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北欧デザイナーズ家具に触れてみた

いいソファーがあるから見てみない?という夫からのリクエストで出かけたファーニチャーショップ。
ノルウェーに来て以来、数か月かけていくつかの家具ショップを覗いてきたけれど、今回訪れたお店はちょっと違っていました。

身近な人の以外なこだわり

現在、家具が悲しいほどに足りない我が家。家具付きの家が多いと思って引越荷物に入れなかったのが失敗でした。現在の借家は家具なしです。ダイニングテーブルからベッド、ソファーまで、一通り必要になりました。

夫といえば、ファッションやブランドに無頓着(いつも全身ほぼユニクロ)だし、家をおしゃれに飾ったりきれいにする意識が低い(床には脱いだ服や靴下が…)。なので、カジュアル感的にも予算的にも我が家はIKEA一択だと疑っていませんでした。が、何度も足を運ぶのに、なかなか買うに至らず。

大きな都市ではないスタバンゲルですが、北欧の特徴なのか、家具ショップは充実しています。メジャーな家具店が5つ以上あるし、ショッピングモールには必ずどれかのショップが入っています。大型店舗も多く、ショップめぐりは時間も体力もかかりますが、夫は気にならない様子で足を運びます。

今まで気づくことがなかったし、意外で仕方ないのですが、夫は「家具は良いものが欲しい」というこだわりを持っているようです。昔から北欧家具への興味と少しの知識があったというのも驚き。
今回本場でたくさんの商品を見るうち、やはり良いものは違うと実感し、心の内で予算と優先順位のせめぎ合いが起こっていた模様。

彼の優先順位で、他を大きく引き離して上位にあるのが椅子とソファー。
なんでベットじゃないの?テーブルも大事じゃない?と私なんかは思うのですが、どこに価値観を置くかは人によって本当に違うものです。

デザイナーズ家具の存在感

夫が気に入ったというスタバンゲルにある家具ショップ Møbelgalleriet
私と子供たちはどんな店か知らないまま、ちょっと面倒くさいと思いつつ、言われるままについて行きました。

ショップの雰囲気

おしゃれで高級感がそこはかとなく漂う店内。
ゆとりをとった空間のなかに置かれる家具を見ていくなかで、「あれ、何かが違う」と気づきました。

木を素材にして、機能的に、シンプルでミニマルに作られた商品は他の家具ショップ同様に北欧らしいのですが、ひとつひとつに漂う存在感が大きい。商品、というより作品。家具というよりアート。

そこでようやく、ここは北欧デザイナーズ家具のセレクトショップなのだと気が付きました。デザイナーについても、ブランドについても、全く知識のない私でしたが、ひとつひとつが丁寧にこだわりを持って作られていることがわかります。

国王より勲章を受けたノルウェー人デザイナー、Hans Brattrud の椅子コレクション "Scandia Junior"

ノルウェーはもともと物価が高いのですが、それを差し引いても、家具としては結構なお値段。似たようなデザインの家具で比べるとIKEAの5倍から10倍はしそうです。

フィンランドの建築家・デザイナーAlvar Aalto デザインのコーヒーテーブル

家具選びは五感とカスタマイズの妙

こだわりが詰め込まれた家具ならば、体感しないともったいない。
私一人だと入りづらいショップだし、こんな機会はあまりないかも、とスイッチが入りました。

展示されている椅子、ソファーに、ひとつずつ座ってみます。
テーブルやラックをなでなでして、素材に触ります。
現代美術館にいる感覚で、作品を眺めます。
五感が刺激され、ちょっと贅沢な気分を味わいます。

北欧デザインを世界的に広めた立役者、デンマーク人デザイナーHans Jørgen Wegner によるダイニングチェア
同じくHans Jørgen Wegner のコレクション "PP225"
Fredrik A. Kayser によるラウンジチェア "Fluffy" の張地はノルウェー産シープスキン

高級家具の良さはすぐにわかるものとわからないものがあります。
椅子やソファーの座り心地はすぐに体感できます。でも、人間工学をとりいれたデザインの良さは長時間座ってみないとわからないし、熟練工の職人技は、何十年も使って違いがわかるもの。目に見えない価値を理解するのは簡単ではなさそうです。

100年以上の歴史を持つデンマーク老舗ブランド、アイラ―センのソファー

北欧家具の良いところは、見えにくい価値も大事にしているところと、ミニマルだから他のデザインと調和するところ。
ブランドが違うデザイナーズ家具が並んでいても、空間がうるさくならずに統一感さえ漂うのはさすが北欧家具という感じです。

家具をカスタマイズできるのも面白いところ。例えば、ソファーだったら、大きさや形状を1ピースごとに自由に選択できるし(コンピューターでシュミレーションできる)、カバーは素材・色のバリエーションが豊富で、選ぶのが難しいと感じるほど。カスタマイズされたオーダーを受けて職人さんの手が加わるので、納品までに約2か月かかるというのも無理はない。翌日には配達が届くIKEAとの大きな違いです。(どちらもそれぞれに良い点があるという意味で)

大量の生地のサンプルが並びます
色合いと肌触りの違いを感じるのも楽しい

100年使えるといわれるほど基礎が良いから何世代に渡って使えるし、カバーを新調すれば家や人が変わっても馴染ませることができる。
良いものを長く大切に使うという北欧の価値観と歴史を感じます。

北欧的価値観を効率化(大量機械生産、低価格化)したのがIKEAだと思うのですが、素材と熟練とデザインにこだわりぬいた、哲学を持つ家具が愛される価値観もしっかりと息づいているようです。

我が家に家具が揃うのはいつになることやら。
それまでは、今回見たような素敵な北欧家具を妄想で並べながら過ごそうと思います。

イギリス人デザイナーJasper Morrison のスツールつきリクライニングチェア
北欧っぽさあふれるサイドボード
様々なデザイナーズブランドを合わせてもこの統一感


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