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前社長やメンバーのせいにしていた弱い事業責任者の話-それでも僕は前を向いている-

なぜ今、noteを書くのか

FiNC Technologiesは、2012年に創立されましたが、2019年末に創業者の退任という大きな変化がありました。

2020年は、コロナ渦と同時に、厳しい財務状況ではありましたが、各事業のグロースを図ってきました。

僕が責任者を務めるBtoBサービス「FiNC for BUSINESS」は、その中の1事業として、2020年夏に再注力(2019年11月にFiNC for BUSINESSの積極的な営業を中断する決定がなされた)することを決定しました。

この再注力にあたり、過去を振り返り、市場の現状を踏まえ、戦略を策定し、今は実行しているフェーズです。

今と比べると本当に2018年や2019年頃の僕は何もわかっておらず、「頑張っている」だけでした。最近ようやく「頑張っている」だけからは脱出できた感じがしています。

ベンチャーやSaaSの界隈では自分の経験を自社内に閉じることなくnoteやセミナーなどでシェアし、ともに成長しようという気概があり、この1年はその情報に救われてきました。その恩返しという意味合いでもしこのnoteが役立つのであればと思い、覚悟を決めて公開します。

「頑張っている」だけから抜け出した僕のFiNC for BUSINESSにおける過去から現在までで経験してきたことを事業の今後も踏まえながら赤裸々に公開します。

SIerからFiNCへ転職(自己紹介)

2004年に大手SIerに入社し、営業職を主に経験したのち、シンガポール駐在も少々経験させてもらった後にFiNCに入社しました。当時35歳でした。

転職軸の一つは人事領域に携われるか、だった。人事領域に携わりたい理由は2つ。

①前職である大規模なアウトソーシングプロジェクトの組織創りのようなものを担当し、成果を出せたことが非常に面白かったこと。
②今後、経営に近いところで働くことを考えた時に、人事の経験が詰みたかったこと。
他にも軸はありましたが、すべてに合致するのがFiNCでした。

人事では、採用、教育、評価、労務、組織開発の一通りを経験しました。その後、2016年11月に異動し、法人向けのサービスFiNC for BUSINESSを営業することになりました。

現在、FiNC for BUSINESSの法人事業本部の責任者として執行役員を務めていて、マーケからSales Opsまで全方位的に事業を見ており、P/Lの責任を負っています。

営業としては、順調なスタート

FiNC for BUSINESSは、2015年に立ち上げられたサービスです。当時のFiNC for BUSINESSは、顧客の課題を解決するためにというよりは、FiNCが考えた”これなら売れるだろう”、というプロダクト開発の進め方をしていました。

その為、営業だった僕は、そのプロダクトをどのように”見せかけて、売り込むか”ということばかりを考えていました。異動したばかりで「成果」を出さないといけないという焦りもありました。

そのような中でFiNCウェルネスサーベイがたまたま顧客が求めている現状と合致し、従業員6,000人規模の有名企業での受注に繋がりました。続けて従業員1万人以上の有名企業の受注もしました。

いずれも前職のSI的な感覚で顧客のニーズに合わせた提案書を作成し、システム的に対応が難しい部分はオペレーションでしのぐような提案で受注をしています。営業としての再現性などは全く考えずに・・・。

この立て続けの受注が”売れる”という錯覚を社内にもたらしました。しかし受注は続きませんでした。”見せかけた”売り、顧客の真の課題解決になっていなかったからです。

これは僕たちだけに限らない話で、他のスタートアップ企業のSaaS経営者にも聞いたりしますが、「誰のどんな負を解決するサービスですか?」の回答ができない方が意外と多いなという印象です。(違っていたらごめんなさい)

受注したことの悲劇

しかし、受注を積み上げていくことで社内での僕の地位は変わっていった。僕の声に耳を傾けてくれるようになり、プロダクト開発の打ち合わせで”顧客の課題は何か”という議論に顧客の声を営業サイドで聞いているものとして呼ばれることとなった。

やがて前社長とのプロダクトのレビューや営業レビューの場にも呼ばれるようになっていった。前社長含めて、どうしたら売れるのか、なぜ売れないのか、の議論がよくされていた。マーケット、案件化率や受注率、などあらゆる角度から議論はされていた。

僕はそれなりに受注を続け、事業責任者を務めることになった。事業責任者となり、より一層事業計画と向き合うと、僕とそのほかのメンバーの案件化率や受注率に悩むこととなった。僕自身「なんでほかの人は売れないんだ?能力が足りないのでは?」(今となっては本当に酷い話で・・・)と訝しむ状況だった。

それに輪をかけて前社長からは「俺が直接マネジメントすればこのメンバーでいくらでも売れるのに売れないのは、長田さんがメンバーにやり切らせてないからだ」と言われていた。(ここで言及しておきたいのは、決して前社長を責めたいわけではないです)

