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「七草」前沢リカさん、5月7日の答。


―気配のお持ち帰り―


季節の野菜と、豆や干瓢、高野豆腐といった乾物が主役の和食「七草」。この店を営んで17年。2度の閉店危機を泣きながら乗り越えてきた店主、前沢リカさんは強くなった。「振り返ったとき、何のせいにもしたくない」から、どんな選択でも自分の意志。そういう覚悟で歩いていく。

お客さんの気持ちを想像して

うちでキャンセルが出始めたのは、小池さんの会見(3月25日、週末や夜間の外出自粛要請)から。それ以前はむしろ週末がすごく忙しくて、世のなかは景気がいいの?と思ったくらい。
今振り返れば遠出を控える代わりに「ごはんでも行こうか」という需要だったのかもしれませんね。

私は3姉妹の末っ子で、一番上の姉がイギリスに住んでいるんです。うちはしょっちゅうフェイスタイムで話をする家族で、イギリスが早くから厳しい状況になっていたのを知っていました。
日本ではまだ危機感が薄かった頃から、耳元で「今に大変なことになるよ」とあおられて、これは本当にくるぞ、と予想はできていたんです。

ただ、キャンセルが増えるようになってもなお、毎日1組は予約が残っている状態。気にしている人は変更されるんですけど、連絡のない方は、お店で見ていてもあまり気にしていない様子なんですね。マスクを取ったまま、もう3時間以上お話ししているけど大丈夫なのかな?って、ちょっとハラハラしちゃうくらい。

お客さん側の気持ちを、ずっと想像していました。この状況でも来てくださる、その気持ちを。すると、ある常連さんが「ここなら平気って思った」と。

「七草」は店内の造りに余裕があって、フロアが二つに分かれています。一つはカウンターとキッチン、もう一つがテーブル席。
テーブルの方なら私たちとも距離があるし、天井も高い。木造で通気性がいいうえ、窓を開ければ風も通るし、お店が清潔。
「むやみな外出は駄目だけど、3密に当たらないここなら大丈夫」という線引きがあったようです。

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