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「もっと遠くへ行こう。」の感想(ネタバレあり)

Amazonプライム・ビデオオリジナルの配信限定作品。
ポスターに好きなシアーシャ・ローナンが写っているという理由だけで鑑賞。

2065年近未来のアメリカが舞台のSF作品。
冒頭の説明の字幕で意識能力を備えたAI、代替人間というのが人間の代わりに過酷な仕事を担っているというのが説明されるので、倦怠期っぽい夫婦の物語なのだけど2人の内のどちらかがこの代替人形なんじゃないのか?疑いながら観る感じ。
もちろん物語の中でも「これから旦那さんがいなくなるので、代わりに代替人形を置いておきます」と説明はあるので、物語上これから登場するのかなぁ?という可能性もあるのだけど、不穏な演出の数々にあらゆる可能性を考えてしまう。

そんな感じで初見時は「明らかに不自然な妻の態度」、「妻と監視者テランスの関係性」、「主人公ジュニア自身の精神の不安定さ」、「冒頭に説明があった代替人間はいつくるのか?」等、色んな要素がどう絡み合っているのか観ながらずっと考えてしまうのだけど、後半のどんでん返しで「こういう事だったのか」と振り返ると腑に落ちる作りになっている。
なので、全てが分かってからもう一度登場人物がこの時本当は何を考えているのか?どういう意図でこの言葉を発したのか?観直すと初見時よりも面白くて、演出や役者さんの演技の巧みさも堪能出来た。
この辺は配信限定ですぐ振り返る事が出来るのはこの作品にとってメリットになっている気もする。

あと良いと思ったシーンで言うと「この家を出ていく時に白紙の手紙を残す」と彼女が話すシーンでジュニアがそれを覗いている事で空白の手紙に込める彼女の真意が伝わらなくなってしまっていると思っていたけど、後から振り返るとこの覗いてショックを受けているのは代替人間のジュニアで、彼女が本当に手紙を残したかった本物のジュニアにその意図通りの効果を与える最後の展開が伏線の回収として切なくもグッときた。
最初の会話に出てきた「乗らない」と話していた飛行機の場面で映画が終わっていくのが彼女にとっての小さな救いにも見えた。

ポスターアートでシアーシャ・ローナンが出ているという理由もあって観る事にしたのだけど、今回も不満を抱えながら生き辛さを抱えた表情等が素晴らしい。
二回目を観ると彼女が何に戸惑っているのか?何に怒っているのか?がより胸に迫る感じでより面白かった。

夫役のジュニアを演じたポール・メスカルも最初の粗暴の印象から少しずつ変わっていき、情緒がどんどん不安定になっていく変化がとてもスリリングだった。

彼らを監視しているテランスを演じたアーロン・ピエールも不穏な存在感で良かった。常に紳士的な態度を取ってはいるのだけど、押しはめちゃくちゃ強くて、なんか側に立ってるだけで圧が強くて怖い。眼力も強くて一回見たら忘れらない顔だった。

とはいえ、顛末が分かってからもう一度観ても分からないシーンも結構あって、ジュニアが夢を見てる様なドラッグ的な描写が何回か入るのだけど、それの真意とかは2回観ても正直よく分からなかった。
火の中に飛び込もうとしたり、銃をぶっ放したりした所を否応なくぶん殴って気絶させようとしてくる男達とか政府の関係者なのだろうけど、あんまりピンと来ない。
ただシーン自体の演出や画作りのセンスは素晴らしいので引き込まれてしまったけど。

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