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タクシーの運転手さんに聞いた、信濃町から三鷹まで乗った女の人の話

怖さ:★★☆ 

noteをつけるようになってから、職場でもどこでも、これまでの自分の人生では考えられないくらい積極的に「なんか怖い話ありますか?」と尋ねるようになりました。これまでも尋ねてはいましたが、ここまでではなかったと思います。

「こわハラ」になるのは怖いけど……

会社の休憩時間など、会う人会う人に「なんか怖い話ないですか?」と聞いているので、そのうち「こわハラ(怖い話ハラスメント?)」とか言われてしまうのではないかと、自分でも少し怖いです。でも、意外と「そういえば」と話してくださる方も多いので、有難い限りです。

タクシーも、最近は乗るたびに運転手さんに「夜道とかを走っていて怖いお話とかありますか?」と必ず聞くようになってしまいました。もちろん「ありません」と即答する方も多いですが、お話をしてくださる方もいます。今回は、そんな運転手さんに伺ったお話です。

その運転手さんは、「(ご自身は)幽霊とか見たことないけれど、先輩に聞いた話で……」と話してくれました。

*お話を伺っていて、話の筋そのものはよく聞く話のような印象もありましたが、語り手の知り合いが実際に体験されたということなので、なるべく聞いたままを記します。

病院から自宅に帰った若い女性の話

先輩運転手さんが以前、信濃町の慶応病院の近くで深夜、女性のお客様を乗せた時のことです。白いパジャマのような服だったので、「病院を抜け出して、どこかに行くのかな」という感じだったようです。

行く先を尋ねると「三鷹まで」というので、結構距離もあるし、これは嬉しいと思ったそうです。ところが女性に言われた通りに走って、目的地の家に到着すると、「お金がないから家から取ってきます」というので、扉を開けました。

しかし、女性がその家に入っていったところまでは見届けたのですが、なかなか戻ってきません。酔った人を乗せた時など、お金が足りなくて家に取りに入ったまま寝てしまうお客さんもいるので、呼びに行くことにしました。一軒家だったので、入っていった家はわかります。

呼び鈴を押すと、高齢の夫婦が出てきました。

信濃町の慶応病院から若い女性を乗せてきたけれどお金がなかったようで……と、事情を説明すると、老夫婦は1万円をすんなり払ってくれて、「ちょうどタクシーを呼ぼうと思っていました」と、そのままタクシーに乗ってきました。

先輩運転手さんも、お金を払ってもらえたのでほっとして、老夫婦に行き先を尋ねると「慶応大学病院」と言います。おや?と思うと、「入院している娘が危篤だという連絡がありまして」とおっしゃったそうです。

その老夫婦は、若い女性が慶応病院から乗ってきたと聞いた時、もしかしたら娘が帰ってきたのではないかと不思議な縁を感じ、先ほどの運賃も素直に払ってくれたのだそうです。

この話をしてくれたタクシーの運転手さんは、「お客さんを下ろしたらそのまま車出しますから、病院で老夫婦を下した後、お嬢さんがどうなったのかは、もちろん先輩にもわかりません。もしかしたらもう亡くなってて、幽霊がタクシーに乗ったかもしれないし、危篤で生霊?が両親を迎えに行ったのかもしれないし。危篤だったけど、その後治って無事だったかもしれないですしね」とおっしゃっていました。

最後に、料金を支払う時に「他の運転手は?何か面白い話とかありました?」と聞かれたので、青山墓地で雨の降る夜に人が歩いているのが見える運転手さんの話をお伝えしました。

すると、「あそこは確かに、暗くて怖いですよね。僕は幽霊とかまったく見たことないですが、時々、なんでこんなところに?と思うところを人が歩いてることはありますよね。もしかしたら気付かないだけで見てんのかな?」とおっしゃっていました。

話し手:50代くらい 男性(タクシーの運転手さん)
採取時期:2020年11月
採取場所:東京都内

「タクシー」の、なんか怖い話


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