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「無実の投獄」の感想(ネタバレあり)

Amazonプライムビデオオリジナル映画。

米ラジオ番組『ディス・アメリカン・ライフ』のエピソードをもとに、1980年にブルックリンのクラウン・ハイツで起きた殺人事件で、冤罪で投獄されてしまい刑務所で過ごした本人の体験を描いたお話らしいのだけど、映画としての演出も凄く良かったし、役者さんの存在感も素晴らしかったし、全体的にめちゃくちゃしっかりした硬派な実録モノで素晴らしい作品だったと思う。

主人公コリンは盗んだ車を売り飛ばそうとしてたりして、完璧な善人という訳ではないのだけど、それ故に警察に関係のない事件で犯人に仕立て上げられる要員としてマークされていたのだと思われる。
いきなり車で連れていかれるシーンが完全に人さらいみたいで怖かった。
その後実際の犯人が捕まったのに全然解決しなくて結局協力者として、「めんどくさいのでまとめて捕まえとけ!」と彼の人生の時間がどんどん削られていくのが観ていて辛い。
劇中で彼が言う様に自分が起こした事で捕まったならそれを反省することで時間と向き合えるけど、何もしていない人が刑務所で人生の時間を削られるという事の辛さがヒシヒシと伝わってくる。

刑務所の中で彼が何度も「監房じゃありませんように」と願いながら起床するシーンがあるのだけど、その直前のこれまで18年間の外での生活の今振り返ると何気ないのだけど輝かしい記憶として反芻する様なシーンの入れ方がとても切なくて素晴らしかった。ここでの日常描写の切り取り方とかもとても良くて現実だけど夢の様な美しいカットになっていたと思う。
そしてもちろんこのセリフが最後に繰り返される所でまた感動してしまう。

最初の刑務所に向かう車の窓からの薄暗い明りが、ラストの出所の際に対照的な太陽の光に変わっているのがとても映画的で主人公の自由がじんわりと感じる様な感動的な演出だった。

主人公を演じたラキース・スタンフィールドも凄く良い存在感だった。
これまでの出演作だと短い出番ながら「ゲットアウト」で「ゲットアウト!」と言う人で印象に残っていたけど今回は主人公の繊細な心の変化を見事に表現出来ていたと思う。

刑務所の中で彼が厳しい環境で彼が精神的な変化と成長の描写が良くて、最初の18歳から終盤にかけて図書館や授業などでしっかり学び、腐らず色々な知識を増やす事で人間として成熟していく体現力も素晴らしかったと思う。


そして彼の無実を証明するために奔走する親友のもう1人の主人公ともいえるカールも素晴らしい存在感だった。
お金や自分の家族との時間を削りながら頑張る彼に観ているこちらも「何故そこまでやるのか?」と疑問が出てくるレベルなのだけど、その理由を話すシーンがとても胸を打つし、納得度も高かった。
出所に希望が出始めた時に、コリンの写真を撮る時にカールが言う「殺人犯みたいな顔をするなよ」というやりとりがさりげないけどとても感動的で思わず泣いてしまった。

あとちょっとしか出ないのだけど刑務所の看守に黒人の女性の人がいて、その人も別に助けられる訳じゃないんだけど、コリンに対して結構同情的な態度を示していたりするのが演出として良いと思った。


時間経過を示すために刑務所の外でのアメリカでその時世に何が起こっていたのか?示す様なニュース映像が挟み込まれていくのだけど、黒人差別時代は進むのにどんどん生き辛い世の中へと変わっている様にしか見えない。
絶望感が増していくのが観ていて辛かった。

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