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小劇場の天井になぜか女の人がいて、目が合った話

怖さ:★★☆ 

大学生のころ、演劇のサークルに入っていました。そのサークルでは年に2回ほど、小さな劇場を借りて公演を行っていました。公演日数は3日くらい。数か月かけて練習した舞台をたったの3日間で終えてしまうのは、なんともはかないものだと、今思うと切なくなりますが……。

さて、大学1年生の時、私はひと言ふた言セリフをもらって初めての舞台に立ちました。お客さんは少ないけど公演は無事に進んで、最終日。昼の部の公演が終わり、夜の開演時間まで皆、思い思いに休んでいました。

そのうち、「この小屋(劇場のこと)、絶対いるよね」とか「階段の裏の荷物置き場になっているところに膝を抱えて座っているおじさんがいた」とか、怖い話が始まりました。

そんな話で盛り上がっていると、近くで寝ていた先輩(男性)が起き上がって「今、天井に女の人がいた」と言い出しました。

その劇場の天井には、照明を吊るため、黒い鉄のパイプが格子状に張り巡らされています。客席で寝ていた先輩が目を覚ますと、真上の鉄パイプの上で女の人が寝そべっていて、先輩を「じっと見ていた」と言うのです。

目が合って先輩が「うへぇ」と思ったら、女の人はもういなかったそうです。

その劇場は天井も高く、脚立では届かないので仕込みの日(公演の前日、舞台を建て込んだり、照明や音響をセットしたりする日です)に照明さんが灯体を吊る時もイントレ(足場みたいの)を組んで作業をしていましたが、休憩時間中にそんな大掛かりなものを組んだ人はいません。

そもそも、パイプと天井の間に入るなんて危険なことは誰もしません。

話し手:学生時代の先輩
採取時期:1990年代後半
採取場所:東京都内の小劇場

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