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【今日の本】 『マローンおばさん』

あら、いらっしゃい。外は雪になりましたね。

ウイークデーに寄っていただけるなんて、うれしいです。

でも、お疲れみたい。

ちょっと一服、ほっこりして行かれませんか?

この本は、いかがでしょうか。

『マローンおばさん』              エリナー・ファージョン著 こぐま社

 雪が降る頃になると、いつも読みたくなる本です。1996年に初版が出版された本なので、新しい物ではありません。

 白黒の挿絵、本文あわせて34ページ、あとがきと、英語の原文もあわせても、47ページの小さな本です。大きさも、縦17cm、横12cm、厚さも1cmあるかないか。「子どもの本かしら?」と思われるかもしれませんが、どちらかというと大人の方向けにおすすめしています。

 〜*〜 ここからネタバレ *〜*〜*〜

 森の奥に、ひとりぼっちで暮らしているマローンおばさん。

 貧しく、知り合いもおらず、話し相手もいない。村の人は、だれも彼女を相手にする人はいませんでした。

 ある冬の月曜日、お腹をすかせたすずめが、おばさんの家の窓をたたきます。

 「こんなによごれて つかれきって! 
  あんたの居場所くらい ここにはあるよ」

 そういって、おばさんはスズメを家に入れるのです。

 次の日。スズメと一緒に食事を取っていると、お腹をすかせたネコが戸をひっかきます。

 おばさんは、スズメと同じように ネコを家に招き入れるのです。

 水曜日。母さんぎつねが、6匹の子キツネをつれて、戸の前に座っていました。

 おばさんは、彼らもみんな、家に招き入れ、わずかな食べ物を分けてやります。

 木曜日は、迷った末にけがを負い、弱り切ったロバが、

 金曜日には、一頭の熊が、おばさんの家を訪ねてきます。

どの動物にも、わずかでも、おばさんは 食べ物を分けてやった。
「神さまは、ご存知さ、どんな動物たちだって、みんな 生きていかなきゃいけないってことを。」

 おばさんは、次々にやってくる者たちに、何もかも分け与えていきます。

土曜日になり、動物たちがいくら呼んでも、おばさんは起きてきません。

 眠り続けるおばさんをロバが背負って、動物たちは天国を目指します。

 動物たちは、聖ペテロにむかって叫ぶのです。

「ご存じないのですか、(神さま、お恵みを!)

わたしたちの母さん、マローンおばさんを。

 貧しくて、なにも持ってはいなかったけれど、

 広く大きな心で わたしたちに

 居場所を与えてくれました」

目を覚ましたマローンおばさんに、聖ペテロは言うのです。

「母よ、入って王座のそばへ おゆきなさい。

 あなたの居場所が

 ここにはありますよ、マローンおばさん」

〜*〜*〜*〜*〜*〜

エドワード・アーティゾー二さんによるモノトーンの挿絵とともに、阿部公子さん、茨木啓子さんによる美しい日本語も、心に染み入ります。

12月は、師走。

 「忙しい」という漢字は「心」と「亡くす」という字の組み合わせですが、誰かの心の居場所を、私はちゃんとつくってあげているかしら。

 この場所が、みなさんにとっての「居場所」になってくれていれば、とても嬉しいです。

 いつも通りの年末にはならなそうですが、

今年は小さなことでも、

「誰かのために」何かをしてあげる。

そんな12月にしたいと思っています。


 もう、お帰りですか? お気をつけて。

 今日の本が お気に召していただけたら嬉しいです。

 また、いらしてくださいね。





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