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カルラ・ソッツァーニ(Carla Sozzani):10 コルソコモの創設者、ファッションから、文化と教育を支えるソッツァーニ財団
「ミラノに行こう!」と思った方の中には、ミラノのこだわりのセレクトショップ 10 Corso Como(ディエチ コルソコモ)の名前を聞いたことがあるという方もいるかもしれない。
今回のnoteでは、そんなコルソコモを作ったカルラ・ソッツァーニ(Carla Sozzani)とソッツァーニ財団にクローズアップしたい。
1. 文化複合施設 10 コルソコモとは?
まず「10 コルソコモとは?」というところから説明せねばならない。
10コルソコモとは、1990年にミラノにオープンした、ブティック、カフェ、ブックショップそしてギャラリーが一つになった文化複合施設である。
この施設では、世界のファッションやアートのシーンで活躍した・活躍する人々にクローズアップした展示が行われているほか、ブティックでも選りすぐりの商品を買い求めることができる。
そんな10 コルソコモを作ったのが、『Vogue』や『ELLE』の編集者としても活躍したカルラ・ソッツァーニ(Carla Sozzani;1947-)である。
またミラノには、コルソコモの他にも関連施設がいくつかあり、今回主に紹介するブティック兼ギャラリーのタッツォーリ通り3番(Via Tazzoli 3番)の施設である。
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この施設は、有名な10 コルソコモからも徒歩圏内にある。
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なお、以前にもこのタッツォーリ通りの施設では、カール・ラガーフェルドとアンナ・ピアッジの展示が行われている。
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世界中のアーティストとも親交が深かったカルラ・ソッツァーニが手がけた施設は、実はパリにもある。
2018年、カルラ・ソッツァーニは、教育活動への支援を望みつつも2017年に亡くなったアズディン・アライア(Azzedin Alaia)の意思を継ぎ、アライアのパートナー兼画家のクリストフ・フォン・ウェイエ(Christophe von Weyhe)と共に、アズディン・アライア財団(Fondation Azzedin Alaia)もパリに創設した。
カルラは、パリ・マレ地区にあるアライアの店舗兼アトリエであったヴェルリ通り18番(18 rue de la Verrerie)の建物をアライア財団の本拠地とし、アライアの回顧展をはじめとする様々な展示を開催している。
ここまで見ただけでも、カルラ・ソッツァーニは、実に様々なプロジェクトをミラノとパリで展開していることが分かるであろう。
そんな彼女は、どのような経歴を経て、このような事業を行うに至ったか、次の章で説明していくこととしよう。
2. ソッツァーニ財団とカルラ・ソッツァーニ
本章では、カルラ・ソッツァーニおよび彼女が設立したソッツァーニ財団について簡単に説明しよう。
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1947年にマントヴァで生まれたカルラ・ソッツァーニは、ミラノのボッコーニ大学に在学している時からイタリアのファッション雑誌の編集者として働いていた。
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ボッコーニ大学で経済学の学位を取得すると、1970年代より1986年までイタリア版『Vogue』特別号の編集長を務めた。
ちなみに1988年から亡くなる2016年までイタリア版『Vogue』の編集長を務めたフランカ・ソッツァーニ(Franca Sozzani;1950-2016)はカルラの実の妹である。
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1987年には、カルラ・ソッツァーニは、『ELLE』のイタリア版を創刊、編集長を務めたほか、サラ・ムーン(Sarah Moon;1941-)、ブルース・ウェーバー(Bruce Weber;1946-)、ロバート・メイプルソープ(Robert Mapplethorpe;1946-1989)といったアーティストたちとも親交を深めていた。
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さらに1989年、カルラ・ソッツァーニはアメリカ人アーティストのクリス・ラース(Kris Ruhs; 1952-)と出会ったことをきっかけに、1990年にはミラノに自身のギャラリーとして10 コルソコモを設立した。
このギャラリーではマン・レイ(Man Ray;1890-1976)やヘルムート・ニュートン(Helmut Newton;1920-2004)などといった写真家にクローズアップした展示が次々と開催された一方で、1991年にはカフェレストランや書店、さらにはホテルや庭園が創設された。
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2024年現在、10 コルソコモではヨウジヤマモトにクローズアップした展示が行われているが、実はソッツァーニとヨウジヤマモトのコラボレーションはこれが初めてではない。
2001年、ソッツァーニは山本耀司と共に『Talking to Myself』という本を編集し、共同出版している。
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カルラの活動はイタリアだけにとどまらなかった。
2008年にはサムスングループの協力を得てソウルにて、2013年には上海にて、さらに2018年にはニューヨークにて、ファッション、アート、食の文化複合施設10 コルソコモをオープンした。
