正当化したい己の欲望
10年くらい前、映画の撮影で京都に頻繁に通う時期があった。
京都には美味しいお店がたくさんある。ラーメンも同様だ。夜は色々と旨い会食もあるので、ランチの時間帯に「新福菜館」の真っ黒なラーメンとか、「第一旭」とかに足を運んだ。
で、ここ数日は来月から始まるドラマの撮影のため、新宿御苑前で衣装合わせがある。
新宿御苑前は「金色不如帰」を代表として旨いラーメン屋が乱立している激戦区だ。特に淡麗系についてはウルトラヘビー激戦区だと言ってもいい。
数日は衣装合わせのため新宿御苑前に通うことになると知って、僕の心は高鳴っていた。衣装合わせにかこつけて、偏食ランチを楽しもうと思っているのだ。最近はグルテン制限しているため、週一のチートデイでラーメンを食べていたが、こうなればチートウィークでいいよね、と思っている。
いや、そうする。
さて、まず本日はどこから攻めるか?
「金色不如帰」は抜群なのだけど、結構何度も行っているので、一旦リストから消去する。
御苑前にはかなり行きたいお店があるので悩む。
「金色不如帰」もそうだけど、絶品の塩や淡麗醤油の名店がいくつもあるのだ。
と考えたところで、冒頭のことを思い出した。
御苑にも「第一旭」があるのだということを。しかも、御苑の「第一旭」には行ったことがない。
絶品淡麗の前に、まずは原点のような「第一旭」を食べてみるのがいいんじゃないないか? と思ったのだ。久しぶりで懐かしの「第一旭」。
そう思ったらどうしても食べたくなって早足になった。
お店にはすぐに入ることができた。入り口で食券を買う。
このお店は普通にチャーシューが多いので特製にしなくても十分チャーシューを味わえる。だから、普通のラーメンを選ぶ。さらに忘れてはならないのが九条ネギ増し。「第一旭」に来たら、他はどうでもいいので、ぜひ九条ネギ増しだけはやって欲しい。マジで旨いから。
つーわけで、ラーメン+九条ネギ増しをポチる。
カウンターに座って数分でラーメン着丼。
やあ、久しぶり。元気そうだね。変わりはない?
そんな旧知な相手に話しかけるようにスープをすすった。
あぁぁぁ、うまーい!
京都のとんこつもバリうまかなのだ!
味と記憶が結びついて、京都での日々にタイムスリップした感じ。
あの頃の僕に向かって、今の僕はこう話しかける。
「今も変わらず美味しいよ」
何にも新しくないんだけど、すごく旨いんだよなぁ、これが。
チャーシューも旨い。今時のヤツじゃないんだけど、今時のヤツより旨いんじゃないか? って思うのはなんでだろう? 煮豚なのに、旨みが抜けてないところなのかも。そもそもチャーシューの製法が違う感じがする旨さ。
スープと麺は相変わらずだ。といっても京都でしか食べたことないから、本店とは違うのかもしれない。それでも、あーこんな感じだったよなーと十分に堪能させてもらった。東京だから醤油がちょっと強いのかも? それでも東京人としては、このくらいがめちゃくちゃ好みでもある。
で、やっぱり九条ネギがいい。パンチ的なアクセントもあり、スープに対するさっぱり感もくれる。
どのくらいぶりなんだろう。スープを完飲してしまった。まあ、いいか。こんな暑い夏には塩分も必要だろう。
さて、衣装合わせへ向かおう。ラーメンのおかげで割と気力が満ち満ちている。やっぱり好きなものを食べて、好きな仕事をするのが僕の性に合っているのだな!
なら、グルテン制限やめちゃう?
… …と、僕は僕自身に辞めるための言い訳をし始めている。
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