「ザ・ディープ・ハウス」の感想(ネタバレあり)
水の中に沈んだ不気味な洋館にダイバーが探索に入っていくポスタービジュアルから心を鷲掴みされ、かなり期待して観たけどアイデア一発勝負に終わらず演出もしっかりしていて、ホラー映画としてもちゃんと怖い作品になっていて、めちゃくちゃ楽しかった。
水中ホラー演出
潜り始めて最初のあれだけ大量にいた魚が殆ど家の周りに近寄らないという所から面白い、魚も霊感あるんだ。馬鹿馬鹿しいけど、こういう水の中だからこそ出来るホラーのアイデアの数々が楽しい作品。
水の中なので上や下に動けるのだけど、水中故に早く逃げる事が出来ない不自由さで、何かあった時の緊張感が凄い。
視界も悪く、酸素ボンベの残量のタイムリミットによって閉じ込められた時の絶望感もキツい。またこのタイムリミットがちょうど映画の尺にピッタリはまっている。
そして息苦しい彼等に感情移入すればする程、こちらも呼吸が浅くなる様な感覚になってくるホラーと水中との相性の良さを感じた。
もちろんこういう水中モノだと鮫映画でもよく出て来るし、特に最近だとダイビング描写に特化した「海底47m」シリーズとかと怖がらせ方とか似てる所もあるのだけど、不気味な洋館が舞台で襲ってくる敵が「悪魔のいけにえ」的な悪意剥き出しの狂った家族なのがやっぱり唯一無二な新しい感じがする。
揺れるカーテンの中に浮かぶシルエット、不気味に浮かぶピアノ、大量の行方不明者の写真、扉の引っ掻いた傷跡、拷問器具、吊るされた2体の死体、、、と段々とこの家おぞましい実態が明らかになっていく語り口も巧みで常にゾッとさせられた。
水中で小道具とかも浮いてるし、ライティングとかも暗くなり過ぎない様にするのも大変そうだし、幽霊役の人なんて酸素ボンベなしで演技しているし、おそらく撮影は観るからにめちゃくちゃ大変そうなのだけど、よくぞ完成させてくれたと思う。
YouTuber映画
主人公がYouTuberなのも現代的だし、やはり土足で人のテリトリーに忍び込み見せ物にする事の愚かさみたいなモノも表現されている気がする。
噂に呼び寄せられ世界中からYouTuber達が集まっているみたいなので日本から岸井ゆきのとかも行って欲しい。
あと水中撮影に特化したドローンによる操作シーンとかのガジェットの数々も観ていて楽しかった。
YouTuber目線のPOVホラーとしては全て彼等が撮ったカメラ映像のみでルール設定している訳じゃなくて客観的な観やすいカメラワークとかも入ってくるのだけど、結局彼等の映像は世に出る事はない結末だし今回のバランスでいいんじゃないかなと思う。
ただでさえ水中撮影大変そうだし無理に全部POV形式にしなくて良かった気がする。
主人公2人の存在感もそこまで感情移入しなくても大丈夫な記号的な感じなのであんまり重くならないのも程よいバランス。冒頭の廃墟探索で彼氏が彼女に返事しないイタズラや、彼女が息を止める練習をしているのが、皮肉に響いてくる様な展開が救いがなくて好き。
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