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「カサンドロ リング上のドラァグクイーン」の感想(ネタバレあり)

Amazonプライムビデオオリジナル配信限定作品。
実在のレスラーであるサウル・アルメンダリスの生き様を描いた実録モノの映画作品。

レスラーでエクソティコというのが「変わり者」という意味らしくてこの映画ではヒーロー役とか悪役とかと違う色物系のキャラクターみたいな描かれ方になっている。そしてこのエクソティコが試合をすると負け役なのがセオリーになっている。
元々は悪役レスラーを覆面でやっていたわけだけど、そんな彼が覆面を取ってエクソティコなのに、勝つことをセオリーに変えていくのと、ゲイである彼の人生を開けていく事とリンクしていく様な映画の作りが感動的だったと思う。
観客から飛ぶ「オカマ野郎」や「ホモ」の様なヤジに対して彼が開き直って受け止めそれをエンターテイメントとして昇華してしいくのが観ていて痛快だった。

世間の言う「男らしさ」におそらく苦しみ続けられた人生だと思うのだけど、その元凶ともいえるのが彼の父親との関係がある。
自分に妻がいるのに、愛人であるサウルの母親との関係を当たり前のように続けながら生きている悪い男根主義の象徴の様な存在。
彼のトラウマでもある川辺でのバーベキューで父親に会いに行ったときに母親の「勝負服」を本当に試合の衣装にアレンジしていく流れとか、映画の演出としては静かなシーンなんだけど実はめちゃくちゃ熱いと思う。

色々な喪失を経て、そんな父親と向き合うシーンが映画の最期に来て、苦いけど彼が自分自身の中でケリをつけるシーンの後、それでも闘い続ける姿で映画が終わっていく展開がグッときた。

その前のシーンで自分と同じようにゲイである事を父親へカミングアウトした青年との対話が良くて、彼が勇気を与えた存在の言葉で、彼が父親と向き合う勇気を貰う様な流れが本当に素晴らしかった。

どの登場人物も印象に残る人ばかりなのだけど、特にサウルの母親のキャラクターがかなりインパクトがあって面白かった。
サウルと煙草を分け合うシーンとか、一緒にプールに入るシーンとか母親との共依存的な関係性が表れている。

夜の仕事に行く場面で「待ってなくていいから」「夜更かしは駄目よ」等のセリフから子供の頃から変わらない関係性というのが分かるのだけど、それを否定する訳でもなく静かに見守る様な目線で描いているのが結構好きだった。
普通の親子関係とはちょっと違うかもしれないけどこの二人の間に流れる時間が特別であるのを示しているみたいだった。

主演のガエル・ガルシア・ベルナルはMCUのハロウィンのスペシャルドラマの「ウェアウルフ・バイ・ナイト」で主演をしていたので結構印象に残っていたけど、リング上でオドオドしながら軽妙さも醸し出しているのが、今回も引き続き良い存在感だったと思う。
あと主人公がクスリの売り子をしている様な男性がゲイの自分を受け入れてくれるか?探りを入れるシーンが凄く生々しくて良くて、その辺の繊細の演技も素晴らしかった。

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