「葡呑」中湊 茂さん、5月19日の答。
―小さく営業―
「葡吞(ぶのん)」の厨房にはどこでもドアがある。そう噂されるくらい、いつの間にか地球のどこかに飛んでいる店主、中湊 茂さん。「時間もお金も、人に会うということ以外に遣う意味はない」を信条とする人が、どこでもドアを使えなくなった、今。
店が鳴っているような感覚
「葡呑」は本来〝密〟なんです。密集というよりも、熱量の濃密さというか。たとえば会社員のグループが楽しく吞むような早い時間から、飲食店やワインのインポーターなど食の玄人、海外のゲストが続々とやってくる深夜まで。
2階建ての全40席を、料理人の僕と、サービスのくま(熊坂智美さん)がたった2人で回している。
料理を作りまくって、ワインを注ぎ続けて、ゲストがどんどん盛り上がっていく。そういう、お店の持っているグルーヴ感、店が鳴っているような感覚を、自分でもよしとしてきました。
ゲストの半分は海外の人です。イベントで来日するシェフやワイン生産者、イベンターなどが滞在中に何度も来てくれたり。僕も海外からイベントのオファーをもらうことが多くて、そこでまたつながって、お互いに行き来するようになっていく。
だから「葡呑」はしょっちゅう臨時休業。1年の3分の1は海外を飛び回っていました。
それが、今年(2020年)は3月以降、海外の予定は全部キャンセルです。
本当なら、3月はシンガポールの『葡呑レボリューション』/4月はイタリアのワイン醸造家が主催するディナー企画/5月はスペイン・バルセロナのイベント/6月は10年以上参加しているイタリアの食の祭典『フェスタ・ア・ヴィーコ』。
7月と8月は東京オリンピックで来日する海外の人たちをこの店でお迎えして、9月にもフランスでイベントを……という予定でいたけど、もう年内は海外に行けないと思います。
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