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【読書】今週の本棚 6月19日号

図書館司書兼現役教師の那珂です。

久しぶりに、読了本の話でも。

今週末で、4冊 読了しました。

気に入った順に書いていこうと思います。


1 『15秒のターン』 紅玉いづき著 メディアワークス文庫


 本を読むときは、なるべく「手当り次第」読むようにしています。新刊の場所は、大人もヤングアダルトの棚も見てから選びます。

 今は司書の仕事はしていませんが、いつでもその仕事ができるようにしておきたいので、色々なジャンルの本を読むようにしています。

『15秒のターン』は、表題作の他に、5つの短編が1冊にまとまっています。『ミミズクと夜の王』で15年前に電撃小説対象を受賞した作者が、「15」をキーワードにした物語を綴ったものです。

 私にとって初めての紅玉いづき作品でしたが、素直に良かった。 普通の学生が、都会じゃない場所で、普通の日常を送りながら、その時間の中にある「特別」な時間を生きる。

 今、その時間を生きている人も、かつて、その時間を生きていた人も、物語のどこかで、共感できる何かを見つけることができます。

 描き下ろしの「この列車は楽園ゆき」は、コロナ禍の時代背景も上手に踏まえながら、制服の時代をやり過ごした主人公たちの「今」を切り取ったラストになっています。

 こういうのって、スキだな。

 大人世代には、すんなり分かりかねる題材もあるにはあるけれど(ソシャゲ課金の女二人)、そのなかでも「普遍なもの」をちゃんと感じさせる、伝えてくる短編は、秀逸だと思います。

 これからどんな方向へ変化していくのか、楽しみな作家さんです。


2 『氷の城』 タリアイ・ヴェーソス著 国書刊行会

 

 この作品時代は、1963年に発表されていますが、2022年に、タリアイ・ヴェーソス・コレクションの1巻目として刊行されています。

 20世紀ノルウェー文学を代表する作家・詩人だそうで、私は今回初めて読みました。ノーベル文学賞にも度々ノミネートされている国民的作家で、1970年に逝去しています。現在になって、世界的に再評価され、ペンギン・クラッシックにも作品が収められるようになったとか。

 文章自体は、児童文学か?と思わせるほど、スッキリとわかりやすいものでした。

 でも、1回読んだだけでは、「よくわからない」のです。

 2人の少女が主人公なのですが、その一方が物語の早々で、行方不明になってしまいます。

 残された少女が、冬を越し、春を迎えるのですが、単に「友達の女の子が事故で行方不明になった」という事実だけなのだろうか?と思ってしまうのです。

 ウラのウラまで考えてしまうと、空恐ろしい話なのだけれど、その意味は、読み手に委ねられている気がします。

 書評やレビューが少ないので、どんな読み方が正解なのかがよくわからないのですが、作者が巧妙に仕掛けた「トリック」を読み解くために、何度も読み返すことができる1冊だと思います。

 この他にも、『鳥』『風』が編まれているので、ぜひ機会があれば読んでみたい作品です。


3 『森をひらいて』  雛倉さりえ著  新潮社

 

 この作家さんも、初めて読みました。16歳で、R-18文学賞の最終候補に選ばれた方だそうです。

 最後まで読んでみましたが、

 うーん。ワタシの好みではなかったかも・・・・

 戦争とか、疎開とか、女子校とか・・・・

 官能的で耽美な世界観 = 「百合」の世界ですかね。

 後半、そこに 支配する男、従順な女 の役割に抗おうとする少女たちが描かれていきます。

 図書館、司書の女性教師、そして 森。

 なんだかてんこ盛りすぎて、消化不良。

 気になる方は、読んでみてください。


4 『幸せのままで、死んでくれ』  清志まれ著  文藝春秋 

 

 いきものがかりの水野さん執筆の 初めての小説。

 エッセイやなんかを連載されているのは、度々読んだことがありましたが、ペンネームを変えて小説を書いていたのですね。 話題にもなっていましたが、ちょっと前に流行した「メディアミックス」的な宣伝手法をとっているみたいです。

 「HIROBA」という創作プロジェクトを立ち上げ、そちらから、この小説に合わせた楽曲も発表しています。


 最後まで読みましたが、ちょっと読み応えがあったかな、というのはラスト7章〜8章、エピローグですかね。

 ロックバンドのメンバーである自分の眼を通して描かれる、売れっ子男性アナウンサーの人生。

 きっと、水野さん自身の体験や、見聞きしたテレビ業界のことを使って書いているんだろうな、と思いました。

 でも、「ありがちな展開」でもあって、最後まで意外性はない。

 うーん、そうなんだ・・・・

 もう一回読むか?と言われたら、読まないだろうなあ

 ファンの方、芸能界のゴシップがスキな方は、ご一読ください。


 読書は、色々な感じ方がありますので、どこかで心に引っかかるものがあれば、読んでみていただけたら幸いです。

 私が「うーん・・・・・」と悩んでしまった 2冊についても、気に入っていただける方がいるかもしれません。

 来週は、新書・ノンフィクション、歌集を読む予定です。

 良かったら、また 遊びに来てくださいね。



 






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