「どうしてセクシャルマイノリティだと公表しようと思ったのですか?」
およそ8ヶ月にも及んだ僕の転職活動の中で一番印象に残っている質問は、
「どうしてセクシャルマイノリティだと公表しようと思ったのですか?」
という質問だった。
セクシャルマイノリティ当事者を否定する意味を含んだネガティブなものではなく、未だ理解されにくい状況がある世の中で顔出しをしていない、ペンネームとはいえWEBメディアやSNSでセクシャルマイノリティ当事者であると公表し文章で伝えていく活動をすることはとても勇気のいることだと思う、という文脈に続いてあった質問。
なにせ僕は活動の一環としてby themさんで書かせていただいているコラムの中から、いくつかの記事ををポートフォリオとして転職活動の中に盛り込んでいたので面接官は等しく僕がセクシャルマイノリティであるとわかるようにしていた。他の企業の面接でも触れられることはあってもこんな風に嫌悪感も不快感も抱かないストレートな質問はこの面接だけだった。
僕はこの質問に、
「WEBでの活動に関しては、同じく当事者である若い世代にこうやって平凡に幸せに暮らせる未来もあることを伝えたいし、僕というどこにでもいるような人が当事者でだと伝えることで当事者を身近に感じて理解してもらえたらいいなと考えているからです。」
「また、職場では今まで異性愛者のように振る舞っていたことが嘘をついているようで辛かったので、今度の職場では明け透けにせずとも聞かれたらパートナーがいます、くらいは答えたいからです。」
と答えた。嘘はない。
特に前半は何度もnoteやSNSで表明してきた、僕の当事者として文章を書く際のスタンスだからとてもナチュラルに口にすることができた。
だけどこの質問をもらってから僕の中には、その前半の部分に「本当にそれだけだったろうか」という疑問が残った。
そしてその答えが少し前にやっと出た気がするので、それを残しておきたくてエディタを開いた。
きっかけは僕がnoteで愛読している書き手さんのひとり、描き子さんの投稿。
真面目に生きすぎてしまう人を主なターゲットにしている“本当は必要な「わがまま」のすすめ”という連載記事で、可愛らしいタッチの読みやすいマンガに柔らかな文章が添えられている。マガジンが500円買い切りで購入できるのでよかったら。オススメです。
もう無料公開の期間は終わってしまったけど、また無料公開中だった頃にパートナーである彼女にこの記事をオススメした。
彼女は真面目というか実直で誠実なところがあって(とても素敵なポイント)、特に仕事場では度々その真面目さから報われなかったりぞんざいに扱われてしまうことがある。そんな時、人間関係を何より重んじる彼女は言い返さなくても落ち込むし、言い返せても言い返してしまったことに落ち込んでしまう。
真面目なところも彼女の魅力のひとつとはいえ、苦労しているのを見るのはなかなか辛いので、この記事が彼女へのヒントや元気づけるなにかになればいいと思った。
LINEで共有して返ってきた第一声は「これ自分のことかな?」だった。
このひと言だけでも共有してよかったなと思ったのですが、続けて届いたメッセージに僕は目を奪われました。
それはこの言葉を見て、冒頭の自分が抱いていた疑問がすとんと腹落ちしたからで。
そうだ、僕は読んだ人にこんな風に思ってもらいたくて書いているんだ。
そんな風に、忘れたことなんかないつもりだった初心みたいなものがふっと目の前に現れた気がしたんです。
「すごく読んでよかった」
そんな風に締めくくられた彼女の心からの感想は、僕ではなく描き子さんへ向けられたもの。もちろんそうなんだけれど、描き子さんの記事と彼女のような関係性を僕は読み手と築きたいなと思ったんです。
自分だけじゃない。筆者だけじゃなく、この文章やマンガを必要としている人たちがたしかに存在するということが、どんな言葉よりも寄り添ってくれる明確な“事実”で。伝えたい筆者と、受け取って嬉しくなったり胸をなでおろす読み手。そんな関係性が改めて素敵だなと思いました。
誰かに影響を与えたいとか、教えを請うてほしいとかましてや崇めてほしいなんてものじゃなくて、ひとりの当事者の筆者として僕の体験や感じたことが誰かの「自分だけじゃなかったんだ」になったら嬉しい。
それが当事者以外に親しい隣人として「当事者って身近にいるのかもな」と思ってもらえたらもっといい。
もしかしたらもう築けているのかもしれない。もしもそうだったらこれからもそうでありたい。
それを気付かせてくれた出来事でした。
描き子さんの「本当は必要な「わがまま」のすすめ」マガジンはこちら。
よかったらぜひ。買い切りでお買い得です。
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