自分へのフィードバックはもちろんウェルカムだった。僕は、「ビジョンへの想いやプロダクトに対する思考量、意思決定させるためのインプット量が足りない」と自分自身を責めていた。加えて、売れない理由をメンバーのせいにもしていった。このような状況で「売れない理由」を自分やメンバーに向けていくことになった。

誰のための何のためのプロダクトなのか

そして、いつしか、「前社長を通すためには」というレビュー前の会議がされ、いつの間にか僕は「前社長にOKが貰えるようにする」ことばかりを考えるようになった。

本当は、直接お客様と接している僕や営業のメンバーがお客様から聞いた課題、それに基づくあるべきプロダクトについてもっと声をあげるべきだった。

PMF達成の種をもっているにも関わらず、僕の力不足でその情報を俎上にあげて各種会議がされることはなくFiNCが考えた”これなら売れるだろう”のプロダクト作りを進めていくことになってしまった。

この状態を続ける限りは、PMFの達成はありえない、結果事業の成長もありえないにも関わらず事業を推進していた。だから売れなかったのだ。メンバーのスキルのせいではない。

追い詰められて逆に見える世界

業績の上がらないこの事業は2020年以降、新規営業は行わない方向が2019年11月に決まった。しかし、2019年末、前社長の退任、厳しい財務状況、そして、2020年のコロナ禍という状況でFiNCは、もう一度FiNC for BUSINESSに注力することとした。

注力にあたり「なぜ売れなかったのか」改めて振り返った。そして自分たちの強みはなんなのか、どこでなら勝負ができるのか、もう一度考えた。

僕らの強み:
・FiNC for BUSINESSという資産(改善の余地があるとは言え)
・BotCのFiNCアプリは、既に1,000万ダウンロード超の実績
・FiNC for BUSINESSでの累計320社以上の取引実績
・エンジニアや専門家など社内リソース
・エンタープライズとのリレーション(株主や既存顧客)

ステージ:
・実質シリーズA前後、PMF前の状況
・厳しい財務状況

健康領域における市場:
・産業保健・健康経営領域への投資は拡大傾向だが、投資額は大きくない
・健康改善したという「成果」を出しているアプリは日本市場ではまだ少ない

世の中の動向:
・新型コロナウイルスへの対応
・DX推進
・ESG/SDGsへの取り組み拡大傾向

そして多くのアドバイザリーにも意見を伺った。ここが本当にFiNCの恵まれているところだ。

・プレゼンの神 Sさん
プレゼンの神と言われているSさんに営業資料のレビューを頂くつもりでしたが、そもそも論として「この仕組みは誰が喜ぶ仕組みなの?ステークホルダー皆が喜ばなければ採用されないよね。FiNC for BUSINESSを導入することで経営者、人事担当者、従業員、それぞれにとってどんな嬉しいことがあるのか、改めて整理した方がいいよ。

・外資系のコンサル Mさん
先ずMさんとの打ち合わせでいつも有難いなと感じるのは、FiNCのことを「うちの会社はさ」って自分の会社のように話をしてくださること。そして毎回のように進捗について「褒めてくださること」。

そして「社会に貢献しながら獲得コストを下げる」、「トライアルでもいいから証拠、実績を積み上げてエンタープライズの信頼を得る」、このフェーズでは「コネよりケミストリーのほうが大事」などヘルスケア事業の知見から経営、戦術について細かいアドバイスを頂いている

また田所雅之さんの「起業大全」も大変勉強になりました。FiNCにはエンタープライズの経験がある人が少なく、SaaSについて理解している人はほとんど皆無の状況でした。改めて、FiNC for BUSINESSがPMF前の段階であり、アーリーアダプターに協力を頂きながら「ボーリングのセンターピンを見つける」ことが必要だと痛感しました。

さらに、僕が非常に勉強になったのは「予実を外さない男 ~ SmartHR COO 倉橋 隆文」さんの話。組織のポテンシャルと事業の成長性を鑑み、数値設定する。達成の可能性は70%がベストのラインと置いて、達成の見込みが低い場合には、現在の状況や見込み、何が起きているのかをしっかりメンバーにヒアリングし、達成した時には喜びを素直に表現して褒めたりしている、という話は自分のマネジメントの力量不足も痛感させられた。

そもそもPMF前のプロダクトで営業をしても案件化率や受注率はあがるはずがない。また正しく市場の状況を見極めて、事業計画を作らなければ無理なKPI設定になり、未達の状態が続き、疲弊していくという悪循環を招く。

こんな当たり前のことにようやく気付いたのだ・・・。この状況からいよいよ僕は事業の立て直しをしていきますが、その詳細は次回とさせて頂こうと思います。








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