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ヴィタリさんのロシアの家庭料理レシピで、サーモンときのこのスープを作ってみた


どんなに忙しくとも、どんなに時間がなくとも、人は食べなければ活動できない。「You are what you eat.」はとても好きな英語の言い回しだ。今日何を食べたかは、その人自身、その人そのものなのだと思う。

別に贅沢をする必要は全くない。外食にお金をかけたり、高価な材料を使って凝った料理をするのは性に合わない。一日に一食でもいいから、ときめきのあるような食事ができたら最高だ。

以前から気になっていた「はじめてでも美味しく作れるロシア料理」(ヴィタリ・ユシュマノフ著、世界文化社)を購入して、その中のレシピのひとつを作ってみた。ヴィタリさんはサンクトペテルブルク出身のバリトン歌手で、マリンスキー・オペラ来日公演の際に初めて日本との運命的な出会いを感じて以来、念願かなって日本に住むようになり、日本に落胆するどころかますます日本が好きになって、いまでは顔つきまですっかり日本人のようになってしまった人だ。ベルカントの美しい声を生かした日本歌曲への真摯な取り組みは素晴らしい。

そんな、ロシアと日本の橋渡しをしてくれているヴィタリさんのレシピは、日本のスーパーマーケットでも購入できる材料だけで作れるようになっていて、料理から身近に本物のロシアを体験できるようになっている。

写真のスープは、鍋に落としたバターで、みじんに切った玉ねぎとにんにく、1センチ角に切ったじゃがいもとにんじんとマッシュルーム(私はエリンギで代用したが全く問題なし)を炒め、お湯を注いで沸騰したら塩と黒コショウで調味し、適宜切ったサーモン(宮城産の鮭でも問題なし)を入れ、最後にディルで香りを付けるというもの(詳しくは本をご参照ください)。

なるほど、と思ったのは最後の香り付けで、火を止めてからディルを入れ、5分間蓋をして待つ。このやり方は紅茶とよく似ている。そうやって上品に最大限に香りを立たせるのだ。

火の通し方がゆったりと穏やかなのがロシアのスープの特徴だ。味もそう。ブイヨンやコンソメなどはほとんど使わず、自然に素材から引き出される味を生かす。とにかく味が優しい。
ちなみにヴィタリさんの本は、レシピだけでなく、ロシアの歴史や文化についても気の利いたコラムがいろいろと掲載されていて、とてもためになる。

以前サンクトペテルブルクに取材に行ったときに、スープの専門店で食事したときのことが忘れられない。あんなに色とりどりの可愛い、素晴らしいスープの数々のバリエーションを見たのは初めてだった。こんなにもスープとは人の心をほんわかした気分にしてくれるのかと思った。北の国ロシアならではの温かいスープはもちろんのことだが、冷製スープもロシアは本当においしい。

テレビや新聞やネットのニュースばかり見ていると、プーチンのコワモテの顔ばかりが報道され、ロシアはなんて覇権主義的で嫌な国だろうというイメージを持ってしまいがちだ。だがロシアが芸術文化において素晴らしい伝統を持つ国であることを、決して忘れたくはない。
ともあれ、まずはロシアのスープを作って食べてみてはいかが?

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