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書いてみました。関越道大渋滞から雪氷災害に関する提言

昨年は暖冬・少雪も、今冬は12月からあっという間に各地で雪景色。
毎年、初雪の頃には「きれいだなぁ」と恵みの雪に嬉しくなる気持ち。

でも、年齢を重ねるごとに、雪との暮らしに色々な感情も生まれます。
澄んだ空気の中、しんしんと降り続ける雪に「いつになったらやむんだろう」「かたくなる前に雪かきしないとなぁ」「疲れるなぁ」と思いながら日々の生活を過ごす人も多いのではないでしょうか。わたしもその一人です。(新潟県生まれ新潟県育ち)

降り積もる雪の中でも除雪車の皆さんが日夜休みなく除雪活動をしてくださるおかげで、雪国でも私たちが安心安全に暮らせることは本当にありがたいことです。

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先日の関越自動車道集中降雪による大渋滞(12月16日から大雪の影響による大規模な車の立ち往生、解消までに3日)について、藤原直哉のワールドレポート(*)を購読してくださっている方からご質問をいただきました:

1.  あの大渋滞は事故ではなく人災ではなかったのでしょうか。

2.  今後、地震・土砂崩れ・火山爆発・津波などの未曾有の災害が発生しても、トレーサビリティ(追跡可能性)を実現し、サプライチェーンを迅速に再構築するためにブロックチェーンに記録する方法とは何でしょうか。

お寄せいただいた質問への回答をnoteにアップしておくことになりました。(12月25日付:樋口執筆、藤原直哉監修)

「自分だったらどう考えるかなぁ。どうするかなぁ」「こんなことをやってみたらどうだろう」など、お読みくださる皆さんの日常や未来を想う気づきや行動へのささやかなきっかけになったら嬉しいです。

雪かきが面倒でも、寒さに疲れても、雪の中で一日中よろこび遊びまわれた無邪気な子ども心も忘れずに、混乱を最小限に抑えつつより明るい未来を創っていくための一助となったら嬉しいです。

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1.   あの大渋滞は事故ではなく人災ではなかったのでしょうか。

関係機関での連携不足による人災であり、知識不足によるスタック車発生での人災であったと思います。

どこがダメなのか、なぜ起こっているのか、どのくらい時間がかかるのか、目処が立たない原因などを誰でもわかりやすく情報共有できるような仕組みが必要かと思います。

それぞれの良さを組み合わせて活用することができます:

・管理としてのBlockchain
・判断としてのAI
・計測報告としてのIoT
・作業としてのロボット
・通信としての衛星や5G

今後も人命に関わるような事態とならないよう、デジタル技術の組み合わせによるシステム活用や人間ができる相互支援(NEXCO、自治体および国、警察、消防、除雪業者など)による再発防止も含めた内容をまとめました。

ブロックチェーン・IoT・AIを活用してのデータ管理や分析において:どんなデータが必要か、どこを計測すれば良いのか、何の目的のために分析するのか、どんな分析結果を読み取るのか、候補の中から最後の1つを決めるなどの基準や最終判断は人間の役目となります。

デジタル技術を上手に活用しながら、より良い社会をみんなで創っていくかたちです。

<課題と提案>

▷多量の滞留車両と長時間の交通渋滞発生を事前に防ぐ対策
 (早期解消対応)

▷関係機関による連携した情報収集とデータ一元化共有の強化
・現況、情報連絡本部による情報収集と情報提供だけでは上手くいかない
・各機関によるバラバラな情報発信の回避
・刻々と変わる道路状況を1つの機関で集約する不効率さの回避(中心に巨大なDBを置かない)
・みんなでリアルタイムで随時共有し、誰でも見られるようにする

以下のような情報を常に最新で確実な情報として
:気象現況、気象予測
:道路交通状況
 (交通量、通行止め状況、解除見込、除雪状況、交通障害渋滞状況)
:支援状況
:対応体制
 (迂回路などの交通誘導整理、通行規制、相互支援)
:過去の情報などによる事前情報や見込み情報もわかりやすく共有
:除雪車稼働位置、除雪の把握

