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「オストゥ」宮根正人さん、4月24日の答。

―要請通り―

代々木公園のイタリア料理店「オストゥ」は、桜が眺められる春と、ピエモンテの名産・白トリュフシーズンの秋が賑わいの最高潮。しかし2020年の3月、ちょうど桜の満開時季に、宮根正人シェフはキャンセルの電話を自らかけた。
1日限りの臨時休業、そして再開。いいんだろうか?と葛藤を抱える一方で、奇しくも「レストラン」の意味――語源は「回復させる」――を感じている。

考え過ぎて、逆に平常心

今日、店の前の公園も閉鎖になりました。
うちはレストランを開けながらテイクアウトもしていて、公園に来るお客さんも買ってくれていたけど、まあ仕方がないです。
それより、最近公園が混んでいて、これ大丈夫かな?って見てたんですよ。

僕、いろいろ考え過ぎて今、逆に平常心なんです。
1月から、中国の武漢で変な肺炎があるって嫌な感じはしていて、そのうちイタリアへ移りましたよね。(※1月30日、ローマで中国人観光客の感染が確認。翌日、イタリア政府が非常事態宣言発令)

注意していた
んです。というのも3月15日から数日間、僕が修業したイタリア・ピエモンテ州「ロカンダ・ネル・ボルゴ・アンティーコ」のシェフ、マッシモ(・カミーア氏)を日本に招いて、イベントをする予定だったから。
「オストゥ」は2020年で13周年になりますが、初めて師匠が来てくれる。マッシモもすごく楽しみにしていたんです。

2月上旬にマッシモから「日本には行けそうにないよ」と連絡があって、それからあっという間にイタリアで感染爆発が起きた。
彼は塞ぎ込んでいて、もう、かける言葉もなかったです。本来はお金の話なんてする人じゃないのに、彼の口から初めて経営の不安も聞きました。

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