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2017年にカルラは、ファッションやアートの持続可能な発展と新しい世代への教育を意図したソッツァーニ財団(Fondazione Sozzani) を設立しており、彼女の考えに共鳴するアーティストと共に様々なプロジェクトを立ち上げている。
この財団は、生活の質と美的感覚を向上させることを意図した活動を続けている。
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そして2024年、ソッツァーニ財団は、ミラノ工科大学のキャンパスがあるボヴィザ(Boviza)に新たな拠点を作った。
1990年代、ガリバルディ地区に最初の10 コルソコモを作った時には、今でこそ華やかなガリバルディ地区はまだまだ開発の途中であったように、カルラ・ソッツァーニは、ボヴィザがこれから新しい文化の中心地として成長するという見通しを抱いているのである。
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ファッションという世界をあくまでも一部の人しかアクセスできない特権的なものにとどめるのではなく、教育や社会貢献に力を入れ、次世代の才能を育てようとするソッツァーニ財団の心意気がここに見える気がする。
3. 服を愛する人が考えるファッションの未来
ソッツァーニ財団やカルラ・ソッツァーニ自身について熱く語ったとこで、これまでの写真にも登場してきたこの美しいディスプレイについて触れることとしよう。
実はこれ、全てカルラ・ソッツァーニの私物であり、その場で購入可能である。
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マルジェラ、ヨウジヤマモト、コムデギャルソン、アズディン・アライアなど、デザイナーごとに分けられて並べられている。
こちらはジョン・ガリアーノのもの。
シフォンのドレスやブラウスがどれも可憐で…今年発表された、シモーネ・ロシャをゲストデザイナーに迎えたジャンポール・ゴルチエのコレクションを思い出した。
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またこのラックは、アズディン・アライアのものであり、左から2番目のスカートとブラウスは、アライアがカルラ・ソッツァーニのために作ったもの。
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その一つ一つの洋服はタイトなものが多く、華奢なカルラ・ソッツァーニの体にぴったりな洋服だったのであろう。
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なぜこのように貴重な私物をカルラは手放してしまうのか。
「ファッションの伝統を大切にし、意識の文化の創造を支援すること、これが未来につながる」と述べるカルラ・ソッツァーニ。
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彼女は「お気に入りの、一目惚れした洋服を購入することは、すなわち持続可能な選択を可能にする」と考えているとのこと。
もう少し噛み砕いて説明すると、例えば、大量生産され、安価で、かつ流行の型の服であっても、どこでも買える、すぐに飽きる、1-2年着たらヨレヨレになって外では着れなくなるという洋服ばかり所有していたならば、永遠にそのような洋服を買い続けなければならないであろう。
しかも着なくなった服を処分せずにため込むならば、自分が何を所有しているか分からない、洋服はたくさんあってクローゼットはパンパンで収納に困っているのに、毎日何のコーディネートをしたらいいか分からないという状態になってしまうのであろう。
カルラが提案する生活スタイルや考え方はその真逆である。
一回一回の買い物が、一生で一度きりの勝負で、本当に自分に合った、末長く愛せるものを購入すること。
そうすることでその洋服は何度も生活の中で使うことができるし、状態が良く価値のあるものならば、自分が手放したい時に次の人に渡すことができる。
これがカルラが提言する持続可能な選択である。
実はカルラは、過去にヨーロッパでの有数なヴィンテージ・セカンドハンドマーケットのヴェスティエール コレクティブ(Vestiaire Collective)と協力し、自身の私物をここで販売したこともある。
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定価ではとても購入できないものでも、セカンドハンドショップならば購入できることもある。
しかもカルラ・ソッツァーニのようなイタリアを中心に世界のファッションの重大な歴史に立ち会ってきた人物のアーカイブとなれば、その洋服一着一着にストーリーが詰まっている。
このソッツァーニ財団で販売されるカルラの私物は、筆者が普段行く街のヴィンテージショップの値段よりもかなり高めである。
それでも自分もファッションの歴史の一部になれるような気がして…いつかここで服を購入できたらと思っているのである。
ソッツァーニ財団(Fondazione Sozzani)
住所:Via Enrico Tazzoli, 3, 20154 Milano, Italy
営業時間:11:00-19:30
公式ホームページ:fondazionesozzani.org
参考:
・「「コルソ コモ」創業者が72歳の挑戦 パリに新たなギャラリー開き「文化的な貢献したい」」『WWD JAPAN』(2019年11月11日付記事)
・「イタリア・ミラノのセレクトショップ「ディエチ コルソ コモ」が2月に大幅リニューアルオープン」『WWD JAPAN』(2024年1月27日付記事)
・「Vestiaire Collective:世界はファストファッションを買う余裕がない」『KYODO NEWS PRWIRE』(2024年4月23日付記事)
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