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工芸建築論

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「工芸」から建築と社会を考える。建築は社会構造に規定されるのが常だが、建築が社会構造に働きかけることができるとすれば、それは何か。
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#織物

揚羽蝶の陣羽織

揚羽蝶の陣羽織

『ミルチス・マヂョル』

東京・池袋にある劇場のなかに『ミルチス・マヂョル』という、火星の街の名前がつけられた壁画群が存在する。

『ミルチス・マヂョル』は劇場のエントランスホールの壁面を覆い、前面の広場から眺めると、壁画群が水平方向へ手を繋ぐように展開されているのが見てとれる。劇場のまわりに広がる池袋の日常は不協和音に満ちているが、この空間に足を踏み入れると、異なる世界の時間が息づいているように

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織物としての建築

織物としての建築

部屋の建築『ミューラー邸』

人類における最初の建築は、基礎を持った堅牢な構造物ではなく、人の身体を包む被覆であるらしい。

人類は悪天候や外敵から身を守る必要から、動物の皮や織物の布で覆いを作った。これこそが最初の建築を構成する部分であり、人の身体に近しい覆い=内部空間から建築は考えられなければならないと、ウィーンの建築家アドルフ・ロースは主張する。西洋を由来とする建築の文脈においては、建築の骨

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