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障がいを持つ子どものためのお金の使い方

障がいを持った子どもがいると、一度は不安を感じるのがお金のことだと思います。

子どもが将来お金を稼げるようになるのか、親亡き後の生活資金をどうするのかといったことは、我が子に障がいがある親にとっては最大の関心事になります。

そういうことを考えるとき、真っ先に思いつくのが「子どもにお金や財産を残した方が良いのではないか」ということだと思います。

親亡き後も生活に困らないように、生活資金を確保してあげたい、そのためにまとまったお金をなんらかの形で残してあげたい、というのは愛情の形として自然なことだと思います。



一方、親自身がお金を稼ぐことにも限界があります。

例えば、30歳にできた子どもが成人する頃にはもう50歳、定年まであと10年という年齢になります。

その頃には、親自身もある程度、社会的なポジションが決まってきます。

社会で成功を収めている人以外は、定年までの期間に収入を増やすことは現実的ではなくなり、自身の生涯所得が見えてきます。

その中で日々の生活費や老後の資金を蓄えていかなければなりません。

家計はゼロサムなので、子どもにお金を残すためには、生活費を削る必要性が出てきます。



仮に財産を残せたとして、そのお金をどうやって管理するしていくのか、という課題が発生します。

多くの子と同様に、僕の子どもは整理整頓や管理といったことが苦手で、計画的にお金を使うことは難しそうですし、悪い人に騙されて奪われる不安もあります。


では親亡き後の生活費についてどのように考えれば良いのでしょうか。







もし子どもがまだ小学校か中学校に通っているのであれば、今はまだ子どもにお金を残すことより、先に考えるべきことがあります。

それは療育・教育にお金をかけるということです。



このことについて、参考になる書籍があります。

「学力」の経済学という本です。


名前の通り「子どもの学力」と「経済」の関係についてのエビデンス(統計学的根拠)に基づいた知見が記されています。

筆者の中室牧子さんはこの本を執筆当時、お子様はおられなかったそうです。

特質すべきは、育児経験のバイアスに影響されない、経済研究者として客観的な視点で書かれているというところです。



特に参考になったのは教育資金と子どもの学力、そして生涯収入の関係についてです。

その内容はおおまかに言うと

  • 子どもの教育費用が多いほど学力が高く、学力が高いほど成人後の年収が多い。

  • 教育費を早期からかけるほど、子どもの生涯年収増加への影響が大きい。

ということでした。


これをそのまま障がいを持つ子どもに当てはめることができるかどうかはさておき、ひとつ言えることは「まずは子どもにお金を残すよりも、教育や療育にお金をかけて、成人後に生活費を稼ぐことができることを目指す」ということです。

先に述べたように、「お金を残す」方法は親自身に負担を強いるうえに不確実性があり、あくまでも最終手段としての位置付けで考えたほうが良さそうです。

まずは目の前の子どもの可能性を広げるために資金を費やす。

その方が経済的自立につながる可能性が高いし、何より子どもの成長が見られれば、親としてこれほど安心なことはありません。





教育費用にお金を使うことは、子どもの経済的自立にどのような影響があるのでしょうか。


高等支援学校を卒業後にそのまま就職する場合、おおまかに3つの選択肢が考えられます。

それは

①一般企業に障害者雇用枠で就職
②A型就労継続支援に就職
③B型就労継続支援に就職


です。



①はほぼ一般就労と同じなので割愛します。

②と③についてですが、令和3年に厚労省から発表された資料によると、この2つの平均工賃は月額でA型就労継続支援が81645円、B型就労継続支援が16507円となっています。

A型とB型の工賃の差は月額で65138円になり、年収にすると781,656円にもなります。

仮に20歳から60歳までの40年間働いたとすると、生涯年収でのA型とB型の工賃の差は31,266,240円まで拡がりまず。

もし、小中学校の9年間に毎年50万円(9年間で450万)教育費に投資して、そのおかげで本来はB型の予測であった子がA型に就職できた場合、生涯収入としてのバックは教育費に投資した費用を差し引いても2700万円程度になるわけです。

これはあくまでも想定であり、現実と異なる部分はあります。

ですが、子どものパフォーマンス向上のためにお金をかけることのインパクトは、イメージしていただけたのではないでしょうか。





「残すことより、まず生活費を稼げるようになるためにお金をかける」は子どもの幸福感にも影響があるのではないかと考えます。

自分でできることが増えることは、日々の生活の選択肢を増やすことに繋がるからです。


まずは目の前の子どもの成長を見守ることを大切にして、その後から親亡き後の心配をする。

その順番で考えてみてもいい、ということです。


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