・除雪体制の強化と異常降雪時の除雪方法の改善にもつながる
・異常降雪を想定した行動計画の策定

一方的な「通行止め解除」「事故車有り」などの道路情報提供では、渋滞の解消ではないため、渋滞情報や見込情報などの見通し情報も必要です。(過去の状況から分析解析して予測に役立てる)

また、ドライバーそれぞれの自動車情報(運転の状況、燃料残量、バッテリーの残存価値、道路の状態)を必要に応じて関係機関も含めた全体で共有できるようになると、問題・課題解決(滞留車両の早期解消など)につながります。

交通の新しい取り組みとして、街の道路がネットにつながっていることにより、大幅な交通状況の改善や安全安心の実現となります。(自律的交通管制)

▷滞留車数を極端に少なく発表したこと
・ブロックチェーンを活用したシステムであれば、改竄や不正ができない
・交通障害と交通状況に係るリアルタイムな全容把握もできる

▷長時間渋滞が発生した際のドライバーの安全健康確保
・今回の立ち往生の状況、車中から投稿相次ぐ(SNS)
・自衛隊による必要な物資配布も、どこで誰が提供を受けたかなど随時把握できるようにする

▷スタック車をできるかぎり発生させないための事前対策
・雪国に入るときにはチェーン携行、早期装着に係る広報啓発の強化
・スタック車多発地点の透明化

<状況>

・関越自動車道(上下)の立ち立ち往生
 :最大15km、最大時2,100台(滞留車両)、最大52時間
・体調不良により4人病院搬送
・NEXCO東日本:除雪作業、復旧作業
・新潟県:大雪に関する新潟県災害対策本部設置、自衛隊災害派遣要請
陸上自衛隊員430人が現場へ(物資配布、安否確認など)
・ドライバーらの救助費用(国と県が負担:南魚沼市と湯沢町に災害救助法適用)
・緊急協議会設置:国土交通省北陸地方整備局と新潟県警(情報把握や滞留車救助などの検証)

<背景>

・立ち往生の一因:通行止めの判断が遅れた
・通行止め判断の遅れ理由:並行する国道17号が既に通行止め、情報把握の甘さ
・関係機関との意思疎通不足:連携体制ができていても判断うまくできず
・2016年1月の「中越大渋滞」の教訓を踏まえて関係機関との連携強化に努めてきたものの、意思疎通がうまくいかず 

*参考
NEXCO支社長ら花角知事に謝罪 関越道立ち往生 通行止め判断に遅れ(新潟日報20201222)

・立ち往生の一因:冬用タイヤやチェーン装着不十分でのスタック車


<運転についての教育・教養>

登山が流行り、高尾山と同じ感覚でサンダルで富士登山しようとする人がいたり、「まさかこんなことになると思っていなかった」の回避が必要であり、やはり教育・教養が大切かと思います。

冬用タイヤやチェーン装着していない車両、非常用品を載せていない車両がなぜ危険なのか、大雪や冬装備(適切な早期装着)に関する注意喚起ももう少し強化していった方が良いと思います。

*おまけ   雪国での電気自動車の課題も見えてきました。

<提言>

今回の関越道大渋滞で顕在化した雪氷災害課題を理解し取り組むことで、誰でも安心安全な交通利用ができるよう、共生社会の実現へ向けて、従来の対応プロセスの刷新を図るよう以下4項目を提言したいと思います。

 *技術的なことや専門的な詳細などは記述しておりません。

提言1: 誰もが共有活用できるデジタルとアナログの2本立てのプラットフォームサービスの構築

・情報伝達手段から情報共有手段への仕組み変更
・属人的に行われてきた仕組みから、柔軟なデジタルとアナログの併用型システムへの組み替え
・見た目はアナログで中身はデジタルのサービス、見た目はデジタルで中身はアナログのサービス
・デジタルだけに頼らず、アナログだけに頼らず、柔軟な対応と意識や行動の変化へ
・web上でのチャットコミュニケーションツールなどの整備
・丸投げや放置状態から対応の最適化・自動化・可視化

