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心の境界線(バウンダリー)を引き、自分も他人を大事にする

読んでくださってありがとうございます。
機能不全家族のもとで育ち、
うつ病や複雑性トラウマなどで苦しみ、
そこから回復した経験があります。

回復する過程で色んなことを行いましたが
中でも「心の境界線を引く」作業は
自分が最初に取り組んだことです。

この作業を意識的に行うことで、
人と適切な距離が取れるようになりました。
そして結果として
自分を大事にすることに繋がりました。

今回は、自分の経験をもとに
心の境界線を引く大切さについて語ります。

心の境界線を引けない人の特徴

自分も昔は心の境界線を引けない人間でした。
友達と遊んでいる時も、
自分の要求は全く言えず
お昼ご飯はどこに行きたいかも
全て他人の要求に合わせていました。

学校の掃除など、他の人に頼まれたら
断るのが申し訳なくて引き受けました。

自分は他の人の顔色を伺う癖がありました。
自分がいるときに他の人が機嫌が悪そうな顔や
つまらなそうな顔をしていると
「自分が何かしてしまったのでは?」
と胸が苦しくなります。

人との待ち合わせも
お互いの間の駅ではなく
なるべく相手の最寄り駅近くにしました。

自分が体調悪い時も
友達との予定に穴をあけるのが申し訳なく
断ることが出来ませんでした。
断ろうとすると罪悪感で
押しつぶされる気持ちになります。

自分の例のように
心の境界線を引けないことは
様々な問題を引き起こします。

  • 断りたいことに対して「NO」と言えない

  • いい子、いい人を演じてしまう

  • 他人の問題を自分が解決しようとする

  • 相手の為と思い、つい世話を焼いてしまう

  • 相手の気持ちを推察する

  • 自分の気持ちを察してほしいと思う

  • 相手の都合を考えずに長話してしまう

  • 忙しい時でも、相手から求められたら断れない

  • 他人が怒られているのを見ると自分のことのように感じる

  • 繰り返しDVやモラハラなどの被害に合ってしまう

  • 不倫などの辛い恋をしてしまう

  • 相手の言いなりになってしまう

  • 自分の価値観を押し付けてしまう

  • 友達や恋人と対等でない関係を維持してしまう

  • 部下や後輩に仕事を任せることができない

  • 親の期待に応えなければと思いながら生きている

  • 子供に自分の理想や価値観を押し付ける

  • 人がやるべきことを肩代わりする

心の境界線ってなに?

土地が領土や敷地で区切られているように
私たちの心にも入ってほしくないラインがあります。
そのラインを心の境界線といいます。

境界線には以下のようなものがあります。
イメージしやすいように
境界線が侵される例を何個かあげます。

身体の境界線
急に人から触られる
人からじろじろ見られる
モノの境界線
自分が好きで買った洋服を
親に「みっともない」と非難される
人から携帯を勝手に見られる
空間の境界線
勝手に自分の部屋に入ってくる
時間の境界線
興味がない会話に付き合わされる
残業を強要され続ける
思考の境界線
「お前の考えはおかしい」と否定される
「~~すべき」という価値観を強要される
感情の境界線
傷つくことがあったとき
「そんなことで泣くんじゃない」と言われる
責任の境界線
他人のミスを自分に押し付けられる

心の境界線を引くということ

心の境界線を引くことは、
自分と他人との適切なラインを引くということ。

このラインを引くことは
自分を守ることに繋がります。

「境界線」をつくる
私とあなたは別の人間。
別の感情、別の身体。別の人生がある。
そしてどちらも、かけがえのない価値がある。

境界がきちんとしていると、
自分は安全で心地良いと感じる。
自分を大切にしていること、
周囲の人が尊重してくれることを感じる。

境界が混乱していると、
自分が不快な思いをしていること
に気付かないだけでなく、
他人の境界を侵している
ことにも気づきにくい。
「境界線」は自由に変えられるもので、
線引きのペンは自分の手にある。

「アダルト・チャイルドが人生を変えていく本」から引用

人から頼まれること
全てを引き受けることは
良いことではありません。

学校の掃除を友達からお願いされた時
きちんと断ることが出来れば
自分がその作業を引き受けなくて済みます。
その作業をする疲労もなくなります。
押し付けられたことによる
嫌な気持ちも感じる必要がないです。

毎回人からの要求を
引き受けるようになっている場合は
「あいつは断らないから何頼んでもいいや」と
人からいいように利用されてしまいます。

境界線を引くことは
自分にとって良くない交友関係も
見抜く力を身に着けることができます。

時には断らず引き受けることもありです。
境界線はその時その時で引き直しが出来ます。
友達がどうしてもその日は
掃除できないこともあるでしょう。
(大事なデートが控えてるとか)

普段は断るけど、そういう時引き受けてあげると
友達は自分に対して感謝の意を示してくれます。
また、自分もそういった状況の時に
掃除を代わってほしいと頼みやすくなります。

