉文夫の猫たちがお出迎え。台東区の朝倉彫塑館からやってきたブロンズの猫たち。大きなパネルでは邸宅で大勢の猫を慈しむ文夫の嬉しそうな顔がまた微笑ましい。吊された猫(うなじをつまんで持ち上げる)が猫と腕だけという構図も面白い。

1階フロントのデザイン

すぐ隣には秋山泰計による版画作品。エジプトの壁画を思わせるような独特なデザインで、こちらは渋谷区の松濤美術館からのものになっている。壁際にはそのほかにも多くの美術館からの作品が並んでいる。練馬区立美術館からは高山良策、板橋区立美術館からは石川寅治や山本日子士良ら現代作家の油彩画が並ぶ。板橋からは椿椿山、柴田是真といった日本画の大家たちの作品まである。

今回テーマは猫であるけれど、虎もネコ科ということで幅広く括り、虎を入れた構成にもなっている。例えば源鸞卿や島琴陵など江戸時代の日本画では依然として虎がよく画題に取り上げられている。
中央のガラスケース内には墨田区のすみだ北斎美術館からのこれまた虎の作品も並ぶ。北斎漫画もいくつか。荒々しい虎の絵やコミカルな猫の絵まで書き分ける北斎はさすが。
圧倒的な存在感を示すのが大田区の龍子記念館からの川端龍子による虎の間。虎と見つめ合う川端龍子。龍虎図の構図である。龍子が奇妙なポーズを決めているのもおそらくタツノオトシゴを模してのことなのだろう。

次の展示室では世田谷区の世田谷美術館から稲垣知雄の木版による作品が大量に出展。こちらの部屋のみ撮影が可能となっている。イラストに採用されそうなニャンとも可愛らしいデザインで洗練されたキュビズムの構図もまた要注目といったところだろう。向かいにあるスペースも今回は展示スペースとして設けられており、目黒区美術館が所蔵している藤田嗣治の作品が多く並んでいる。意外なことに陶器も手がけている。

稲垣知雄 なかなか好きなデザインである

最後の展示室では国内外の作品を揃えている。まずお目みえするのは世田谷からファッツィーニ、土方久功のブロンズ像。それにメテッリ、デスノスといった画家の油彩画もある。なんとなくアウトサイダー・アートの趣があるな、と思って後から調べてみたら彼らは素朴派というジャンルに属していて、画家を職業としない者が正規の美術教育を受けないままに作っている作品だった。
そのほかにも豊島区の熊谷守一美術館からは熊谷守一の作品や、同じく豊島区からは詩人のイメージが強い小熊秀雄の珍しい作品が並んでいたり、練馬から小野木学による挿絵原画が並んでいたりとバラエティに富んだ内容になっている。なにしろ都内のねこあつめが一堂に会した展示会はかなり見どころがあって楽しい。パネルでも今回の展覧会に関連した「区立美術館ネットワーク連携事業」についての解説がされている。今回は作品の提供がなかった品川区のO美術館だけまだ行けてないのでいつか攻略したいと心に誓うのだった。
トイレは変わらず和式と洋式。


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