提言2: ブロックチェーンによる分散型情報管理

・関係機関の垣根を超えて、各機関の熟練者・新人問わず、ドライバーも含めて共有できる環境
・各機関ごとのデータ孤立化ではなく連携したデータベースの一元化により、事故や災害発生時の迅速な追跡対応が可能
・どこかが多彩な情報源を持つ中央集権型から、全員で共有責任を持つ透明性分散型の実現
・「誰が、いつ、なにを記録したのか」変更不可能なデータ記録により偽造・改竄防止
・重要な意思決定をする上で、データの正確性の担保とより細やかな管理による時間短縮化
・「誰が、いつ、どこで、どのような対策を決定したのか、支援に動いているのか」一連記録の可視化により抜け落ちや二度手間の解消
(もしも事実と異なる情報が発見された場合:誰が、いつ、その情報を入力したのかわかる)
・高速道、国道、地方道別と分けず、混雑や渋滞を一体的に最適な緩和・解消の実現
・平時と緊急時(災害などの有事)に共有できる範囲を管理できる仕組みの整備(ネットワーク参加者のプライバシー保護とアクセス制御機能によるセキリュティ強化)
・スマートコントラクト(ブロックチェーン上の技術、一連の規則全自動実行可能)導入により、過去の事象の記録参照「もし、~ならば、~になる/する」など条件に基づいた判断対応が可能

提言3: IoTによる有効な情報計測報告

・従来は集約が難しい有効な情報データ取得活用
・情報集約の時間と人手を要する作業軽減
・現場の状況を正確にデジタル化、センサーを適切に選定
・手動集約による人為的ミス、遅れや混乱防止

提言4: AIによる有効な判断活用

・分析支援システムの構築
・立ち往生含む過去の雪害事例や交通障害報告の分析活用からの事前予測や予防保全
・多量なデータから多様な分析軸での傾向把握と対策の糸口の発見
・過去の予期せぬ出来事や例外発生時のデータ分析による有事の迅速対応活用
・「その時点で、その場で、即行動」の意思決定や優先順位を支援する知見抽出
・ブロックチェーン上への分析結果送信による可視化

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その後、関越道集中降雪を踏まえた対応について(12月25日付:国土交通省北陸地方整備局・東日本高速道路株式会社新潟支社)発表されました。

*参考
以前よりあるサービス:

↑高速道路ヒヤリ通知・経路料金検索・渋滞予測情報・現場渋滞情報・冬季限定気象情報ライブカメラなど


12月25日より始まったサービス:

↑高速道路3社(NEXCO東・中・西)共同にて開設。

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2.  今後、地震・土砂崩れ・火山爆発・津波などの未曾有の災害が発生しても、トレーサビリティ(追跡可能性)を実現し、サプライチェーンを迅速に再構築するためにブロックチェーンに記録する方法とは何でしょうか。


・ブロックチェーンを活用することで、サプライチェーンの見える化が実現します。
・食品、救援物資、どんな製品でも透明性と安全性を関わる全ての人たちで責任を共有します。
・全ての人たちが、同じやり方でデータを記録します。(分散型台帳システム_時系列データベース)
・ブロックチェーンによるバトンリレーです。
・ブロックチェーンには、不特定多数が参加するシステムの強靭性というものが信用の根源にあります。

▷ブロックチェーン技術によるサプライチェーンシステム
 (記録管理・追跡)
・関わる全ての人たちが同じやり方でデータを記録
・フローのタテ割りがなくなり、全部ヨコにつながる
・1分1秒単位で追跡できるトレーサビリティー
 :誰が持ってる?どこに荷物ある?書類どこまで整ってる?の一元化
 :時間内に手続き進んでる?の確認
・正確性と透明性と迅速性が実現する
 :電話問い合わせ、指示連絡の解消
・不正や風評被害の軽減
・今までにないレベルでの安全性確保とコスト削減
・東日本大震災での最大の課題:必要なところに、必要なものが届くように
・テクノロジーを使うだけでなく全体像を見ることができる人
・不足と過剰回避の的確なヨコ型サプライチェーンの構築
・災害時にコンピュータが壊れても記録データが消えるリスク回避
・ブロックチェーンを使った土地建物の登録システムによる保険請求と災害支援請求に必要な重要データ化
・改竄されにくく安全性が確保されたデータによる災害救助
・各地に分散された格納データによる復興支援

