読書メモ:村上春樹「職業としての小説家」
村上春樹さんの「職業としての小説家」という本を読みました。
村上春樹さんが、どのようにして小説を書いているかを記された本です。おそらく、小説家を目指す人、物語を作ろうとする人に向けて書かれた内容なのですが、絵を描くことを主としている私の心に響く、大切なことが書かれていました。
この本を読んだのはちょうど、絵を描くのが少し楽しくないような気がして、絵から少し離れようと思った時に手に取った本。その本が逆に、絵を描くことの基本を思い出させてくれました。これからも、絵に関して何かを見失いそうになったときに、つど読み返したいことばかり。その貴重な言葉たちを忘れたくなくて、ひたすらメモをとりました。
自分の覚書きとして思い出せるように以下に引用しつつ、感想と交えてご紹介させてください。これらの言葉はきっと、全ての創作活動に通じる言葉なのだと思います。文字が多いので、春のイラストをはさみつつ、のんびり書きます。
書いているときの気持ち
小説は、頭で論理を組み合わせて作られていく物だと思っていたのに、村上さんは、音楽を演奏するように感覚的に作られていること。そして、ワクワクしながら、"自分が楽しい、気持ちがよい"ことを源泉にして作られているとを知りました。それは私にとって、驚きであると共に自分が絵を描いているときと似ているように思えて、嬉しくなりました。
オリジナリティーとは
そして、絵を描く人なら誰しも一度は悩むかもしれない、自分のオリジナルって何だろうということ。どこに向かっていくのだろうということ。それについても小説の目線から書かれていました。
”自由な心持ちを、その制約を持たない喜びを、多くの人々にできるだけ生のまま伝えたいという自然な欲求、衝動のもたらす結果的なかたち”
このあたりの章を読んだ頃には、これはほとんど絵について書いているのではないかと思うほど、背中を押された気持ちになっていました。誰かと比べることなく、自分が絵を描き始めたころの純粋で自由な気持ちを思いだしました。
何を書くか
次は、書く内容についての章です。
この文章を読んだとき、あ、これは絵でいうところのスケッチのことだな、と勝手に解釈しました。ひとつの作品を作るにあたっては、やはり日々の小さな発見を観察し、ストックしていくことが大切なんだなと改めて思う。まさか、小説を書く内容についての言葉が、絵にも通じるとは、本当にすごいと思いました。きっと真理みたいなものなのかな。
作品について
そして、出来上がった作品については、
うんうん。そうですよね。上手くかけていなくても、誰かに批判されたとしても、恥ずべきことではないですよね。人はいつまでたっても、成長の途中なのだから。その時点の自分で最大限楽しんで、気持ちよく、描き切ることが何より大切なのですよね。
作品を作るうえで大切にしていること
村上さんという作家を作り上げた秘密は、まだまだ語られていきます。
いつまでも、そういう新鮮な気持ちと環境で作品づくりができる環境を、時間をかけて作っていくことが大切なのですね。一朝一夕にはできないものなんだ。そして、その環境というのは、自分の体を強くするということも含まれていました。
”フィジカルな力とスピリチュアルな力は、二つの車の両輪。” まさに、自分自身がスピリチュアルな方、つまり精神的な部分に重心が傾きすぎて体調を崩し、痛い思いをしたことがあったので身に染みる言葉。長く作品を作り続ける人生を送るために、魂のいれもの、つまり体をしっかり作っていくということの大切さを改めて学ぶ。
挑み続けること
そして最後は、新しいことに挑戦し続けることの大切さについて。
進み続けること、変化し続けることが、楽しみ続けることなんだな。
これらの内容は、もしかしたら創作をする上で当たり前のことかもしれませんが、ものを書くことを本職とされている作家さんが書かれた創作についての本、ということにとても意味があり、全ての言葉が心に響きました。村上春樹さんが、自らこのような"小説を書く"ことを語られることがあるとは思っていなかったので、すごく貴重に思え、ゆっくりゆっくり読みました。
これからも頑張ろう、最後はそう思わせてくれる、春の読書でした。
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