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コロナ禍と落語会と私的体験――広瀬和生『21世紀落語史』番外編

コロナ禍と落語会と私的体験――広瀬和生『21世紀落語史』番外編

新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年の落語界は未曽有の危機的状況に陥った。ここまでの事態になると、今年の初めの時点で一体誰が予想しただろう。『21世紀落語史』では2019年末までの出来事について書いたが、その出版後に落語界を襲ったコロナ禍について、4月末までの推移を個人的な体験を核とした覚書としてまとめてみた。(広瀬和生)

【記号の意味】
●:自分が観た落語会
★:自分が体験したこと

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第五章 2005年の落語ブーム――立川談春・タイガー&ドラゴン/広瀬和生著『21世紀落語史』17339字公開

第五章 2005年の落語ブーム――立川談春・タイガー&ドラゴン/広瀬和生著『21世紀落語史』17339字公開

タイガー&ドラゴン「六人の会」が旗揚げした2003年、SWAが始動した2004年に続き、2005年には『タイガー&ドラゴン』と九代目正蔵襲名イベントという2つの大きな話題があり、マスコミが「落語ブーム」という言葉を盛んに用いるようになった。

2004年末の段階で真っ先に「来年はいよいよ落語ブーム到来」と書いたのは高田文夫氏だ。同年12月27日付読売新聞紙上の連載コラム「うの目たかだの目」において

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第四章 昇太も動いた――2004年「SWA」旗揚げ/広瀬和生著『21世紀落語史』11050字公開

第四章 昇太も動いた――2004年「SWA」旗揚げ/広瀬和生著『21世紀落語史』11050字公開

「SWA(創作話芸アソシエーション)」の結成
「六人の会」の発足から1年後の2004年、もうひとつのグループが始動した。春風亭昇太を中心に、三遊亭白鳥、柳家喬太郎、林家彦いち、神田山陽(講談師)が結成した創作話芸集団「SWA(創作話芸アソシエーション)」だ。これは、それぞれ自分で新作落語(山陽は新作講談)を創作してきた彼らが、集団でのブレインストーミングで新作を練り上げ、共通の持ちネタとして演じよ

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第三章 小朝が動いた――2003年「六人の会」旗揚げ――広瀬和生著『21世紀落語史』17482字公開

第三章 小朝が動いた――2003年「六人の会」旗揚げ――広瀬和生著『21世紀落語史』17482字公開

この記事では、2005~08年の「大銀座落語際」のプログラムを網羅して記述しています。ウェブ上に同様の資料を掲載しているところはありませんし、紙の資料を取ってある方も少ないと思いますので、貴重なものです。ちなみに書籍(電子版を含む)には細かくルビが入っています。

目玉は鶴瓶――小朝の「六人の会」
2003年、小朝が動いた。「六人の会」の旗揚げである。

その前年の2002年、小朝は落語協会の理事

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第二章 21世紀の「談志全盛期」の始まり――広瀬和生著『21世紀落語史』8642字公開

第二章 21世紀の「談志全盛期」の始まり――広瀬和生著『21世紀落語史』8642字公開

※第一章はこちらからご覧ください。

「志ん朝の分も頑張るか」

「志ん朝の死」という悲劇に打ちのめされた落語界にあって、俄然ファイトを剥き出しにしたのが立川談志だった。

志ん朝の死に際し「志ん朝の不幸はライバルがいなかったこと。自称ライバルはいたが、真のライバルはいなかった」と書いた作家がいた。「談志ファンは志ん朝も聴くが、志ん朝ファンには談志嫌いが多い」とはよく言われることだが、この作家はま

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第一章 すべては志ん朝の死から始まった――広瀬和生著『21世紀落語史』12670字公開

第一章 すべては志ん朝の死から始まった――広瀬和生著『21世紀落語史』12670字公開

4月13日のTBSラジオ「東京ポッド許可局」でサンキュータツオさんが『21世紀落語史』を推薦してくださいました。どうもありがとうございます!

※「はじめに」はこちらからご覧ください。

志ん朝の死がもたらしたもの今、確かに「最近落語を聴き始めた」という新規参入の落語ファンが多いのは事実。いろんな落語会の客席にいて見聞きすることから、それは実感する。

しかし、この数年で突然「落語ブーム」がやって

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落語ロスの方のために――広瀬和生著『21世紀落語史』を公開

落語ロスの方のために――広瀬和生著『21世紀落語史』を公開

光文社新書編集部の三宅です。

新型コロナ禍で、多くの落語会が中止・延期となり、最後の頼みの綱の寄席も休業を余儀なくされました。現状を踏まえれば仕方ないことではありますが、多くの方が落語に飢えている状況かと思います。DVDを観たり、CDを聴いたり、YouTubeで動画を漁ったり、あるいは高座の生配信に接したりして、飢えを凌いでいることでしょう。ないとわかると、ますます欲しくなるのは人間のサガかもし

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