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「レフェルヴェソンス」生江史伸さん、5月25日の答。

―社会活動―

自身のレストラン「レフェルヴェソンス」は2カ月間の完全休業。その間、生江史伸(なまえ しのぶ)シェフは署名活動、政治家への陳情、闘うための海外リサーチに草案作りと駆け回った。飲食店と、彼らが作る食文化を守るため。大きくてのんびりとした山が、しかし確かに動き始めた緊急事態宣言解除の夜。

飲食業は、もの言わぬ産業

そもそも僕はコロナ禍以前から、日本の食文化を守り、飲食業の社会的地位を認めてもらう活動をしていたんです。まずはそこから話しますね。

飲食業はずっと、もの言わぬ産業だったんです。日本の産業別賃金を比較すると、飲食業は非常に低い。社会的にもリスペクトされていないことは明らか。しかし「おもてなしの精神」を基にするホスピタリティ産業ゆえに、何も言わず、与え続けてきた。

自分たちが持っているものをギリギリまで出し切る、蓄えをしない慣習が根強くあるため、何かあった時に耐える体力がないんです。
すると突発的災害が起こった時、非常に脆弱。

だけど僕たちの産業がつくってきた食の文化は、素晴らしいものですよね?海外の観光客が日本を選ぶ理由としても「食」は常にトップクラス。無形文化遺産の和食もそうですし、東京はミシュランの星が世界一多い都市
国にとっても重要な財産であるはずです。

世界を見れば、デンマークをはじめ、タイ、韓国、アメリカ、ペルー……政府が主導して自国の食文化を守り、海外へ発信するプロジェクトを打ち出しています。

一方日本はというと、2017年にようやく改正された文化芸術基本法で「食」が「文化」として明記された段階
大きな一歩ですが、しかし国家予算も投じて文化保護の施策が行われ始めたにもかかわらず、食のプロが一人も関わっていないという現状もありました。
そのため機動的なプロジェクトを打ち出すことや、食の技術、伝統、人材などの活用、それらの知識や情報も不十分だった。

それで僕ら食の専門家が協力しようと。
まずは予算を編成する役人に食文化を知ってもらわないことには始まらないというわけで、元参議院議員の二之湯武史(にのゆたけし)さんが先頭に立って、料理人や職人など食のプロが集まる専門家会議のようなものをつくることになりました。

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