境界線を引くことは
こういった持ちつ持たれつな
対等な関係も築くことが出来ます。

また、境界線を引くことは
自分を守るだけではなく、
他人を尊重することにもつながります。

〇他人の問題を自分の問題にしない
〇他人を責任を自分の責任にしない
〇他人がやるべきことを自分がやらない

ということが大事です。

自分の例で相手の境界線を
無意識に侵略している例をあげます。

自分は他人が機嫌が悪そうな顔や
つまらなそうな顔をしていると
「自分が何かしてしまったのでは?」
と推察し、その人を機嫌よくしようと
気を配って躍起になることをしていました。

しかし、これはやりすぎです。
その人の心の境界線を侵略した行為です。
その人にはその人の感情があります。
相手の心の境界線の中まで忍び込み、
自分が相手の心をコントロールしようと
どうにかしようとしているのです。

この顔色を伺う一連の行動は
自分が怒られているかもしれない
という恐れからきており
その人が何で怒っているかを
適切に考えることが出来ていない為
その人を尊重できていないことになります。

また、適切なラインを引いていないせいで
人間関係の優先順位も崩れてしまいます。

仕事関係の人よりも友達
友達よりもパートナーを
(パートナーよりもまず自分を)
大事にすると人間関係を
健全に維持できるのですが
この順位通りに自分のエネルギーを
使えなくなってしまします。

自分のことを大事にしてくれる人の
望みは断りやすいので、
つい断ってしまいますが
自分を蔑ろにする人の望みは
聞いてあげるということにもつながります。

自分を大切にしてくれる人以上に
そうでない人を大事にするという
逆転する事態にもなります。
これがずっと続いてしまうと
自分を大事にしてくれる人が
離れていってしまいます。

境界線がうまく引けなくなった原因

境界線がうまく引けない原因は
恐らく育ってきた環境にあります。
マルトリートメントによって
境界線を今まで踏みにじられてきたのです。

自分は小学生の時、父親から
身体的虐待、心理的虐待を受けていました。
自分は親に嫌なことをされても
それを「嫌だ、不快だ、やめてほしい」と
断れる環境にいなかったため、
自分の安全な場所は度々侵されていました。
自分の感情を抑え、親に迎合することが
自分を保つ唯一の道でした。

また、父親は機嫌が悪いと
「お前が~~だから」と
自分に機嫌が悪いことを押し付けてました。
自分は人の機嫌が悪いことを
自分が悪いことのようにとらえ
常に人の顔色を伺うような習慣を
身に着けてしまいました。

こういった環境から学んだ
ルールは知らず知らずのうちに
家庭外の日常でも対人関係において
適用されていきました。

身体的虐待、性的虐待は
言わずもがなですが
心理的虐待を受けた場合でも
境界線を保つことが難しくなります。

心理的虐待の特徴
自分の感情を否定される
頻繁に怒鳴られる
自分の感じ方が間違っていると言われる
適切な期待をされない
自分の意見を持たせてもらえない
馬鹿にされる

『心の境界線 穏やかな自己主張で生きるトレーニング』から引用
ネドラ・グローバー・タワブ著

親にとっていい子でいる為に、
自分を抑圧していませんでしたか?
自分の意見を自由に言えましたか?
親から認めてもらい
受け入れられた思いを感じましたか?

自分を押し殺して今まで頑張って
生きてきたんじゃないでしょうか。

境界線を維持するにはまず
自分の気持ちを把握することが大事です。
自分が嫌だという感覚がなければ
他人から侵害された時に
それを拒めなくなってしまいます。

非主張的なコミュニケーション

境界線がうまく引けない人は
自分を蔑ろにする傾向があります。
自分の気持ちや考えや意見を表現しなかったり
あいまいな言動をすることがあります。

少しわかりやすいように例をあげます。

パートナーが何も家事をしてくれない
という状況があったとします。
非主張的な人は
文句を直接的に言わず「はあ…」と
ため息を吐き、我慢しながら家事をして
パートナーに家事をしてほしいことを
感づいてほしいと願うかもしれません。

こういった非主張的な言動は
自分を抑えて、相手を優先してしまう為
相手に自分の思いを理解してもらえず
時には無視されてしまいます。

非主張的な言動をした後は
「自分はやっぱりだめだ」といった劣等感や
「どうせ言ってもわかってもらえない」という
卑屈な気持ちがつきまとうこともあります。

また、相手に対しては
「自分は譲ってあげた」という
恩着せがましい気持ちを持ったり
「人の気持ちも知らないで」と
わかってもらえなかった傷つきにより
恨めしい気持ちを持つこともあります。
また、「思いやりがない」とか
「鈍感な人だ」といった軽蔑な気持ちを
相手に持つことももあります。
こういったネガティブな気持ちは
表に出てこず、知らず知らずのうちに
自分の潜在意識の中に「怒り」として
ため込まれることもあります。

