短評:松本清張 原作のアンデルセン童話 〜 渡邊祐介 監督 「黒の奔流」1972年
シネマヴェーラ 「黒の奔流」渡邊祐介 監督、1972年。
松本清張 原作のサスペンスである。ファム・ファタールに岡田茉莉子。けっこう面白かったが映画でありながらTV的な外連味が大きい。TVドラマ的な劇伴の使い方や演出。ジングルが鳴ると、ついCMに切り替わるかと身構えてしまう。
ネタバレを避けるために詳しくは書かないが、最後まで観ると、アンデルセンのあの有名な童話が物語の骨格になっている。物語の骨格は説話的で、それに法律や社会などのコロモをまとわせて話を仕上げている感じがある。
それにしても松本清張の作品、若い頃はそれほど興味なかったが、映画でいま観るとなかなか面白い。原作「種族同盟」とは若干筋立てが異なるようだが、未読であり、機会があれば読み比べてみたい。
何度か再映像化されているようだが、いずれも小説ではなく、この1972年版のアレンジが基本となっているらしい。「砂の器」などと同じように、小説の原作ではなく最初に映像化されたバージョンのほうが「元祖」的存在になっているようだ。
裁判シーンで検察側が呈示する筋書きだと、容疑者がありえない移動速度で移動してしまうことを、コミカルな早回し映像で見せるのは、今井正 監督「真昼の暗黒」のオマージュのようだが、これも原作ではどうだったのか知りたいものである。