▷例 
WalmartとIBMが進める完全な透明性のある食品流通システム
:1つのマンゴーの旅路(Shared Process)
:流通経路における情報をブロックチェーン上に記録、関係者全員共有


▷現況
・安全なものは高い
・仮に政府の基準にクリアして認証ラベルを貼れたとしても、今この製品がどうかという保証にはちっともならない
・責任転換や不正などのインチキが起こる 例)産地偽造と仲買問題
・正しい情報が製品に載せられていないことがある
・気がついたときには手遅れなまでに広がる食中毒 
など


▷ブロックチェーン研究会
 (2018年6月〜2020年8月:毎月第2水曜日開催)


▷ディスラプティブ・イノベーション研究会
(2020年9月〜毎月1回収録型)


▷おすすめサイト(日本語)

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藤原直哉のワールドレポート(*)


創刊から今年で24年、毎週水曜日に欠かさず発行し続けている「藤原直哉のワールドレポート」では、A4版2枚に時事解説などをまとめてお届けしています。

創刊    1996年/平成8年6月26日
1,000号 2015年/平成27年8月19日
最新号   2020年/令和2年12月23日
 *年内最後の発行は、明日30日(水)1,280号です!

目先のことにとらわれずに長く広い視野で世の中や人生を見る指針として、多くの方にご活用いただいております。

まるで辞典のよう!
創刊号から1,000号までをまとめた全4巻・記念誌『藤原直哉のワールドレポート 天が教えてくれた未来のシナリオ〜20年の軌跡〜』を発表してから、あっという間に5年が経ちました。

藤原直哉がワールドレポートについて語った前書き付
・ワールドレポートの生まれたいきさつ 
・秘密その1 「縦書き6段」
・秘密その2 「悪文」 
・秘密その3 「なぜワールドなのか」 
・秘密その4 「情報源」 
・秘密その5 「どうやって情報をピックアップするのか」
・秘密その6 「どんな理論で分析しているのか」
・秘密その7 「予測は当たるのか」
・秘密その8 「予測と対策」
・秘密その9 「精神世界との関係」
・ワールドレポートのこれから
・ワールドレポートで一番伝えたいこと
今週の論説 「ズバリ直言、荒れた70年代の再来を念頭において」
住専・金融法案の国会通過、高島屋と総会屋のつながり、住友商事の巨額損失事件、オーストラリアのメディア王がテレビ朝日の筆頭株主に、米クリントン大統領のホワイトウォーター事件本格化など、あっと驚く事件が目白押しの昨今である。まさに歴史の断層を本当に渡り始めた観のある現在の日本であるが、断層の第一幕をむかえて今、われわれはとりあえず、あの荒れた70年代が再来するというイメージで、今の時代を考えておくとわかりやすいと思う・・・。

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1996年6月26日の創刊号の書き出しです。
まさにこの20年間は激動の時代でした。そしてこれから先もまだまだ世の中は激しく動いていきそうです。
 
このものすごい時代に何も考えずに前に進むと相当な困難を引き受けなければなりません。それはやはりつらいことですし、困難が混乱と絶望を生んですべてが終わってしまうことにもなりかねません。
 
大切なのは自分なりの軸をもって未来を見据えて行動していくことです。
未来を知るためのひとつの良い方法は歴史を知ることです。この激動の20年の歴史を振り返り、これから先の20年を生き抜くための頭と心と腹を得て、混乱を最小限に抑えつつ、より明るい未来を創っていただくための一助としていただければと思います。
 
1,000号分の目次が付いていますので、あの時のあの出来事についてはどうだったか、など気になる内容を拾い読みしていただくこともできます。

経済アナリスト 藤原直哉

コロナ禍でも新しい取り組みとして、今年6月より毎月1回(通常第1金曜日)配信中!

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コロナ後に向けて仕込み中!

令和3年・春までには、「ブロックチェーンと私たちの未来」「リーダーシップと私たちの未来」をテーマにしたコンテンツも発表予定です。

ご縁いただいた皆さんのおかげで、状況に応じて少しずつ変えてみながらも継続してきたこと、新たに取り組み始めてみたこと、今年も一年過ごすことができました。本当にありがとうございました。

来る年に向けて、私たちもワクワクしながら仕込み中です!

旅行 風景 写真コラージュ


どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。

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