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2022年の本ベスト約10冊(小説)

師走の忙しない日々。皆さんいかがお過ごしでしょうか。

今年を振り返ってみると、読書(特に小説を読むこと)という趣味に興じられた一年だったかなと思っております。

世の読書家の方々と比べるとまだまだ読書生活ぺーぺーの自分ですが、今年読んだ本の中で特に良かったものをまとめてみましたので、年末年始のお仕事の合間に、お休みのお供にこんな記事もどうでしょうか。

もしこれを読んで手に取ってくださった本があれば、それはもう書いた本人としては泣いて喜ぶ幸せでございます。

ネタバレは含まず、あらすじをすっ飛ばした個人の感想主体の記事にするつもりです。ただし、事前情報の一切をシャットアウトしたいという方はご注意ください。

また、僕自身がミステリ、SFを好む傾向にあるため選び方に偏りが生じており、かつ今年発刊された本以外も含むことをご承知おきください。なお、甲乙付け難いため、紹介順は順位ではありません。

では早速!!

名探偵のいけにえ/白井智之

初っ端から「今年一推したい小説です」と言っても過言ではないほどガツンと来る衝撃のあったミステリ。
多重解決の弾丸を浴びせられた先にある真実に辿り着いた時のトドメ。ラストに近づくにつれページを捲る手が止まらないというミステリの醍醐味が大爆発している一方で、最初から最後までしっかりと面白く、飽きませんでした(←これがすごい)。
これは完全に僕個人の好みですが、今年Twitterタイムラインを賑わせていた話題のミステリより明らかにこっち派です。
話は独立していてテイストの違う前作の『名探偵のはらわた』も面白かったのでぜひ。

失はれる物語/乙一

乙一氏の小説は本当にハズレがないですよね。この作品も例に漏れず傑作だったと思います。静謐で悲哀がありつつも、希望がそっと添えられるかのような余韻の残る短編集でした。
中でも表題作の「失はれる物語」は、登場人物の置かれた状況を読者にリアルタイムで追体験させる、緻密で繊細な筆致と想像力、描写力に圧倒されました。
「Calling you」も大好きな一作です。

かがみの孤城/辻村深月

圧巻の一作。
この作品を読んだら自分の頭の中の名作本棚に入れざるを得ない。多くの人が絶賛されている理由がよくわかります。
思春期特有の周りの空気がナイフに感じられるような苦しさ、生きづらさというテーマが幻想的な物語と共に拡張した後、ゆっくりと一つの結末に収束していく読書体験は鳥肌もの。
辻村氏の作品は「なんで俺の人生知ってるの?」と読者に思わせるほど、「些細だと思って忘れてしまった大切なこと」を気づかせてくれると思います。

なめらかな世界と、その敵/伴名練

あえて今年読んだ本に順位をつけるとしたら、ベスト3には間違いなく入る作品です。
『なめらかな世界と、その敵』。
こんなん読むの不可避でしょ。
僕はこの本を読んで、完全にSF沼に片足を突っ込みました。
SFなのでやはり少し難解なところはあるものの、それを振り払うほどに読ませる物語の密度とその完成度に打ちのめされました。
「美亜羽へ贈る拳銃」、「ひかりより速く、ゆるやかに」が個人的ベストです。特に後者は最高なので、この話を読むためだけに購入しても損しないと思います。普段SFを読まない方にもおすすめ(僕がそうでした笑)。

虐殺器官/伊藤計劃

ストーリーも非常に面白いのですが、物語に通底している哲学的な概念も魅力のひとつだと思う作品です。自分がすべてを把握していると思い込んでいる意識の波紋が物語に絶妙に溶け込みながら、読者を引き摺り込んでいきます。
積読の中に『ハーモニー』も控えているのですが、もったいなくて読めずにいる気持ちをわかってくれる方もいるのではないでしょうか。

永遠についての証明/岩井圭也

数学好きな人、数学が得意だった人、数学を諦めてしまった人、数学を生業にしている人、もれなく刺さる作品だと思います。
3人の登場人物たちがどういう生き方を選び、どのような未来を進んでいくのか。綺麗事だけでなく、「数学」という題材をめぐる各々の苦悩、葛藤、出会いと決別が見事な筆力で紡がれます。
理系の端くれの端くれである僕にも非常に印象的な一冊でした。

シナモンとガンパウダー/イーライ・ブラウン

ひょんなことから女海賊に雇われる身となった料理人の冒険譚・・・と書くと、「楽しそう〜」という印象を抱くかもしれませんが、この作品はどちらかというと血みどろで生々しい「冒険」が繰り広げられます。
ですが不思議と読後は清々しく、学びがたくさんある作品でした。大学生くらいの時に読みたかったなという感想。
普段本を読む人にもそうでない人にも自信を持って勧められる一冊です。

新世界より/貴志祐介

名作中の名作と噂には聞いていましたが、噂に違わず最高の作品でした。ここまで作品名と内容の親和性に納得してしまう本もないだろうと思います。
日本SF大賞受賞作品であり、SFの中でも「日本代表のSF」と言ってもいいような唯一無二の世界観の構築と、作者の異次元の想像力が遺憾なく発揮されている作品です。どうやったらこの物語が生み出せるのかわかりません。小説家ってなんてすごいのよ。

砂の女/安部公房

今年読んだ本の中でも、読後の感覚が特に言語化しづらい作品でした。「後味が悪い」が一番近いような気がしますが、なんかしっくりこない。ですが、作品全体の雰囲気と、1/8mmの流動の中でもがく主人公と女の行動がなかなか頭から離れない傑作でした。ちなみに初安部公房。

一九八四年/ジョージ・オーウェル

世の中が乱れると注目を浴びるようになる傑作。僕自身はそういう見方とは区別してひとつの作品として手に取りましたが、何か道を間違えてしまった現実世界の到達点としての世界…と換言してもよいような妙な生々しさがまとわりついてきます。
また、この作品でしか味わえない表現、語彙がとにかく至高です。
読み始めで挫折してしまった方、僕もそうでしたが、諦めずに読むと不思議なくらいページを捲る手が止まらなくなりますよ〜

プロジェクト・ヘイル・メアリー/アンディ・ウィアー

宇宙にロマンを少しでも感じる人はすぐにこの小説を読むべきです。
もはやこの小説は全世界の子供たちに配るべき名作と言っても過言ではありません。SF好きな人もそうでない人も唸る一作であることは間違いごさいません。SFを普段あまり読まない人でも、宇宙という広大で果てしない空間を旅する船にあっという間に乗せられてしまうと思います。
最後まで読んだ時の感情は、今年の読書体験の中でも1、2を争うほど最高でした。



ということで、今年読んだ小説の個人的ベストを紹介してみました。
むむぅ…SFに偏りすぎィィィ!!
でも面白いからしょうがない。

小説よ今年はありがとう!!
来年もまたお世話になると思います!!

それでは皆さんよいお年を〜!!

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