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001. Pepper Mill | 景色を作る

2019年の年末に新居に引っ越してからPepper Millをずっと探していた。これがなかなか理想的なモノが見つからなかった。基準は明白で、機能は必要最小限で、分解できること。簡単な掃除がちゃんとできること。自分で修理すれば使い続けられること。自然素材がほとんどであること。キッチンに並んだ絵を想像したときに木製がなんとなくイメージにあった。

そして、どこにどんな風に置いていても佇まいが美しいこと。
Work From Homeだと、ふと目に入るキッチンやリビングが散らかっているだけで、気になってしまう。そして、片付けをはじめてしまう。(悪いことではないが…)

要するに、キッチンに出しっぱなしにしておいても様になり、さっと使えるいい感じのミルが欲しかった。

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円柱の木片

いくつかの候補の中から選んだのは、海外ECで見つけた木製ミル。
The 円柱の木片。
フランスの個人名で活動している木工作家さんにスマホ一つで出会えることに感謝しつつ、個人輸入のやりとりを開始。なんと「日本への出荷は初めて」とのこと。第一号でますます嬉しい。

「日本への旅行を計画していたけど、パンデミックで行けなくなったから、心を込めて送るよ。」

ただただ、ありがとう。なくなった日本との接点をつくれたようでこちらも勝手に嬉しくなる。

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ミルにしては大きいし、残量も見えなければ、積極的に洗えるわけでもない。
そんなことはどうでもいいとまではいわないが、「ミルという機能」をある種の「言い訳」にして手に入れたこの木片は、我が家のキッチンの「景色」をつくっているとも思えてしまう。

そう思うともう一つ自分の中で納得できることがあった。ソルト用のミルが木材違いのセットで販売されていたのだが、それを買わなかったこと。単純にいきなり二つ買うのは勇気が必要だったことも大いにあるが、二つ揃うと「ソルト&ペッパー感」を醸し出そうでなんだか気が乗らない。きっとこの感覚も、単調な木が並ぶ人工感を消したい意識の表れなのかもしれない。(ソルト用のミルはまだ見つかっていない)

今の存在感を正しく伝えるのであれば、「キッチンに置かれた木片をひねったらミルだった」くらいである。「私がミルです」と主張する要素は、木材が二つに分かれていることだけ。

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自宅の景色

単純に「綺麗」と思える景色を求めて旅に出るように、無意識のうちに、家の中にもそういった「景色」を作ろうとしているのであればなんとなく合点がいく。フランスのどこかで活動している木工作家さんとの会話が、いまでも鮮明に思い出されることも、旅のそれと似ている気がしてならない。

可処分時間のほとんどが自宅になった我が家のライフスタイルでは、ミルの「道具としての価値」は、暮らしに必要とされる最低条件でしかなく、暮らしの「景色としての価値」なるものが、とても大事だったのだろう。



▶︎ 001. Pepper Mill | 景色を作る
002. Teapot Tray|新しい居場所
003. Plant Pot|用途の金継ぎ
004. Work Chair|選択肢の幅
005. Hand Soap|記憶の再生
006. Glasses Tray|問いのない答え
007. Rice Cooker|小さな変化


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