また、譲られた相手もそれはそれで困ります。
「自分に同意してくれた」と思っていたら
勝手に恨まれていたなんて
たまったものではありません。

非主張的コミュニケーションを取ってしまうのは
人との衝突を避けたい
自分が嫌われなくない気持ちが強すぎる
といった恐れがあります。

境界線を引くためのヒント

自分の領域を自覚し、ネガティブな感情に気付く

自分の土地がどこからどこまでか
自分で認識できなければ、
壁をつくることは出来ません。
まずはここに入られたらNGという
線引きをきちんとする必要があります。

どうやって線引きすればいいのか
わからない場合
人から何かをお願いされたり
何かをされたときに
ネガティブな感情が起こらないかを
確認してみてください。

境界線を侵されると
モヤモヤしたり、
ざわざわしたり、
気分が重たくなったり、
怒りを感じたり、
悲しくなったりします。

自分の入られて嫌な領域を
まずは認識しましょう。

境界線を引く恐れや罪悪感を認める

境界線を引けない人は
自分が悪いのでは?という
罪悪感を強く持っています。
人に何かをしてあげることで
その罪悪感を消そうと
無意識のうちに振舞っています。

罪悪感の根底には
人から嫌われたくない、嫌われたら
自分の存在価値が無いと思ってしまう
という見捨てられ不安を感じています。
それは親との関係で常にそう思わされて
今まで生きてきたのです。

境界線を引くということは
自分の嫌だと思うことを主張し
相手にNoを突きつけることです。
それは相手と衝突することを意味します。

人から嫌われるのが怖いと思っている人は
相手の為に何かしてあげないことを
申し訳なく思うかもしれません。
「自分勝手じゃないかな?」
「冷たい人間だと思われないかな?」
といった不安も出てくるかと思います。

今まで明確な境界線を引かなかった人が
境界線を引くことが怖いと思うのは
必然であり当然の感情です。
まずはこれを認めてあげましょう。

ただ、自分が相手を尊重するのと同じで
自分も相手から尊重されていいのです。

アサーションという自己表現を使う

アサーションとは
相手もOK、自分もOKという
相手も自分も大切にする会話術です。
自分の考えや気持ちを素直に
相手に伝え、相手にも同じように
発言することを奨励します。

先ほどの例で
パートナーが家事をしてくれない
という例がありました。

この例でアサーティブな
コミュニケーション方法の例をあげます。

「私今日仕事ですごく疲れてるんだよね。
あなたも仕事して疲れてるのはわかるんだけど
今日、晩御飯作るの手伝ってくれないかな?」

のような会話術がアサーションです。

ここではポイントが三つあります。
「I(私)メッセージ」
「相手への配慮」
「具体性」です。

相手に対して批判的に
言わないことが大事です。

「あなたは仕事が終わると
いつもゲームばかりしてるよね。」
のように相手を責めるのではなく

「(相手への配慮)
ゲームが楽しいのはわかるよ。
(Iメッセージ)
だけど、あなたがずっと
ゲームばかりしていると
せっかく一緒にいるのに
私は独りぼっちのように
感じて悲しくなる。
(具体性)
だから、ゲームは10時になったら
やめてくれないかな?」
のように伝えるのがアサーションです。

アサーションは人を自分の意のままに
相手を操るテクニックではありません。
それは相手を大事にするという
観点が抜けています。

お互い別々の人間なのだから
別の気持ちや考えを持って当然で
意見の衝突があるのが普通です。

アサーションはお互いが歩み寄り
自分も相手も大事にして
お互いの折衷案を見つける
コミュニケーション方法です。

アサーションしたくない時はそれで構いません。
その権利も自分の手にあります。

スモールステップで境界線を引く

いきなり境界線を引くことは
今までやってこなかった人にとって
とても難しいものです。

なので、自分の出来る範囲から
実践していきましょう。

それはレストランで頼んだメニューと
違ったメニューが運ばれてきた時に
「頼んだのと違うのが運ばれてきた。
だから取り替えてほしい」
と主張する程度のことかもしれません。

上手く境界線を引くことが
出来なくても、それはそれでOKです。
最初は自分の意見を伝えることで
ネガティブな感情が
湧き上がってくるものです。

もし上手く境界線を引くが出来たら
上手く伝えられた自分を
目一杯ほめてあげましょう。
そして、境界線を引けたことによる
メリットをかみしめましょう。

自分の心地いい感覚が段々と
戻ってくるかもしれません。
思ったより自分が主張しても
周りに受け入れてもらえることを
感じるかもしれません。

そのメリットを感じることが出来れば
次も境界線を引くことにチャレンジしようと
段々思えてくると思います。

まとめ

境界線を引く作業というのは
相手と自分の両方を大事にすることです。

境界線は相手によって変化するものです。
その境界線は引き直すことが出来ますし
境界線は自分で変えることができます。

境界線を引くことは
相手の望み全て断ることを意味しません。
自分がしてもいいかなと思える時に
出来る範囲ですればいいのです。

境界線を引くことで
お互いの違いを認め合い、
心地いい距離を保つことが
出来るようになります。

以上、長くなりましたが
ここまで読んでいただき
本当にありがとうございました。


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