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苦境で繰り返した思考と試行 ~追い詰められて見えてきたやらないといけないこと Part2~

前回までの振り返り

僕は、FiNCで法人事業の責任者になったものの顧客を見ずに社長を見て仕事をしていた。いつまでたっても売れるプロダクトにはならず、売れない原因を前社長や部下のせいにしていた。(前社長やメンバーのせいにしていた弱い事業責任者の話-それでも僕は前を向いている-)

会社も事業も追い詰められた僕は、自分たちの置かれている状況を改めて振り返った。そしてエンタープライズへの提案を進めていくこととした。(追い詰められて見えてきたやらないといけないこと Part 1)

そしてエンタープライズ向けに具体的に何をしていったのか、が今回の話。

キャッシュ確保とトライアルの実施

シリーズA前後の企業であれば、自己資金や調達した資金でPMFに向けて、競合調査、ユーザー業務体験や顧客インタビュー等を徹底的に実施しプロトタイプを作り試行錯誤をする。

しかし、バーンレートを踏まえたFiNCの財務状況では、この定石で進めていくのは無理だった。

そこで思考し導き出した進め方は、
①キャッシュを得ながらPMFに向かう
FiNC Technologies(以下、FiNC)の手札は、法人向けサービス「FiNC for BUSINESS」の既存の顧客基盤とプロダクト、そして自社でエンジニアを抱えていることだった。

この現状とDX推進や新型コロナウイルスで企業側に「変化」が求められていたことから、カスタマイズ、アドオンといった開発案件を受託することにした。

同時にPMFも引き続き目指し、顧客課題の仮説を立て、アーリーアダプターに対して、「FiNC for BUSINESS」をベースに、FiNCの仮説と顧客の要件が合致した場合に、顧客から顧客要求のシステム実装費用を頂戴する方法を取ることとした。


②有料のトライアルプランで実績をガンガン出していく
競合を分析した時に「アプリを使って成果」を導き出している企業は少なかった。FiNCも同様で法人向けのサービス導入実績はあっても、導入効果や導入後の効果測定が十分でなかった。

しかし企業側は、健康経営を進める上で「成果」や「投資対効果」について課題を感じていた。

その為、成果を出す必要があった。しかも財務状況を考慮すると早期に成果を出していく必要があった。そのため、短期的に成果を図ることができるトライアルプランを用意した。

かつては、正直、トライアルをすると自分たちの粗が出てしまうのではないかと不安で「トライアルプラン」を用意していなかった。


しかし、アプリ利用の継続率が高い体組成計や成果の出ているプログラム、そして、リッチなカスタマーサクセスチームによるフォローを実施することで「成果」を出し、本格導入に繋げることを目指した。


上記2つの試行の成果として、①で1件の大規模な受注、②でトライアルを5件これまで実施し、1件が大規模受注となっている。(トライアル後には、引き続き提案を進めている案件ももちろんあります)

顧客からの信頼こそが最大の武器
①②で大規模受注した顧客に共通しているのは、手前味噌で申し上げると顧客から「FiNC for BUSINESS」チームへの信頼を得ている点だ。

例1:
2018年よりFiNCウェルネスサーベイとその結果を用いた組織改善のワークショップを継続的にお付き合いはあるものの、アプリはすでに他社のものを利用している企業だった。

全国の各拠点を実際に訪問し、丸1日使ってワークショップを実施した。準備から当日の運営まで各拠点の従業員とご担当者様に立ち合い頂き、コミュニケーションを重ねていた。

その後、新型コロナウイルスの影響によるワークショップの中止をご連絡頂くとともに、新しい健康経営の実現をFiNCと進めていきたいとお申し出を頂いた。

b.
健康保険組合様を通じたコミュニケーションの中で信頼関係を築いてきた結果、新型コロナウイルス以後のデジタル・ウェルネス・パイロットプログラムの発注を頂いた。BMIの維持・改善という目的で実施し、参加者の96%の方々でその目的を達成した。

何よりお客様からは、「言われたことだけを"はい,はい"とやるのではなく、自分たちの持っている知見をぶつけて、一緒に健康経営をつくっていくパートナーという感覚で一緒にやれた」という評価を頂けたのは非常に嬉しい。しかも、この案件は、自分がほぼ関わらずメンバーだけで実行し、このような素晴らしいお客様からの評価と結果を得られたことが本当に嬉しかったし。何よりも誇らしかった。

