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焦りを糧に熟成期間を経た、キャリアチェンジ編 〜 気づいたら「個人内多様性」を獲得していた自分が、今までのキャリアでやってきたこと<vol.14>

いろいろな仕事に関わるあまり、自分の仕事を一言で表すのにいつも苦労する私。前2回の新卒番外編(音楽バー通い&全国巡りの様子)から少し時間が空きましたが、再開です。新卒で入った会社を辞める件は少し触れましたが、その経緯をもう少し深掘りしてみます。またしばらく「日比谷のキャリアをひたすら時系列で紹介する」シリーズにお付き合いいただければと思います。


3年ほど前に公開された「ネット興亡記」シリーズ。1995年のインターネット登場から始まる、IT業界の文字通り「興亡」を記した良コンテンツでした。昨今は、川邊さんによる「私的私の履歴書」が人気ですねぇ。(まとめてくれた kiyohero、ありがとう)

私は99年に大学を卒業しNTTグループに入社したわけですが、私なりに新卒時代を過ごしている最中、世の中は「ビットバレー」を中心にITブームで賑わっていたわけです。「修行」と割り切って入社したものの、盛り上がる業界の様子を横目に、焦りを募らせていた数年間でありました。

ということで、その当時を振り返ってみたいと思います。


■入社時から考えていたキャリアチェンジ

新卒で入社したNTTソフトウェア(現・NTTテクノクロス)を、4年目で退職した私ですが、実はその1年くらい前から、ひっそりと次のステージを模索し始めていました。もともと3年勤めたら、他のベンチャーに移るなどして、本来目指すべき道へ進もうと考えていたからです。

まだまだネット黎明期ということもあり、ベンチャー華やかなりしこの時代(厳密にはアップダウンが激しい時代でもありましたが)。大学時代の仲間に、「どこか面白そうな会社ない?」と声をかけてまわれば、それなりに興味深い話に出くわすことができたのは幸運でした。

■「目先のやりがい」と「昔の仲間の活躍やIT業界の盛り上がり」の間で焦りが募る

NTTソフトウェアに入社したのは、大手で経験を積むためで、いわば修行期間のつもりであったことは前にも述べました。

ところが、やりがいのある案件が飛び交う現場だったこともあって、意外と仕事に没頭してしまい、一方で「あれれ、こんなはずじゃなかったのに」という自分の中の違和感は、日増しに大きくなっていました。焦りと言い換えてもいいでしょう。

なまじ居心地がいいのも考えもので、このままでは「修行」を満喫しているうちに時間ばかりが過ぎてしまいます。一方で、大学時代に一緒にビジネスをやっていた先輩や仲間たちは、それぞれ伸び盛りのIT産業の中心で「役員になった」とか「作ったサービスを売却した」「起業した」など活躍しています。

そうした仲間から、「ちょっと手伝ってくれない?」と声がかかる機会は多いものの、どっぷり身を投じる(つまり転職)気になれるハナシにはなかなか出会えません。だからといって、現状のままでいるわけには……という堂々巡りの日々。

当時仲良かった女性と関内のJazzライブハウスで話し込んでいた時に、「この先のキャリアどうするの?」と聞かれた時に明確に答えられず、ハッとして「このままじゃいかんな。」と思ったことを覚えております。

■大学院進学という選択肢もちらつき迷走

そんな状況だったからなのか、実はこの頃、あらためて大学院に進んで情報工学などを学び直すのもいいかもしれない、とも考えていました。初めて明かしますが、実際にある大学の試験も一度受けています(まったくの準備不足で落ちましたけどね)。今思えば、迷いの延長だったんだろうなぁ。

でも、大学院という進路を真剣に検討したことは、無駄ではありませんでした。結果的に、自分が本当にやりたいことを、もう一度考えるきっかけになったからです。

■本当に望んでいるキャリア形成に立ち返る

結局、自分が本当にやりたいのは勉強でも研究でもなく、実学であり、“世の中に直接働きかけたい”という、本来の思いに立ち返ることができた私。

目指していたのは、単にウェブの世界にかかわるだけではなく、自分たちで作り上げたサービスで、世の中の人々に「これ、凄い!」と思わせることでした。そのプロセスで、これまでのプロマネ経験は必ず生きるはず。

そうしたタイミングで出会ったのが、次の進路となるK社でした。これは大学時代の後輩たちが経営する、Webサービスを運営する会社で、正式にジョインが決定したところで私は会社に退職を申し出たわけです。

■「本当にやりたいこと」を確認するための熟成期間

周囲からすると、突然退職を申し出たように見えたかもしれません。しかしその実、胸中では1年ほど思考を巡らせ、考えを熟成させていた期間がありました。

これは、この時代に限らず、私にとっては必要なプロセスなようです。その“熟成期間”が外から見えないため、「どうして突然そんなことを?」と言われることが珍しくありません。たとえば、後にロックバーを始めた時もそうでしたし、独立した時もそうでした。しかし、たいていの行動は私にとって「突然」ではなく、アイデアの実現に向けて人の話を聞いてみたり、細かな点を想像してみたり、必要な見聞を広めたりといったプロセスを人知れず経て、自分の「本気度」を確認している期間があるのです。

自己効力感のメカニズムで言えば、時間をかけてじっくり4つのフラグを立てていく感じですねえ。当時はそこまで構造的に捉えてはいませんでしたが、感覚的には意識していた気がします。

<2社目に移る「変化」の臨むためのフラグ>
小さな成功体験:学生時代からのフリーランス経験、現職でのプロマネ経験
代理経験(ロールモデル):知人たちから話を聞く
周囲の声:友人たちからの誘い
情動:このまま続けることへの焦り

ちなみに、このタイミングでは、自ら起業するという選択肢はありませんでした。具体的な事業プランを持っていなかったためでもありますが、より自分らしく活躍できる場にありつければ、それでよかったということなのでしょう。

バンドにたとえるなら、ギターを弾けたりアレンジできるというスキルを発揮する場を欲していたのであって、自分のバンドを作るとか、デビューするとかいったことには、あまり興味を持てなかったんでしょうね。

かくして、私の社会人キャリアはネクストステージへと移ることになりました。


今回はここまで。次回は 2社目突入編をお届けする予定ですよ。

気づいたら「個人内多様性」を獲得していた自分が、今までのキャリアでやってきたこと
第1回:「誘われ力」を磨いたバンド時代編
第2回:「仕掛け人」として「連帯感作り」に目覚めた学園祭編
第3回:音楽が未知の世界へ飛び込む楽しさを教えてくれた
第4回:本格的に「デジタル」に目覚めた大学時代編
第5回:ベンチャービジネスとの出会い編
第6回:モラトリアム卒業編
第7回:バックパッカー編
第8回:新卒ゆるゆる時代と募る焦り編
第9回:複業で遭遇した大炎上編
第10回:自ら望んだ “火消し”チームで過ごした私の下積み時代編
第11回:生意気で衝突しまくっていた若手社員編
第12回:新卒番外編①:ジャズバー通いに明け暮れた新人時代
第13回:新卒番外編②:暇さえあれば日本全国を巡る
第14回:焦りを糧に熟成期間を経た、キャリアチェンジ編
第15回:新天地編


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