テクノロジーの力で医療介護現場で繰り返されるミスを減らしたい

まずはこちらの動画をご覧ください。

自己紹介と企画の背景

私は在宅医療に携わる医師です。
医療・介護は人が行うものであり、些細なミスがつきものです。
ミスが起こりにくくなるよう仕組みを整備したり現場で工夫を行なったりしていますが、特に医療介護現場の場合は重大事故が命に関わることもありヒヤリ・ハット報告をするという習慣があります。

ヒヤリ・ハットとは、重大な災害や事故には至らないものの、直結してもおかしくない一歩手前の事例の認知をいう。文字通り、「突発的な事象やミスにヒヤリとしたり、ハッとしたりするもの」である。

Wikipediaより引用

大学病院のような大病院や薬局は、日本医療機能評価機構にヒヤリ・ハットを報告する義務がありますが、中小の病院やクリニックにはそういった仕組みがありません。

しかし、ヒヤリ・ハット報告が適切に行われ、この報告を業務改善に活かすことができれば、同じミスの繰り返しを防ぐことができます。

ヒヤリ・ハットの具体例

最近あった具体例を挙げます。

訪問診療の現場にも新型コロナウイルス感染拡大の大きな影響がありました。
その中で一つ課題になったのが診断に伴う検査です。
「抗原検査はすぐに結果が出るけれど正確性がイマイチ」「PCR検査は正確性が高いけど結果が出るのに時間がかかる」という課題がある中で、新しい機械を導入することにしました。

Abbott社のID NOW

こちらの機械を使うことで30分ほどの工程でPCR検査に近い遺伝子検査を行うことが可能です。
高い買い物となりますが、早く正確に結果を知りたいという現場のニーズに応えるために導入を決定しました。

導入後数日経って、ある看護師さんから「検査に2回失敗してしましました。試薬高いのにすいません」と報告を受けました。
その時は、「新しい機器だし仕方ないか」と聞き流していたのですが、ある週末に私自身がこの検査を行う機会がありました。
検査法については導入時に説明を受けていましたし、簡単なマニュアルもあるから手順通りにやれば大丈夫と思っていざやってみると、「検査結果エラー」。
はじめに手間取った部分があったからエラーになったのかな、と思ってもう一度やり直してみても「検査結果エラー」となってしまいました、、

そこで、この検査を何度もやったことがある看護師さん(検査失敗を報告してくれたのとは別の看護師さん)に検査結果エラーとなってしまったことを相談すると、「あ、あの押し込むところがうまくいかなかったんですね」との反応。

実は、私に報告があった看護師さんだけでなく過去に複数のスタッフが検査結果エラーを起こしており、その原因はある一つの工程にあることがわかりました。

この工程表の⑤にのっている部分が、私を含めた多くのスタッフが失敗したポイントです。
書いてはあるのですが、特にここに注意が必要とはわかりにくく失敗を繰り返していました。

そこで、私自身も失敗を経て、この点への注意を促す貼り紙を作りました。


これで、同じ失敗を繰り返す人がいなくなるのではないかと期待しています。

現状は紙の報告書で書く負担が大きく共有も困難

多くの現場で現在用いられているヒヤリ・ハット報告は、紙ベースで行われています。

当法人のヒヤリ・ハット報告書

このヒヤリ・ハット報告書を棚から取り出し手書きして上長に提出するというのが現在の流れですが、書く負担が大きいという課題があります。
これもあってか、上記の検査機器の件は、ヒヤリ・ハット報告がされていませんでした。

また、一度書かれた報告書はファイルに綴じ込まれるため、せっかく報告をしても共有がされにくいという課題もありました。
そこで、ヒヤリ・ハット報告をデジタル化することで、報告と共有が行いやすくなると考えました。

デジタル・ヒヤリ・ハット

紙ベースのヒヤリ・ハット報告をPCやスマートフォンのブラウザ上で簡単に入力できるようにしたものがこちらです。

デジタル・ヒヤリ・ハット

Google Formを使って作られており、項目は施設に合わせて簡単に改変できます。

報告されたものは回答欄から参照可能です。

Google form回答欄
内容はダミーです

共有のしやすさに関しては、もう少し検討が必要な部分だと思っています。
「事務」「看護師」「薬関係」などタブを作っておき、自分に関係するタブだけをみる仕組みや、「重要」とタブがついたものは全員がみるようにする仕様を考えています。

また、特に重要な報告書はLINEやLINE WORKSで送られてくるようにすると、より読む頻度を増やすことができ、読んだかどうかの確認もできると考えています。

フィードバックを受けて

企画を考え動画を作成したことでフィードバックを受けました。

  • 色やフォントに工夫が必要

  • クラウドファンディングのリンクを入れてはどうか

  • タブや時間の部分の説明をもう少し詳しく

  • ハインリッヒの法則が唐突に出てきてわかりにくい

といったものがあり、動画と記事に反映しました。

さらには、

  • 綺麗にまとまっていて、なんとなく流れるので動画の内容が残らない

という決定的とも言える指摘がありました。
また、動画の内容からは離れるのですが、ヒヤリ・ハット報告を行うことのモチベーションが報告者も責任者も持ちにくい
という、テーマ自体に関する課題も明確になりました。

これを受けて、ヒヤリ・ハット協会を作るということを考えました。
ここまで書いてきたように、ヒヤリ・ハット報告の活用はミスを減らし業務改善につながります。
このため、「ヒヤリ・ハット報告を活用していることは良い医療機関・介護施設の指標の一つとなる」と考えました。
実際、前述のように、大病院が受ける病院評価機構の評価項目の中にヒヤリ・ハット報告は含まれています。

そこで、ヒヤリ・ハット協会を作り、デジタルヒヤリハットを導入した医療機関や介護施設を明示することで、よい病院・施設だと利用者が判断する一つの指標にできるのではないかという考えです。

もう一つの大きなフィードバックは、「ヒヤリ・ハット報告がミスの報告であり報告することに抵抗を生じる」という点に関することです。
これも企画の中核に影響する部分なのですが、これに関するフィードバックとして、

  • ヒヤリ・ハットだけでなく、患者さんや利用者さんから感謝されたことや同僚に感謝する内容も報告すると良い

というものです。
これは目から鱗でした。
良かったことや嬉しかったことの報告と共有を行うことで、周囲が喜ぶ行動を学ぶことができます。
これは、患者さんや利用者さん、さらには職員さんの笑顔を増やすことにつながります。

ということで医療介護現場の笑顔を増やすプロジェクトとして新たな企画を考えたいと思います。

まだ公開前ですが、こちらがクラウドファンディングのページになります。
少しずつ改編を行い企画を詰めていこうと思いますので、ぜひ「お気に入り」の登録をお願いします。


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