この取り組みはPMFに向けて確かな手応えをつかむ結果だった。「健康診断結果をアプリを通じて改善できる」兆しだ。これが出来れば経営も人事担当者も本人(従業員)も嬉しい。

競合他社が「健康診断結果をアプリを通じて改善した」という話はまだ聞かない。孫子の「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり。」が頭をよぎる。あえて競合と同じ土俵で戦わず勝ち切る。ビジネスにルールなどないのだから、相手の弱点で勝負すればいい。

この機能に関しては、現在リニューアルをしており、今年中にはリリースされる予定です。

生物的組織にしていくこと

事業と並行して思考しなければならないのは、この状況下で成果を出し続ける組織創りをどのように進めるかだ。

ここは2015年より理想としていた組織がある。それは「生物的組織」だ。元サッカー日本代表監督の岡田監督は、2010 FIFAワールドカップでベスト16に導いた方ですが、その岡田元監督が2015年にFiNCの社内向けに講演をして下さった時にはじめてこのワードを聞いた。

「生物的組織」とは「一方的な命令でなくて、自ら気づいて責任を持って、判断していける組織」のこと。※詳細はこちらをご覧ください。

これを実現するには、
①メンバーに情報をオープンにすること
(前回の投稿でその必要性はお伝えした通り)
②役割と期待を明確にし、メンバーに任せること
が大事だ

リーダーが具体的な指示を出すということが当たり前になってしまうと「言われたことしかやらない」恐れがある。

リーダーが取るべき行動は、本人が自ら与えられた役割に沿って、オープンな情報をもとに、本人が自ら動けるような環境をつくること。また本人が動いたことに対してポジティブフィードバックをすること。

具体的には、定例や1on1、評価などがある。定例会では、私からの発表は極力排除し、メンバーの運営でメンバーが話をする。自分たちがやる必要がないと判断すればやらなくてもいい。1on1は、レビューではなく相手の想いや状況を「聞く」、相手を「認める」ことを意識している。

これだけでなく、組織のひずみを極限まで減らし、より迅速に動いていくには、
①VMV(ビジョン、ミッション、バリュー)
②ポリバレント

も重要だ。

①VMV
本人が自ら動けるようにする為には、企業やプロダクトが成し遂げたいことを明確にし、そこから逆算した場合にどう動くべきなのか、動く際は何を大事にして動くべきなのか、それをVMVを通じて伝えていく。ゴールが不明確な状態だとそのすり合わせからコミュニケーションコストが発生する。バリューでも会社として重要な指針が明示されていなければ、利己のために暗躍する人が増え、そこにコミュニケーションコストが発生する。

②ポリバレント
限られた人数で最大の効果をあげるには、「自分はこれが仕事なんで」というスタンスではなく、その場の状況に応じて役割を超えてでもフォローをしていくことをポジティブにとらえ行動に移してもらう必要がある。

自分以外の人が、どんな状況で、何を目指し、何をしているのか、解像度高く理解出来ていれば、役割を超えてフォローすることができる。

少なくとも自分から相手に業務を依頼する際に、相手が欲しい情報を提供できるようになる。

役割を超えてまでフォローするには、試行の機会をつくるしかない。とりあえずやってみて、失敗からまた学べばいい。本部内で役割を適宜変えていくことで経験を積んでもらう。そしてこのことが会社や本人にとってどういう意味合いをもたらすのか、をリーダーは丁寧に説明を繰り返ししていく。

思考と試行の機会をどれだけ作れるか。部下を信頼し、失敗をどれだけ許容できるか、リーダの資質が問われる。

思考と試行のスピードをどれだけ早くできるのか。プロダクトの優位性はすぐに真似されてしまうかもしれませんが、このような組織の強さは、他社が真似し辛く優位性に繋がっていくと確信しています。

ここまでは全3回にわたって、自分の失敗談、そこからどのように事業を改善しようとしているのか、そしてその成果の状況を少しだけ共有させて頂きました。成果も少しずつ出ており、FiNC年度末には年度当初よりMRRで150%成長の見通しです。

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次回は、FiNC for BUSINESSが実現しようとしている世界、そして健康経営について少しずつ深堀していきたいと思います。

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