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お姉ちゃんが泣いている…@1歳児


1歳児4人でゆったりと散歩に出かけたある日のこと。


そろそろご飯ということで、帰路につくことにした。
この園では、歩けない子はカート(バギー?)で散歩に出かけるのだが、
この日は立ち乗りカートに4人乗って行き帰りした。


さて。
4人ともカートに乗り、「帰ろう」と動き出してすぐのこと。


目の前にある小学校の方から、何やら泣き声が聞こえてきた。

みると、大体3年生くらい?の女の子が、フェンスの向こう側でひとりぼっちで大泣きしている。見た感じ、ただ事ではなさそうだった。

これを見て、何もなかったかのように帰るのはどうかと思い、
カートを寄せて声をかけてみることにした。

「大丈夫?何かあったの?」

しかし女の子は黙っている。
ゆったりと、何度か声をかけたが、やはり黙っている。

「どうしようね・・・」
と、このあたりでカートの中の子どもたちを見てみた。

すると、これまで見たこともないような表情で、
4人とも女の子を見ているではないか!
じーーーっと凝視し、真剣な眼差し。眉間にシワをつくっている。
一言も言葉はなかった。


気持ちを寄せているのだろうか。
心配しているのだろうか。
本当は近くにいって支えてあげたいのだろうか。

「どんな気持ち?」と聞くのも野暮なので聞かなかったが、
明らかに4人ともが、
ただ事ではない女の子の姿に何か心を揺らしているようだった。


女の子の周りを見ると、ちょっと離れたところに同級生?がいる。
「だれか呼んでこようか?」と言ったすぐあとに、
担任の先生と思われる方が女の子の同級生と一緒に近づいてきた。
同級生の女の子も、「どうしたの?」と心配している。


よし、ひとまず学校内の人には届いた。
この保育、そろそろいいだろうか。

そう思い、
「そろそろ大丈夫かな?」
とみんなに声をかけるが、
みんなの表情は全く変わっていなかった。
相変わらず、真剣な眼差しをそらさずに、女の子を見つめていた。

しばらくだけ女の子と先生を見ていた。
「みんなのところ行こう」と先生が声をかけている。
さすがにこれ以上ここにいるのは逆に迷惑がかかりそうだし、
出番は終わったかと思い、その場を離れ、園に戻ることにした。

しかし、4人の表情は決して皆がスッキリした感じではなかった。


___


振り返って思うことがある。


僕は、この子たちほど真剣にこの場をみていない自分に気がついた。
正直なところ、はじめはそこまで重要視していなかった。

子どもたちは違っていたのだ。

そしてこの子たちは、
「まだ終わっていないよ」と訴えていたような気がする。
僕が場を離れたのは、早すぎた。
この子達は、お姉ちゃんのこの先のことまで考えている。
そんな表情をしていた。


わずか1歳の子どもたち。

この子たちは、このお姉ちゃんの涙をみて、
これまで見たことがないような表情で、何かを訴えていた。
本気の涙、本気の悲しみを、一瞬で見抜いていたのだ。

昔、3歳の子に「なにみてるの?」と聞いたとき、
「気持ちだけだよ?」と答えられたときのことが蘇った。


子どもたちは、いつも“気持ち”をみている。
大人には見えない深さでみて、いつもいつもみている。
人が悲しいとき、寄り添って支えようとしている。

いつもいつも、真剣に生きている。


僕は、どうだろうか。


#子どもに教えられたこと

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