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小林賢太郎「うるう」について #私のイチオシ

「では、ふたり一組になってください」

小学校でよくあるこんな先生の言葉。この言葉に嫌な思い出がある方、もやもやしたものが心を過る方。僕はそんな人にこの作品を見てほしい。

 

なるべく本編自体のネタバレにはならないようにこの記事は下記進めていきますが、リンクの作品に関してはネタバレを含んでいます。もし4年後、またうるうが再演された際にこの作品を初観劇されたいと思っている方は、そこをご理解して読み進めていただきたいです。

 

小林賢太郎演劇作品『うるう』
作・演出・出演:小林賢太郎

演 奏:徳澤青弦

うるう年のうるう日のように、「余りの1」が世界のバランスをとることがある。人間もそう。世界でたったひとりの余った人間「うるうびと」。彼が少年と友達になれなかった本当の理由とは...。小林賢太郎が贈る、おかしくて、美しくて、少し悲しい、ある友情の物語。

そうだ。今日はちょうどうるう日ですね。この日にこの作品のことを書こうと思ったのは、それだけ僕がこの作品を好きだということだと思っていただけたら嬉しいです。

何から話したらいいだろう。小林賢太郎さんは元々ラーメンズというコンビでコントをされていました。知っている人も多いと思います。なんて言ったってカリスマだと、僕も思っているからです。

 

この作品は小林さんおひとりで演じられる「一人芝居」。

物語は、なにをしても「ひとつ余る」「ひとつ足りない」「足りたことがない」ひとりの男が主人公です。

男がひとりで住む森である少年と出会うことからこの物語はスタートします。ある日少年に「友達になりたい」と言われるも、彼は首を縦に振ることが出来ません。彼が友達になることが出来ない、本当の理由は。

 

こう言ってしまうとなんだか悲しいだけのお話に感じるかもしれませんがそうではありません。小林さんも、

「4年に一度の「閏年」にまつわる、世界でたったひとりだけ余った人の物語。でも、悲しい話じゃないから、ご安心を。」

と、コメントしてらっしゃるので、ご安心を。

 


2011年から2012年に初演、2015年から2016年に再演された演劇作品。2019年から2020年にかけて再演。今年で3回目の公演。

初演の時、卒業を控えた大学生で。あまりに感動して、当日券に並んで後日もう一度観劇した。2015-2016、2019-2020も縁があり観劇しています。

初演当時のふれ込みでは、「大人の児童文学」。

公演が始まる前に、小林さんは岩手の宮沢賢治記念館に足を運んでらっしゃって。観劇すると、本当にやさしく児童文学のような世界観なのに、スッと心に入ってくるというか、刺さる作品でして。

実はこの作品は小林さんの過去の一人舞台が元になっています。

ソロコント公演のPotsunenシリーズ第4弾、『 THE SPOT 』に収録されている「 うるうびと 」

こちらは全編見ることが出来ます。それどころか、小林さん、ラーメンズの作品のほとんどは公式YouTubeチャンネルから見ることが出来ます。

ほんとうに太っ腹。

「うるうびと」では、「うるう」における主人公の男が余る様子がわかると思います。

 

冒頭にも書きましたが。学校でひとり二組になる時、グループでなにかやる時、余ったり、足りなかったりで心にもやもやが立ち込めたことはありませんか。自分がこの世界に必要ないかのような、余り者であるかのような気持ちになったことはありませんか。ほの暗く、ひとりぼっちの心になってしまったことは。

僕はあります。

「うるうびと」「うるう」ではこれらをとてもコミカルに描いています。そういう思い出も、笑い話にできたらいいですよね。

余ったり、足りなくて惨めな思いを、悲しい思いをしたことがある人はうるう人の気持ちがわかるかもしれません。

そして、その惨めなところから掬い上げてくれた時の心の温かさも。

 

とはいえ、この公演はうるう年の前年の年末からうるう日にかけての公演。次まで待てないよ!という方もいるかと思います。

そんな人は、「うるう」の少年サイドから描いたお話「うるうのもり」を読んでいただきたい。

 

うるうのもり 小林 賢太郎 



子供から大人まで楽しめる心が温かくなる一冊です。ぜひ。

 

 

 

とはいえ、観劇したばかりなのでうるうへの気持ちが収まりません。

3度目のうるうを観劇して。

初演、2度目、3度目と観劇して。1度も同じ公演はなかったと思う。

初演から2度目、2度目から3度目と毎回必ずパワーアップする演出とギミックがとにかく素晴らしい。本当に美しい舞台作品なんです。

 

そして劇中の音楽を収めた「うるうの音」の発売も楽しみ。

 https://www.amazon.co.jp/dp/B084T8HXKY/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_DJGwEbA7KXE3M

4度目のうるう年にまたふたりに出会えますように。

 

 

 

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