見出し画像

地域と強く結びついたスポーツクラブの可能性

本質から作るブランディングを

今回の記事は私が書いている別マガジン「#みんなのブランディング」で上げた記事をリライトという形でお送りしたいと思います。
先日、濱田満さんの奈良クラブの話題がnoteに掲載されていました。読んでみて共感できる点が多く、その件をベースにしながら私が考える将来のスポーツクラブの姿についても触れていきたいと思います。
スポーツの領域でも非常に重要な施策であるブランディングとは、ブランドを作り出し、強力なものにしていくプロセスを指しますが、そもそも、ブランドにとって大切にしている核となる価値なしではブランディングは成立しません。ブランディング(大きくいうとマーケティングもそうなのかもしれませんが)は、よくお化粧のように言われます。これは飾り付けることでより良く見せる、という揶揄なのですが、私は長年マーケティングやブランディングに携わっていますが、ブランドの本質である「社会に提供する価値」がないブランドはマーケティングやブランディングをやることすらできないと考えています。なぜならば、マーケティングやブランディングは、正しくブランドの価値を伝えるのであって、大きく美しく見せるものではないからです。そういう意味では、奈良クラブさんの事例は、ブランドそのものから作る作業であり、本質そのものをブランディングしていく作業なのだと思います。

奈良クラブの例を考察する

さて、先述した濱田満さんのnoteはこちらです。まずは一度読んでみて下さい。

この後の記事もすでに上がっているので読んでいただければと思うのですが、私はこの最初の記事を読んだ際、「まさにその通りだ」という思いが強くしたのを覚えています。
文中にスペインのサッカークラブに関する記述がありますが、これは私も年間20回近くドイツに行っていたので肌身で感じるところなのですが、欧州のサッカークラブは街全体にとっての生活の拠点になっているのです。ドイツの場合は、ほんの小さな町にあるサッカークラブでもクラブハウスを中心として人が集まるコミュニティが存在して、皆が何かしらの形でサッカーに触れ合っています。このようなクラブの姿は私にとっては日本のスポーツクラブが目指すべき方向なのではないかと思っています。
奈良クラブが目指しているのも、そのようなコミュニティの中心にあるようなクラブではないかと想像していますが、日本において、どうしてそのようなコミュニティとしてのスポーツクラブが必要なのか、という点について書いていきたいと思います。
日本においては、すでに長年言われ続けているように高齢化社会の進行によって年齢の人口分布が歪な形になってしまっています。若年層が少なく、人口的に日本社会を支えるのには荷が重くっています。特に年金制度はその影響を大きくウケていて、将来的には年金の受け取り年齢や受け取り額が大きく大きく減少してしまうこともかなりの確率で起こります。加えて、国家の医療費負担が年々増加しており、健康保険への補助も含めると12兆円まで膨れ上がっています。人口が増加しない中で、年金制度の悪化、そしてそれに続く医療費の個人負担の増加は避けられません。
このような社会情勢の中では、定年退職の年齢は確実に上がるでしょうし、健康でいなければならないことが社会の大きな目標として今よりもはっきりと認識されるようになると思います。
その中でのスポーツの役割は身体を動かすことによって健康を増進することに加えて、コミュニティへ属することによる帰属意識がもたらす幸福感や、ゲームを観戦することによる生活へのハリなどをもたらします。スポーツはもっと生活に溶け込んでいくことが、これからの日本は求められていくのです。

地域に根ざすスポーツクラブとは

奈良クラブが実現しようとしている姿も同じなのですが、あらゆるスポーツにおいて、地域に名指したスポーツクラブを作ることが日本においては大切な視点となってきます。
Jリーグやプロ野球のチームは地域に根ざした活動をやってきているところもあるとは思いますし、そもそもJリーグは地域クラブとしての役割を担わせることを前提に30年前に発足しています。
ただし、現状においては、チーム対地域の人々という構図は変わっておらず、地域の人たちにみてもらうためのゲームにしかなっていません。野球やサッカーのゲームがない日はスタジアムは閉まっているし、提供しているサービスもありません。ゲームがある日でも、入場は制限されているし、ゲームが終わったらさっさと帰されてしまい、スタジアムに長くいるような理由も見つかりません。
私が欧州で見たサッカークラブは、ゲームがなくとも夕方になれば人々が集まり、カフェやレストランで食事を取ったり、ジムで汗を流すこともできる。極論をすると読書をベンチに座ってしていてもいい。まさに生活の一部にスタジアムがなっている、というような印象でした。
私は日本においても、そのようなスポーツクラブを作ることができると思っていますし、実現するために動いているのも事実です。ただ、日本においては設備の費用は高いし、設置するための制限やしがらみが数多く存在します。越えなければならない課題はたくさんあります。それでも私は思うのです。地域(=人々の生活)に根ざしたスポーツクラブには大きな可能性がある、ということを。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?