見出し画像

【ADちゃいかの端書き✏vol.3】ヤン・ファーブル/雲を測る男(1998)

僕はふだん空など見ない。上を向いている暇なんて無いからだ。やりたい事がたくさんある。それ以上にやらなくてはいけない事がたくさんある。幸運なことに、そのすべては嫌いじゃない。僕はあくせくして、そしてふいに空を見上げる。

僕は目を奪われる。青い空に、白い雲に。この光景は、いつだって不思議と新鮮で、これを見るために生まれてきたんだとさえ思う。

しばらくして、僕は日常に戻ることにする。僕にはやりたい事がたくさんあって、それ以上にやらなくてはいけない事がたくさんあるからだ。僕は、僕自身と、僕の周りのひとの少しの幸せを願って、目の前のあれこれを片付けたり、形にしたりする。そのひとつひとつが、やはり僕は嫌いじゃないので、空のことなんかとうに忘れてしまう。

この作品のモチーフになった男は、日常を奪われる代わり、空を見上げる機会を拾った。

https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=30&d=3

僕はこの作品が好きだなと思う。僕の身体にないビタミンのようなトキメキを感じる。

この地球には、僕みたいにあくせくしてる人がいて、僕みたいにあくせくしてない人がいる。それがとっても安心して、愛しく感じる。僕みたいに、空を見上げることの少ない人よりか、僕なんかよりも空を見上げることの多い人のほうが、きっとこの星を大事にしてくれると思うから。そのぶん僕は、僕の周りだけでも、少し良くしようと思うんだよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?