本とコーヒーと、時々ミルクティー

 久しぶりにコーヒーを飲んだ。職場にある、甘さ控えめのインスタントコーヒーだ。カフェインがククっと身体中を駆けめぐり懐かしい感じがした。

 知り合いからコーヒーを買った。ある方への支援込みのコーヒーなんだ。毎日欠かさず飲んでいるのに、今家に無くてそれでも買わないのは、その特別なコーヒーを待っているから。当たり前の習慣が誰かの支援に繋がるのってちょっと嬉しい。飲むたび知らない誰かを想う、心の潤いって感じかな。

 本を片手にコーヒーとはいかないので、ミルクティーを今日は飲もう。涼しさを増してきた夜には、ただのティーバックだけど、たっぷりの牛乳を入れてほのかに甘くした、温かいミルクティーがよく似合う。


 ▽ ▽ ▽


 最近、本屋さんに薦められて購入した本がある。自分では選ばないタイプのものばかり。それもまた、面白いね。

 【星の子】今村夏子さん著書。野間文芸新人賞受賞作品。【むらさきのスカートの女】で芥川賞を受賞された作家さんだ。

 芦田愛菜さんの主演で映画化、近々公開予定となっている。お父さん役が永瀬正敏さん、お母さん役が原田知世さん。宗教に入り込み過ぎたちょっと変わった両親と、周りの目が気にかかる年頃になった娘の、それでも揺るぎなく思い合っている家族のお話。

 家族の形は色々あって、この親子三人はまとまって幸せなんだけど、異質な文化(宗教)を理解出来ない主人公(ちひろ)の姉、叔父夫婦、クラスメートなどの視線や行動で、ちひろは葛藤、疲弊していくんだ。

 水の様なさらさらとした文章で、ついつい読まされてしまう、そんな本。ちょっとビターなカフェ・オ・レって感じかな


▽ ▽ ▽


 【美しい距離】山崎ナオコーラさん著書。こちらも初読み。【人のセックスを笑うな】でデビューされた作家さんだから何となく過激なのか?!と思っていたら全く違ってた。父親をガンで亡くされた過去を持つ彼女。その時感じた思いを、小説という別の話の中に描写した、切ない病院小説。

 パン屋を営む妻と夫の話。妻がガンになり入院するんだ。それでも馴染み客やこだわりの野菜を届けてくれる生産者さんと繋がって、仕事への情熱を絶やさないの。その姿は、生きるって社会と繋がる事だって感じた。

 夫の心理はまさに体験に基づく当事者の想いそのもの。ふわっとした文章に日常と夫婦の愛情が淡々と描かれ、あと味が良いレモンティーのようだ。


▽ ▽ ▽


 【コルシア書店の仲間たち】須賀敦子さん著書。これは、ずっしりと重いエッセイ。1950年代半ばのイタリアにコルシア・デイ・セルヴィ書店があった。新しい共同体としての生き方を追加した、ある意味アウトローな仲間達が集まる場所なんだ。そこに須賀敦子さんが留学を機に飛び込んで、迎え入れられ書店員のひとりと結婚しちゃうの。

 須賀敦子さんは昭和4年生まれ。当時の社会情勢は資本主義、社会主義、民族主義、共産主義入り乱れて混沌としていて、その中で彼女のような日本人がイタリアで生きてきた、それだけで興味が沸るように湧いてくるよ。

 エッセイの割にはさらっと読めない、豊潤な香りと苦味が癖になるエスプレッソみたいだ。ちょっとずつ味わいたい、そんな本。


▽ ▽ ▽


 明日は久しぶりに図書館へ行くんだ。色んなジャンルの本を選ぶひととき、楽しみでたまりません!カフェもいいけど、自宅でまったり本の山と過ごすのも悪くない。


 コーヒーを待ちながら、明日もミルクティー片手に、物語の旅に出よう。







 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?